「20代の頃にラジオの構成作家をやっていたし、長らく深夜の生放送のパーソナリティも担当していたから、ラジオには愛着がある。だから久々にラジオの話をもらった時は、率直にうれしかったです。僕は、ラジオというメディアが好きなんです。少ないスタッフで作り上げていく楽しさがあるし、リスナーとの距離も近いから。でも、土曜16時の枠だと聞いて、“うそでしょ? 半年で終わるんじゃない?”とは、思いましたけどね(笑)」
そう、この番組は、土曜の夕方、サタデーナイトの入り口に、ラジオの電波に乗って、1時間限定でオープンする「スナック ラジオ」。毎回ゲストが来店し、音楽をかけながら、スナックらしい、とりとめのないトークが展開される。時には、「こんな時間にこの話、大丈夫?」と聴いている方がドキドキしてしまうような、ディープな話も! そのスナックの店主を務めるのがリリーさんだ。
「時間帯を考慮して、これでも下ネタは抑えているんですけどね。でも回を追うごとに、スナック感が増してきているのは感じます。番組では、アルバイトという設定で、アシスタントも出演しているのですが、ゲストに合わせて、人数や組み合わせを変えて、毎回シフトを考えているんです。そうすると、実際のスナックにもあるような、バイト同士のいがみ合いとかが発生して、場がぐしゃぐしゃと乱れてくる(笑)。すると、ゲストもラジオの収録だってことを忘れて、どうでもいいことを話し始めたり、本音を爆発させたり…。今までのラジオでは考えられなかったようなクロストークの嵐が生まれ始め、それがスナックという体に、見事ハマってきた気がします」
たしかにこの番組でのリリーさんの立ち位置は、聞き上手なスナックのママといった感じが…。
「そうそう、ついつい喋りすぎてしまうこともあるけれど、それよりも場を回すのが僕の仕事。だから、番組中にかける音楽も、リスナーからのメールも、その時の話の内容や雰囲気に合わせて、僕がその場で選んでいます。その方がスナックっぽいし、聴いている人たちに、店の空気感が伝わるかなと思って。この間、RADWIMPSの野田洋次郎くんがゲストで来た時に、ピアノの生演奏を披露してくれたんだけど、まさに僕がいつも飲みに行った時に経験している風景、そのものだったから。たとえばミュージシャンと飲んでいる時に、その人がそこにある楽器で急に歌い始めたりすることがあるんだけど、それってすごくレアな体験じゃない。そんな時に“あ、ここにあいつがいたらよかったのに”“あいつが聴いてたら、感動しただろうな”っていつも思うんですよ。そのあいつが、この番組の中ではリスナー。リスナーたちにお客として、この店に行ってみたいと思わせられるようなラジオにもっともっとしていきたい。今後はコーナーをいくつか作って、ネタを募集して、リスナーとの距離をもっと近づけていきたいと思っています。だってスナックもラジオも客が育てるものだから」
『リリー・フランキー「スナック ラジオ」』 スナック店主のリリー・フランキーが、多彩なゲストやアルバイト店員たちと、時に香ばしく、時に甘酸っぱく、時にほろ苦いトークを繰り広げる。毎週土曜16:00~16:55、TOKYO FMほかJFN38局で放送中。
リリー・フランキー イラストレーター、文筆家、俳優など、幅広く活躍。『The Covers』(NHK BSプレミアム)のMCも務める。7月23日19:30~、ドラマ&ドキュメント『不要不急の銀河』(NHK総合)に出演。
※『anan』2020年7月22日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・鈴木恵美
(by anan編集部)