オフィスラブや思春期男女ものも…現代らしく性愛を描いたコミック5選

2024.8.19
読んで浸る、学ぶ、考える。性をめぐるコミックガイド。

妄想を止めずに読める漫画でエッチな気分に。

書店に勤め、現在はストリッパーとしても活動している新井見枝香さん。ステージに立って、“男性のエロは単純だ”という自らの思い込みに気づいたそう。

「女の人って、雰囲気やストーリーがあって初めてキュンとするじゃないですか。男の人も同じで、私が全裸で仁王立ちしても、それは全然エロじゃない(笑)。男性向けの漫画を読むと、彼らがときめくポイントの勉強になります」

没入感を得やすいのも、絵がある漫画のよさだと感じている。

「絵を立体化させるのは読み手自身だから、イメージが湧きやすい上に、興醒めすることもないんですよね。AVもいいんですけど、個人的に喘ぎ声がちょっと…って思うことがあって。その点、漫画だと好きな音程、好きなスピードで脳内再生できるので、想像を邪魔されることなく、シンプルにエッチな気分になれるんです」

そう漫画の特性を話す新井さんがセレクトしてくれたのは、現代らしく性愛を描いたコミック。

「今や推し活がすっかり浸透しましたけど、誰かを推すことで、リアルな恋愛が遠のくのではないかと私は思っていました。でも実はそうではなく、推し活って人を好きになる回路が常にフル回転している状態だから、恋愛モードが活性化して身近な人に萌え、好きになったりすることもあり得る。そう思い始めた頃に読んだのが『女の園の星』です。女子生徒が先生のステッカーさえ作っちゃうみたいなノリに、推し活と恋愛感情の近さを感じたり。セフレに近い関係性を後ろめたく描かない『こういうのがいい』も新しい!」

性の回路を活性化させてくれるコミック。

『こういうのがいい』 双龍

コミック

セフレ=彼氏・彼女以下として描かない自由な関係性。
コミックス累計200万部を突破し、ドラマ化もされた人気作。オンラインゲームのオフ会で出会った村田と友香は、その日のうちに…。「セックスフレンドを“後ろめたいこと”“彼氏・彼女以下の異性”として描かないのが画期的。束縛も我慢もしない関係だからこそ目一杯セックスを楽しめる。こりゃ気持ちいいだろうな~(笑)」。「となりのヤングジャンプ」にて毎週金曜更新。

2409 コミック2

集英社 1~8巻 660円~ ©双龍/集英社

新装版『私たちが恋する理由』 ma2

コミック

性的妄想の楽しさが蘇るオフィスラブコミック。
ガッチリ体型の先輩に抱きしめられたら…そんな妄想も出てくるラブストーリー。「当然セクハラはダメですが、職場で性的なことを感じてはいけない、感じさせてはいけない中、性癖どストライクの人との妄想をすることって全然あるわけで。人間には性欲があるし、妄想は止められない。そんなことを思い出し、断絶していた思考回路が開通したようでした」。

コミック

シュークリーム 1~5巻 各880円 ©ma2/シュークリーム

『女の園の星』 和山やま

コミック

爆笑必至の人気漫画で知る萌えと性愛の新しい関係。
ある女子校の国語教師・星先生が、女子生徒に翻弄される日常がおかしくも愛おしい。「ちょっと変わった先生に萌えている、みたいな女子生徒が登場するのですが、こういう気持ちと、いわゆる恋愛の漫画で描かれるような“異性にドキドキして、上手くいかずもどかしい気持ち”って、これまでは全然違うものとされていた気がして。この作品には新鮮な驚きがありました」。

コミック

祥伝社 1~3巻 748円~ ©和山やま/祥伝社 FEEL COMICS

『僕の心のヤバイやつ』 桜井のりお

コミック

ただ素敵と思うだけではない思春期女子の強烈な性欲が新鮮。
中二病の陰キャ・市川京太郎とカーストトップの美少女・山田杏奈の恋。「まだ中学生でセックスには至らずとも、女の子が紅潮して触れてほしそうにしているとか、ストレートな性欲が描かれていることが私にとっては衝撃で! 男の子も女の子も関係なく、同じパワーで突き進んでいいし、強い女の子がなよっとした男の子をリードする恋愛が成立するのも今っぽい」。

コミック

秋田書店 1~10巻 各550円

『胚培養士ミズイロ』 おかざき真里

コミック

不妊治療最前線に差し込む“セックスは気持ちいい”という光。
顕微鏡を使い、精子と卵子を受精させる胚培養士。天才的な技術を持つ水沢歩は、不妊治療を行う夫婦に子どもを届けるため尽力。「セックスが妊娠のための義務になってもおかしくない中、互いを大切に思う愛情や、肌の触れ合いは気持ちいいというシンプルな感覚を忘れていない夫婦が印象的。不妊治療をする夫婦の新しいかたちに希望を見る人もいるだろうと思えました」。

コミック

小学館 1~5巻 770円~

新井見枝香さん 書店勤務時代に「新井賞」を創設し、売り上げに貢献するなどカリスマ書店員として活躍。2020年、ストリップ劇場の踊り子に転身。著書に『きれいな言葉より素直な叫び』(講談社)など。

※『anan』2024年8月14日‐21日合併号より。写真・中島慶子 取材、文・小泉咲子

(by anan編集部)