名探偵と同じDNAを持つキュートな少女探偵が大活躍!
生まれてすぐに父親を亡くしたエノーラは、物心ついたときには母親ユードリアと二人暮らし。母親はかなり風変わりで、自ら娘を教育。楽しく過ごしていた母娘だが、エノーラが16歳の誕生日を迎えた朝に母親が失踪。ロンドンに住む兄マイクロフトとシャーロックに助けを求めたエノーラは、堅物の長兄から寄宿学校に送られそうになり、「刺繍なんかやってられない」とロンドンへ向かう! 旅の途中で何者かに殺されかけたテュークスベリー子爵を助けた彼女は、自分でも気づかぬ間にある陰謀に巻き込まれていく!?
エノーラと母親の関係性がとてもユニーク。ビクトリア朝の女性に必須のレディ教育や良縁には重きを置かないユードリアが娘に教えるのは、化学やテニス、柔術やアーチェリーにボクシング。フェミニズムに関する本も愛読し、女性参政権を求めたサフラジェットの前身的な存在だ。母がエノーラを鍛えるのも、男性に頼ることなく生きられるようにという考えからだろう。困難に遭遇したエノーラの推理能力が開花するのも時代を先取りした教育と生まれ持った才能のおかげ。言葉遊びや花言葉は暗号解読に役立つし、危険な男と格闘するのも躊躇なし。爆薬の知識はあるし、抜群の記憶力も兄シャーロックと同じ遺伝子を感じさせる。時代設定は19世紀後半だが、現代にも通じる問題を交えた脚本が巧み。しかも困難に立ち向かうエノーラが快活でたくましく、痛快な快進撃に思わずニンマリ。『デッドプール』や『フリーバッグ』と同じく主人公が観客に語りかける、いわゆる“第四の壁”を破るスタイル。なのでエノーラが女友達のように感じられ、彼女への共感が増す仕掛けだ。
エノーラをチャーミングに演じたのは『ストレンジャー・シングス』でブレイクしたミリー・ボビー・ブラウン。少年に化けたかと思えば、兄たちの裏をかくためにレディに大変身したり。『ストレンジャー~』とはひと味違うミリーに魅了されること間違いなしだ。本作では姉ペイジとともにプロデューサーとしても活躍。そのミリーを盛り上げるのが、エキセントリックな女性役がお得意のヘレナ・ボナム=カーターと、スーパーマンやウィッチャーといったアイコニックなキャラクターを演じているヘンリー・カヴィル。それぞれの役になり切った上でミリーを立てているのはさすがだ。そしてテュークスベリー子爵役のルイス・パートリッジも要注目。弱冠16歳の新星は、ミリーとの相性抜群のイケメン君。見終わったらきっと、シリーズ続行と子爵の再登場を願うはずだ。
『エノーラ・ホームズの事件簿』 監督/ハリー・ブラッドビア 出演/ミリー・ボビー・ブラウン、ヘンリー・カヴィル、サム・クラフリン、ヘレナ・ボナム=カーター、アディール・アクタル、フィオナ・ショウほか Netflix映画『エノーラ・ホームズの事件簿』全世界独占配信中
※『anan』2020年9月30日号より。文・山縣みどり
(by anan編集部)