上坂すみれ「ちょっとビックリされるかも」 アーティスト活動10周年記念のベストアルバム発売
――上坂さんの歩みがギュッとつまった、充実のアルバムですね。ご自身としてはこの10年以上の年月、どうお感じになりますか。
アーティスト活動を10年も続けることができたのが、自分にとってすごく意外なんです。’11年に声優としてデビューしたすぐ後、新人にもかかわらず’13年にアーティストデビューさせていただいたのですが、歌の表現に関しては本当に素人でした。人前で歌ったこともほとんどなく、自分が好きなこと、やりたいこと、できることもバラバラという状態からのスタート。周囲のスタッフの方々や、何より「同志」と呼んでいるファンの皆さんが温かく、優しく、そしてとても根気強く支えてくださっての10年だと実感しています。
――キャリア初期からご自身の“色”がハッキリしていたように見えるので、それこそ意外なお話です。お好きな楽器であるテルミンを演奏されたり、当初から唯一無二の人、というイメージでした。
好きなことや趣味はたくさんあって、それを皆さんに注目していただけるのはすごくありがたかったです。ただ、そうして注目していただけることに対して、自分のアーティストとしての実力が追いついていないというのが、長らく悩みどころではありました。
――とはいえベストアルバム収録の楽曲には、大槻ケンヂさんなど豪華クリエイターのお名前がズラリと並んでいて壮観です。
音楽もクリエイターさんも私はたくさん愛していて、そうしたクリエイターさんにご自身の好きなことを表現していただくというスタンスのもと、楽曲制作をお願いすることも多いです。オファーを受けてくださるなかで、自然と楽曲たちの振り幅が大きくなって、今回のアルバムのようなかたちに辿りつくことができました。ただ、私はかつてリアルタイムのポップスをあまり聴かず、昭和歌謡やメタルロック、アニソンや電波ソングばかり聴いて育ってきた人間で…今回のベストアルバムで初めて上坂すみれの世界に触れてくださる方は、ちょっとビックリされるかもしれませんね(笑)。
――ご自身は、これまでどんなベストアルバムを聴いてきましたか。
中野ブロードウェイの、いまはもうないCDショップで買った、筋肉少女帯さんの『筋少の大車輪』は何度も聴きました。シマウマのジャケットが印象的な『Y.M.O.ツイン・ベスト Y.M.O.ヒストリー』も忘れられません。歌謡曲だと「ゴールデン☆ベスト」というシリーズが、昭和歌謡を後から追いかけるときにありがたかったです。たとえば、私が大好きな俳優さんが歌う『ゴールデン☆ベスト 天知茂』ですね。ベストアルバムにはアーティストの方のカラーがよく出ていますから、何から聴いていいかわからないときに手を伸ばせる、そこからいろいろと広げていける、とても重要なものだと思います。
――『SUMIRE CATALOG』も、そうした楽しい“未知との遭遇”につながればいいですね。
世の中から見れば珍しい楽曲が多いのかもしれませんが、「自分が大好きで吸収してきたものを再構築して楽曲にする」というスタンスは一貫させてきました。楽曲制作にあたってリファレンスは準備するのですが、真似はしちゃいけなくて、私が大好きなものをちりばめつつ、そのどこにもないつなぎ合わせ方を生み出そうと、ずっと心がけています。私の好きな要素を組み合わせた、でも新しい楽曲をつくろう、って。そうした曲が集まった『SUMIRE CATALOG』を聴いて、「上坂すみれは、10年間も好きなことをやり続けられたんだ」と感じていただければ嬉しいです。そしてそのことが、誰かの、何かしらの勇気になれば、と願っています。
うえさか・すみれ 神奈川県出身。2011年、声優デビュー。アーティストとしては’13年デビュー。’16年には両国国技館単独ライブ成功を飾る。そして’23年にアーティスト活動10周年を迎えた。YouTubeチャンネル「上坂すみれのおまえがねるまで」、ABEMA『声優と夜あそび2024』火曜メインパーソナリティなど幅広く活躍。
アーティスト活動10周年を記念したベストアルバム『SUMIRE CATALOG』が発売中。新録の3曲を含む全30曲が収録されるほか、完全限定生産盤には「栄光の同志勲章バッジ」と「大判フォトブック」が特典に。ベストツアー「SUMIRE UESAKA BEST TOUR 2024 すみぺの大理論」が9月28日(土)から大阪、愛知、東京の3か所にて開催される。
※『anan』2024年8月28日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・佐野夏水 ヘア&メイク・澤西由美花(Kurarasystem) インタビュー、文・宮田文久
(by anan編集部)