「両親に守られて育ったからか、ちひろは純粋、疑うことを知らない。自分の考えや意見はしっかり持っているのですが、一方それを表現するのは苦手なタイプ。彼女を理解するには、どう育てられてきたか、また友だちとどんな時間を過ごしているのか、そういうところが大きなヒントになりました。永瀬正敏さんと原田知世さんが演じる両親から、ちひろは本当に大切に扱われていて、こういうふうに育てられたからこそ、あの純粋な心が生まれたんだなと、強く実感しました」
さまざまな役を演じてきた芦田さんですが、ちひろのような等身大の役は、演じやすくもあり、難しい部分もあるのだそうで…。
「年が近い分、心の動きや感情には共感できるところがたくさんあります。特に、親に話せない悩みを友だちに話すようなシーンは、リアルだなあと思いながら演じました(笑)。でも一方で、SFなどの非日常を舞台にした作品とは違い、ストーリーやキャラクターに特別な“濃さ”があるわけではないので、つい“素の芦田愛菜”が出てしまいそうになる。自分と似ている部分があるとしても、素に戻る瞬間はあってはいけないと思うんですよ。特に、どう演じたらいいんだろうとか、セリフなんだっけとか、迷いがあるとき、“自分”が顔を出しそうになるので…。自分的には、役の気持ちを理解すれば、自然に行動やセリフがついてくると思っていて、脚本を頭に入れるというよりは、役の気持ちの動きを掴むことを大切にしました…といっても、なかなか難しいんですけどね(笑)」
学校の先生への淡い恋心、他者から奇異の目で見られる両親への思い、そしてあたりまえのようにそこにある宗教…。映画の大きなテーマである“信じること”の意味を、芦田さんに聞いてみました。
「信じるとは、“期待すること”だと思います。人でも物でも、“こうあってほしい”と期待するものですが、その期待とは異なるものが見えたとしても、その対象を信じ続けることができるかどうか…。不安だからこそ、人は“信じる”という言葉を口にし、その言葉にすがりたくなるのかも、と思ったりします」
『星の子』 宗教にのめり込む両親から愛情を持って育てられたちひろが、中学3年になり世界を疑い始め…。原作は芥川賞作家・今村夏子の小説。監督&脚本を手掛けたのは、『日日是好日』などの大森立嗣。10/9(金)より公開。©2020「星の子」製作委員会
あしだ・まな 女優。2004年生まれ、兵庫県出身。’10年、ドラマ『Mother』で注目を浴びる。『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』(テレビ朝日系)にレギュラー出演中。実写映画の主演は6年ぶり。
ワンピース(ズッカ/エイ・ネット TEL:03・5624・2626)
※『anan』2020年10月7日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス) スタイリスト・浜松あゆみ ヘア&メイク・久慈拓路(KIBI) インタビュー、文・河野友紀
(by anan編集部)