「いまは役柄がなかなか掴めないし、セリフも多く、稽古のペースの速さについていくのがやっとで、辛くて泣きたくなるくらい。でも同時に、栗山(民也)さんの稽古場にいられることが楽しくて幸せで…矛盾した日々を送っています」
そう話すのは、ジョーと親密な関係となるテスを演じる倉科カナさん。
「以前から栗山さんがどんな演出をされるのか、すごく興味があったんです。映像ではできない表現をされていて、それが観客に対して問題提起になるような鋭さがあって、観ると考えがちょっと豊かになるような舞台をお作りになられているんですよね。実際、いまその舞台が立ち上がる過程を拝見しながら、お茶を取るなにげないタイミングひとつでも、栗山さんの演出通りにやると、こんな深い意味が立ち上がるのかと…キュンとしています。ただ、自分の場面のことはいっぱいいっぱいすぎて、全然わからないんですけれど」
テスは、確固としたイデオロギーを持ち、それをはっきりと口にするキャリアウーマン。「じつは、ちょっと自分に似ていて…」と笑う。
「30歳を過ぎてひとりで働いていて、仕事に対してのプライドもある。そこが共通していますし、愛情表現は下手だし、皮肉交じりのユーモアを言うところにも共感します」
その清楚な雰囲気から、おとなしく控えめな印象があったけれど…。
「ごめんなさい。じつは結構毒っ気強いほうなんです(笑)。白か黒かというはっきりした性格なので、反省することも多いですし。ただ、柔らかい印象を持ってくださる方が多いので、それも使っていきたいとは思っているんですよ。どっちもやれれば、幅が広がりますから」
一筋縄ではいかない作品を前に苦戦しながらも、「ぐちゃぐちゃと悩んでいても何も始まらないし、誰も助けてくれない」ときっぱり。
「自分のやりたいことははっきりしているんです。それは、芝居がしたいということ。逃げたり止まったりしてるより、効率いいのは戦うこと。やるべきことをやって、努力して、それでもできなくて落ち込んだら、一晩ヤケ酒して思いっきり泣いて、すっきりして次に向かうんです」
倉科さんの台本は、作品に描かれる時代背景やセリフに登場する政治や経済に関する言葉を調べては書き込みしていき、すでにボロボロ。
「もともと政治にも歴史にもそんなに詳しくないんです。でもわからない部分を調べていくと、点と点が繋がる感覚があって、セリフも演出もしっくりしてくるんですよ。そうなって演じてみると、頭で考えるより感覚で理解できる部分も出てきたりして。ご覧になる方は難しく考えずにいらしてくださったら、きっとわかると思いますし、きっと何かを感じて持ち帰るものがあるんじゃないかと思います」
『チャイメリカ』1989年、天安門事件に居合わせたジョー(田中)は、戦車の前に立ちはだかる男(通称“タンクマン”)の姿を写真に収めた。あれから20数年。彼はその男の軌跡を追い始める。2月6日(水)~24日(日) 三軒茶屋・世田谷パブリックシアター 作/ルーシー・カークウッド 翻訳/小田島則子 演出/栗山民也 出演/田中圭、満島真之介、倉科カナ、眞島秀和ほか S席(1・2階席)8300円 A席(3階席)6000円(すべて税込み) 世田谷パブリックシアターチケットセンター TEL:03・5432・1515(10:00~19:00) https://setagaya-pt.jp 愛知、兵庫、宮城、福岡公演あり。撮影:笠井爾示
くらしな・かな 1987年12月23日生まれ、熊本県出身。近作に映画『3月のライオン』『あいあい傘』、ドラマ『春が来た』など。現在放送中のドラマ『トクサツガガガ』(NHK)に出演。
ブラウス¥35,000 スカート¥39,000(共にmuller of yoshiokubo/muller of yoshiokubo TEL:03・3794・4037) ピアス¥60,000 リング、大¥92,000 中¥34,000 小¥17,000(以上CHERRY BROWN/CHERRY BROWN TEL:03・3409・9227)
※『anan』2019年2月13日号より。写真・内山めぐみ スタイリスト・多木成美(C.Corporation) ヘア&メイク・吉田真妃(クララシステム) インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)
※みんなで始めればもっと楽しい。地球にやさしい選択(クールチョイス)。
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