普遍性と流行、そのバランスに悩んだ結果…。
私は、雑誌は時代を反映する“生き物”のような存在だと思うので、雑誌で連載されている以上、マンガも時代を取り込むべきものだと思っています。でも『ガラスの仮面』が10年続いたとき、流行を取り入れることで逆に作品が古くなると思い、10年後、20年後に面白いと思ってもらうために、時代性を一切排除することを決めました。でもどうしても抗えなかったのが、携帯電話問題(笑)。私もすごく悩みましたが、いつまでも公衆電話では、新しい読者さんは違和感があり物語に入れませんよね。結果、42巻で初めて携帯電話を描き、今はスマホも登場しています。
マヤはいまだにアパートの黒電話ですが(笑)、ピンク色の公衆電話、カード式、折りたたみの携帯、そしてスマホ。改めて考えてみると、電話は本当に時代の影響を受けていますよね。なるべく違和感なくその変化を描くよう工夫はしているつもりなので、そういったところも楽しんでもらえたら嬉しいです。
仇討ち以降、亜弓さんの人気は高まるばかり。
『ガラスの仮面』は、ルックスは平凡ながら天才肌の北島マヤと、恵まれた環境に美しい容姿を持つ姫川亜弓、演劇を志す2人の女優の物語です。作者としてはどのキャラクターも好きで、誰を描いても楽しいのですが、どちらかというと私はマヤのボケボケした感じと重なるところがあるので、ライバルである亜弓さんは、まったく別人格のキャラにしたんです。なので、キリッと凛々しい亜弓さんを描くのはマヤを描くのとは別の楽しさがありますね。そういえば、マヤを陥れた乙部のりえに亜弓さんが仇討ちをする『カーミラの肖像』のエピソードを描いたあと、亜弓さんのファンが一気に増えてしまい、主人公であるマヤの人気を回復しなきゃ! と焦ったこともありました(笑)。最近でも、作品を読んでくれている大人に聞くと、亜弓さんの人気が高いんですよね。今を生きる人たちには、実は努力家で一生懸命生きている亜弓さんの姿勢が響くのかもしれません。
みうち・すずえ マンガ家。1951年生まれ、大阪府出身。’67年デビュー。代表作に『妖鬼妃伝』『ガラスの仮面』など。公式サイト「オリーブの葉っぱ」内のキャラクターインタビューは必読。
※『anan』2021年12月29日‐2022年1月5日合併号より。写真・中島慶子
(by anan編集部)