ミステリーだけど設計図はナシ 辻村深月の新作はラストが驚愕!

エンタメ
2017.06.22
「『これはデビュー作のアンサーのようですね』とか、『自分の中にまだいるあの頃の自分に届きました』と言ってくださる読者さんもいて…。私自身、かつての自分に1冊渡すなら『これ』と思えるようなものになりました」

繊細で孤独なティーンエイジャーの胸の内、少し不思議な設定、謎が解けた後の読後感…。辻村深月さんの『かがみの孤城』は、この人にしか書けないと思わせる圧巻の長編だ。

7人の少年少女が出会うことになった不思議な城の秘密とは。渾身の感動作。

辻村深月

クラスメイトとのいざこざで居場所を失い、中学校にもフリースクールにも行けなくなってしまった中学1年生の安西こころ。ある日、光りだした自室の姿見に触れてみると、鏡の向こうへ抜けられ、そこには自分と似たような境遇の少年少女がいた。孤城に集められたこころたち7人は、〈オオカミさま〉と名乗る狼の面をつけた少女から、城にあるヒントを元に、“願いの部屋”に入るための鍵を見つけたひとりだけが、願いを叶えてもらえると知らされる。

こころたちはみな鍵を見つけ出し、自分のつらさが反転するような奇跡を夢見る。その一方で、孤城で一緒に過ごすうちに、このメンバーこそが失いたくない仲間だと感じ始める。

「いまここに自分の理解者はいないとしても、あの場所に行けばわかってくれる人がいる。孤城はそれをファンタジー風に見える形にしたもの。若い世代ならネットでしょうが、実は文通や校舎の落書きや駅の伝言板など、それぞれの世代で味わったことがある場所だと思うんです」

辻村深月

こころたちは、さらにオオカミさまから願いを叶える上での無情な条件を聞かされ、心が揺れる。願いを取るか、仲間を取るか。そしてラストには大人も驚愕の展開が。

「実は、この大仕掛けについて、私もあるときまでわかっていなかったんです。ミステリー書きにあるまじきことかもしれませんが、設計図が見えないまま書き始めて、物語の途中で一気につながることがほとんど。私がミステリーに求めるのは、仕掛けそのものが、登場人物の心情や作品のテーマにより共感できる装置になっていること。この作品では、それが急に降りてきたんです」

7人はなぜ出会ったのか。孤城やオオカミさまが意味するものは何か。すべての謎が解けたときに、涙とともに世界が優しく見えてくるはずだ。

つじむら・みづき 山梨県生まれ。2004年、メフィスト賞受賞作『冷たい校舎の時は止まる』でデビュー。’11年『ツナグ』で吉川英治文学新人賞、’12年『鍵のない夢を見る』で直木賞を受賞。著書多数。

『かがみの孤城』 中1のこころ、リオン、ウレシノ、中2のマサムネ、フウカ、中3のアキ、スバル。現実から逃れて城で出会った7人は次第に心を通わせる。ポプラ社 1800円

※『anan』2017年6月28日号より。写真・土佐麻理子(辻村さん) 小川朋央(本)インタビュー、文・三浦天紗子

(by anan編集部)


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