女性の本音が怪談小説に! 話題のドラマ原作者の最新作がこわーい

エンタメ
2019.05.16
怪談専門文芸誌『幽』で連載されていた作品を中心に、書き下ろしなどを加えた8編を収録。どれもぞくっとさせられる怖いお話でもあるけれど、その恐怖の源流は、霊魂や呪詛などではなく、もっと日常に横たわっている“ふつう”のものではないか。そんな気持ちにさせられるのが、『くらやみガールズトーク』だ。

女性たちが人生で感じてきた違和感。突き詰めたら、ホラーな社会でした。

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著者は、『わたし、定時で帰ります。』で話題の朱野帰子さん。

「有名な幽霊話といえば、四谷怪談や番町皿屋敷…、女性が化けるお話が多いですよね。考えてみれば、どの時代でも虐げられてしまうのが女性。そのどろどろとした暗い思いをストレートに吐き出せば、怖い物語になると思っていました。ただ、それがジェンダーの問題とつながったことに、私もちょっと驚きました」

女の子らしさや娘らしさの呪縛に囚われた女性の物語「鏡の男」や、結婚したら妻が夫の名字に変わるのが普通だと言う夫や家族、社会の価値観に苦しむ「花嫁衣装」などにそういった面が表れる。

「私自身は、男女ともに就職氷河期に見舞われた世代。そもそも差別されていることで被害者のようにふるまうことにも抵抗があります。けれど、これまで疑問に思いながらも、妥協してきた部分や抑圧してきた部分が意外にあったのだな、孤独だったなという気持ちが、書きながらわき上がってきたんですね。実際、女性の方が就職、結婚、出産とライフステージの変化も、それに合わせて変わるよう強いられることも多い。それだけに澱も溜まるのかなと」

だが、ヒロインたちのダークな心情がつぶさに描かれながら、各編の最後には小さな希望が灯るような読後感が本書の魅力だ。なかでも、朱野さん自身の出産体験を元に書かれた一編「獣の夜」は、主人公が人間から離れていくほどに崇高さを備えていくようで、揺さぶられる。

「実際に産んで育ててみると、自分が自然の一部になって、もう死んで土に還ったみたいな、命は次に移ったみたいな感覚になったんですよね。死が悪い意味で出てくる箇所もありますが、死ぬって、一度それまでの自分を全部捨てて楽になるという変化もあると思うんです」

暗闇を抱えていたっていいんだよと、がんばっている女性たちを慰撫してくれるような短編集だ。

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『くらやみガールズトーク』 嫉妬、コンプレックス、憎悪など、自分の黒い本音をのぞき見た女性たちが、ふと気持ちを切り替える瞬間を描く。共感たっぷりの8編。KADOKAWA 1400円

あけの・かえるこ 2009年、『マタタビ潔子の猫魂』でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。現在放送中のドラマ原作『わたし、定時で帰ります。』の続刊『わたし、定時で帰ります。ハイパー』も好評。

※『anan』2019年5月22日号より。写真・土佐麻理子(朱野さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)

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