意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「脳埋め込みデバイス」です。

神経回路の損傷を補足するための脳インプラント。

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脳とコンピューターをつなぐブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)を開発する会社「ニューラリンク」。1月末に初めて人間の脳にデバイスを埋め込む臨床試験を実施したと、創設者のイーロン・マスク氏が発表しました。被験者は、直接手を動かすことなく、思考するだけでコンピューターのカーソルを動かせるようになります。ワイヤレスでそれが可能になったというのは画期的なことでした。

脳に埋め込むとはいえ、ニューラリンクが接触するのは、体を動かす機能に関わる大脳の外側部分です。頸髄を損傷したり、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などにより、四肢を自由に動かせない患者が、PCやロボットアームなどの機器を操作できるようになることを目的に開発しています。ですから、イマジネーションなど、いわゆる思考そのものに携わる脳の深層部に働きかけるわけではありません。

BMIの分野は、今世界で注目されています。日本でも大阪大学の平田雅之教授率いる研究室が、ワイヤレス体内埋込型BMI/ブレイン・コンピューター・インターフェイス(BCI)を研究しており、医療機器のベンチャーとして「JiMED(ジーメド)」を2020年に設立しました。ニューラリンクをはじめ、欧米のBMIは主に「侵襲型」といって、デバイスを直接脳に繋げて脳波を計測します。しかし、脳はデリケートな臓器ですから、直接埋め込むのは大変なリスクも伴います。日本では「低侵襲型」という、脳への負担を軽減した技術の開発を積極的に進めようとしています。低侵襲型は、侵襲型に比べて精度が低いといわれていましたが、最近の研究ではほぼ同等のデータを得ることが可能になりました。

脳科学者の茂木健一郎さんは、これを機に、自分の脳への興味を深めてほしいと話していました。今後、議論が必要になるのは倫理の領域でしょう。研究開発がさらに進み、脳の思考を司る部分までもが人工的にコントロール可能になった時に、誰が何の目的でそれを使うのか。デバイスがハッキングされることはないのか。あらゆるリスクを考え、事前に議論をし、対策をとっておかないと危険だと思います。

消さない

ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年4月10日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)

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