「もともと私はアンダーが85cm前後あって、合うブラを見つけづらかった。日本では、リーズナブルでかわいいデザインのものはたいていD75くらいまでですよね。小さいブラを無理して着けるとすれて痛くなるし、脇の肉が締め付けられて盛り上がり、さらにその形で固まってしまったりして。毎日使うものなのにストレスを感じながら着けるのはおかしいなぁ、と思春期以来ずっと思っていたんです」
理不尽な気持ちを吹き飛ばそうと、大学生時代はノーブラで過ごそうとしたことも。
「いろいろ面倒くさいし、もういいや! って。でも、『さすがに女子大生がTシャツに“ぽっち2つ”はまずいんじゃない』って、まわりの友達から反対されてやめました(笑)」
以降も続くブラ探しの旅の中でたどり着いたのが、自分で製品を開発することだった。
「女性に生まれたからには、一生おっぱいが付いて回る。そこをクリアにしなければ、と」
提案を受け入れてくれたピーチ・ジョンとのコラボで実現の運びとなったが、その後の反響の大きさに驚いたという。
「たくさんの女性が『実は私も…』と声を上げてくださった。私のツイッターにDMを送ってくださる方が多いのですが、そのメッセージの長さたるや。メーカー側もこんなにニーズがあったとは知らず、びっくりしていました」
大きさに関わることのみならず、バービーさんのもとにはほかにも、バストにまつわる様々なストーリーが寄せられた。子どもを母乳で育てたせいか下垂してしまったけれど後悔はしていない、手術で乳房を摘出したので自由にカスタマイズできるブラが欲しい…。
「みなさん、熱い思いを持っているんです。たくさんのコメントを読みながら、おっぱいって女性として生きる上で真ん中に存在しうるものなんだ、と改めて実感しました」
が一方で、そうした声が表に出ないのは、
「女性たちの中に、『胸について語るのは恥ずかしいこと』『性的なことにつながるので隠したい』といった思いがあるからでは。実際にそういうコメントもたくさんありました」
自身もブラ選びをはじめバストに関する悩みは多々あったけれど、「性的だから隠すべきという意識はなかった」というバービーさん。
「そんな性格なので私はお尻を出したりもできたんですけど(笑)、女性という前にひとりの人間として、自分の体に誇りを持てたらと思うんです。おっぱいをいやらしいものや隠すべきものではなく、自然にあるものとして愛せたらもっとハッピーになれるんじゃないかと」
そんな様々な想いから生まれたのが、「気高いおっぱい」という言葉。
「自分の体は自分のもの、誰のためでもないバスト、という意味を込めたつもり。ふと口にしたら思いのほかピーチ・ジョンの方が気に入って(笑)、そのまま下着開発プロジェクトの名前になりました」
バービー お笑いコンビ「フォーリンラブ」のボケ担当。エシカルな活動でも注目され、異色の芸人として活躍。TBSラジオ『週末ノオト』でナビゲーターを務める。
※『anan』2020年9月16日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・谷口夏生 取材、文・新田草子 撮影協力・バックグラウンズファクトリー
(by anan編集部)