
ⒸArchives Atalante and Roussopoulos Family Archives / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
制作50年を記念して、ドキュメンタリー映画『美しく、黙りなさい』が日本の劇場初公開となる。
かつて求められたのは「美しくしていなさい、そして黙っていなさい」
映画賞の部門は別として、最近は「男優」「女優」という区別をしなくなった。演技を職業とする人たちは、性別に関係なく「俳優」と呼ばれるのが一般的だ。女性の監督やプロデューサーも珍しくなくなったし、インティマシーコーディネーターも知られるようになった。まだまだジェンダー格差はあるとはいえ、#MeToo運動も経て、映画界の意識は変わってきている。
そんな今があるのも、先人たちの歩みのおかげだと再認識させてくれるのが、50年前に制作されたこのドキュメンタリー。シャンタル・アケルマン監督作でフェミニスト映画の代表作『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔23通り番地』の主演でも知られるデルフィーヌ・セリッグによる、23人の女優へのインタビューだ。
セリッグが用意した質問は、「もしあなたが男性だったとしても、この職業を選びましたか?」と「他の女優と友好的な場面を演じたことがありますか?」の2つ。答えるのは、ジェーン・フォンダらオスカー受賞者から脇役まで、ハリウッドとパリで活躍する顔ぶれ。ときに感覚的、ときに論理的な彼女たちの回答が浮かび上がらせるのは、原題『Sois belle et tais-toi!』が示すように、かつて女優に求められたのは「美しくしていなさい、そして黙っていなさい」ということ。男性社会だった映画界では、女性には知性も自我も求められなかった。むしろ、そうした女性は、男性には脅威だったのだ。
同時に、彼女たちの言葉は、映画界が50年間で遂げた変化も浮かび上がらせる。それは女性自身の意識が変わったからこそ。男性視点による制約を破りつつあるなか、「今は地球の歴史上で、女性でいることの最高の瞬間」と語っていたエレン・バースティン。その「最高」は、今も確実に更新され続けている。

監督・インタビュアー/デルフィーヌ・セリッグ 出演/ジェーン・フォンダ、シャーリー・マクレーン、ジュリエット・ベルト、アンヌ・ヴィアゼムスキーほか Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次公開中。
ⒸSois belle et tais-toi ! / Delphine Seyrig, 1976 / Centre audiovisuel Simone de Beauvoir
anan 2507号(2026年8月5日発売)より

































