心に残る言葉と出合えるかも! 絵本専門店店主が選ぶ、絵と文の魅力に引き込まれる“絵本”4冊
お気に入りの絵と文を日ごとに楽しんで。
絵本だけを取り扱う書店『ニジノ絵本屋』。店内には、国内はもとより海外の絵本も並ぶが、店主のいしいあやさんは数ある絵本の中から、どんな作品に魅力を感じ、セレクトしているのだろう。
「私自身、最も惹かれるのは、絵本が持つデザイン性の高さ。ずっと手元に置いておきたいと思えるような見た目であることが、まずは大切です。それに絵本は、絵で語られていることが多いぶん、文章がすごく厳選されていると感じます。そんな中から、心に残る言葉と出合えることも。お店に置きたくなるのは、そういう気持ちが想起される作品が多いです」
最近は、いわゆる絵本作家ではない人が絵本を手がけることもある。ニジノ絵本屋でも、取り扱っているそう。
「私たちは、絵本の販売だけでなく、作家さんと一緒に絵本作りもしていますが、現役農家さんなど他業種の方と作った作品もあります。絵本というフォーマットに新たな視点が入ると、物語のバリエーションが広がるので、とても素敵なことだなと思います」
多様に進化する絵本の世界。そんな中から今回いしいさんが選んでくれたのは、絵と文の魅力に引き込まれる4冊。
「どれも部屋に飾っておきたくなるような美しさ。文章も、何気ない言葉のようで奥深いなど、読み返すタイミングにより、新たな気づきをもたらしてくれる気がします。その日の気分に合わせて好きなページを開いて、見える場所に置いておく。そんな付き合い方をするのもおすすめです」
固定観念から解放されるような感覚に。
『今日は自習にします』
国語、算数、英語など、さまざまな課題に主人公がひとり自習に取り組む姿が描かれた絵本。「算数では、『君がげんき』に何を足したら『僕は幸せ』になるのか…。本の中での主人公の答えは、『なにも足さなくていいや』なんです。そんな肩の力を抜いて自分と向き合えるヒントがいっぱい。シンプルな絵も魅力です」。著/工藤あゆみ 青幻舎 1980円
離れていても心の繋がりが感じられる。
『LEMON TIME‐檸檬とつなぐ毎日‐』
主人公は在宅ワークの女性。時に孤独や仕事のプレッシャーを感じる彼女のもとに、故郷から山盛りのレモンが届く。「この絵本が出版されたのは、コロナ禍の2021年。物語には、離れていても心は繋がっているという思いが込められていますが、状況が緩和した今にも通じるメッセージ」。文/ナカセコ エミコ 絵/うのまみ ニジノ絵本屋 1760円
喜びも、悲しみも夕日が優しく包み込む。
『ゆうやけにとけていく』
麦畑で作業をする夫婦、プールで遊ぶ子どもたち…。それぞれの営みを夕日が優しく包み込む。第73回小学館児童出版文化賞受賞作品。「ページをめくるたび、夕日が少しずつ沈んでいくんです。喜びも、悲しみも、すべての感情が夕日とともに溶けていく。いろいろあった一日を癒してくれるような絵本です」。作/ザ・キャビンカンパニー 小学館 1870円
おつきさまと一緒に月の変化を楽しもう!
『おつきさまのえほん』
月のかたちの移り変わりを、表情豊かなおつきさまと、リズミカルな文で綴った一冊。「新月からだんだん姿を現し、『ふっくらしてきた おつきさま』なんて表現するところがチャーミング。月が約29日の周期で満ち欠けするという、忘れてしまいがちな知識を改めて確認するにもピッタリ」。文/ふわはね 絵/カワチ・レン ニジノ絵本屋 1760円
いしいあやさん 絵本専門店『ニジノ絵本屋』代表。2011年、1.5坪のスペースから店をスタート。’12年より、出版事業も開始。絵本の企画編集や、絵本にまつわるライブパフォーマンスなども行う。著書に『ニジノ絵本屋さんの本』(西日本出版社)。
※『anan』2024年10月2日号より。写真・中島慶子 取材、文・保手濱奈美
(by anan編集部)