ミステリー、ホラー、ファンタジー、不条理、青春、音楽や演劇などの芸術小説…、恩田陸さんはとにかく引き出しの多い作家だ。これまでどんな恩田作品を読んできたかで印象はずいぶん違うだろう。『歩道橋シネマ』は、そんな恩田さんの幅広い魅力が取り揃えられた一冊。
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「小さい頃から、王道のミステリーやSFより“奇妙な味”と呼ばれる小説が好きで、早川書房の『異色作家短篇集』シリーズに並ぶような作家が私のど真ん中だと思っていました。約7年分の自分の短編をまとめてみて、改めて納得しました(笑)」

1話目は、エドワード・ホッパーの同名の絵をモチーフに展開する「線路脇の家」だ。〈私〉はその絵を目にしたときに既視感を覚えるのだが、まずヒッチコックの映画『サイコ』を思い出し、さらに電車から見えた不思議な家の話へとつながっていく。続く「球根」は、恩田さん自身も「このあっけらかんとした語りが気に入っています」という一編。〈天啓学園〉の校内を案内している、生徒会副会長によるコミカルな語りで物語は進む。意外なオチに仰天。

「だいたい編集さんからいただいたお題から練っていきます。『惻隠』のように夏目漱石の没後100周年記念なのでアイアムアキャットから書き始めよというのもあれば、『風鈴』のようにざっくり『怪談で』と言われたのもあります。私も何か縛りがあったほうが書きやすいですね。どんな語りにするかはお題に合わせることが多く、書き始めてみて自然と決まっていく感じです。どう落とすかも、かっちり見えているときといないとき、どちらもあります。『ありふれた事件』は、最後にどう落とすか全然決まらず、こんなことがあったらやだなとふと思いついた。実際、わけのわからないものが好きなので、そう書きがちですね」

もっとも直近に書かれたのが、

「場所の話と記憶の話を絡めた表題作。原点回帰というか、初めて短編を書いたときの心境に近かったですね。懐かしい気がしました」

本書は、著者による「あとがき」付き。いわゆるナマの声が面白い。

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「そのとき何を考えて書いていたかなどを、ゲラを読んでいたら思い出しました。そうした楽屋話的なものをまとめたので、それも含めて楽しんでいただけたらと思います」

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おんだ・りく 宮城県生まれ。作家。1992年、『六番目の小夜子』でデビュー。2017年、『蜜蜂と遠雷』で直木賞、2度めの本屋大賞を受賞。同書のスピンオフ短編集『祝祭と予感』(幻冬舎)も好評。

『歩道橋シネマ』 これまで3冊、ノンシリーズの短編集を出版しており、本書が7年ぶり、4冊目となる。恐るべき作家の脳内散歩をしている気分が楽しめる。新潮社 1600円

※『anan』2020年1月29日号より。写真・土佐麻理子(恩田さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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