最近では旅行会社が企画する「廃墟ツアー」も即満席になるなど、トレンドのひとつだと思っている人も多いかも。けれど、実は廃墟マニアって400年以上前から存在したらしい。そんな事実を物語る展覧会『終わりのむこうへ:廃墟の美術史』が始まった。
20世紀前半にシュルレアリスム絵画にも廃墟の風景が数多く登場した。
榑松正利《夢》1940年 油彩、カンヴァス 練馬区立美術館
そもそも廃墟ブームの全盛は18~19世紀の西洋。18世紀にはポンペイなど古代遺跡が発掘され、人々が古代への興味を持ち始めたのをきっかけに、学習を兼ねた遺跡観光「グランド・ツアー」が貴族や富裕層の間で大流行するようになった。そこからは“美しい風景のモチーフとして廃墟は欠かせない”といった趣旨の本も次々と出版され、西洋で廃墟はすっかり絵になる風景の定番に。17世紀にはシャルル・コルネリス・ド・ホーホが、18世紀にはユベール・ロベールや版画家ピラネージなど、廃墟を生涯のテーマとした作家も登場し始めた。
西洋の「廃墟」は江戸時代に日本にも伝来する。建築様式が違うため、日本では見られないはずのローマの古代遺跡が、江戸後期の浮世絵には珍妙な姿で描かれている。西洋の廃墟画を模写したのだ。本展には17世紀の西洋画家に始まり、版画、近代洋画、明治以降の日本絵画、シュルレアリスム絵画、現代アートまで、約400年間に描かれた廃墟の絵画が集合。加えて、現代の作家が描き出した未来の廃墟も展示し、これを見ればひと通り廃墟の美術史をたどることができる内容になっている。
それにしても、なぜ廃墟は洋の東西を問わず人を惹きつけるのだろう。
「芭蕉が『夏草や兵どもが夢の跡』と詠んでいるように、廃墟を見て人間の栄枯盛衰を思う感情は、国籍を問わず誰にでもあるのでしょう。人は廃墟を見つつ、いつかは終わりが来る今を愛おしんでいるのではないでしょうか」(渋谷区立松濤美術館 学芸員・平泉千枝さん)。先人たちを魅了した廃墟の風景は、400年の時を経ても変わらずに美しい。
渋谷に想像上の廃墟を重ねた元田久治の作品。
元田久治《Indication:Shibuya Center Town》2005年 リトグラフ
オランダの廃墟画家のシャルル・コルネリス・ド・ホーホの作品。
シャルル・コルネリス・ド・ホーホ《廃墟の風景と人物》17世紀 油彩、板 東京富士美術館 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom
「廃墟のロベール」と言われたユベール・ロベールの代表作。
ユベール・ロベール《ローマのパンテオンのある建築的奇想画》1763年 ペン・水彩、紙 ヤマザキマザック美術館
日本画にも廃墟の絵が。
澤部清五郎《群羊図(伊太利アッシジ附近)》1931年 コンテ、膠彩、絹布 星野画廊
『終わりのむこうへ:廃墟の美術史』渋谷区立松濤美術館 東京都渋谷区松濤2-14-14 12月8日(土)~2019年1月31日(木) 10時~18時(金曜は20時まで。入館は閉館の30分前まで) 12月10・17・25日、12月29日~1月3日、 1月7・15・21・28日休 一般500円ほか TEL:03・3465・9421
※『anan』2018年12月12日号より。文・山田貴美子
(by anan編集部)
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