世界平和に貢献できることを願って…日本ならではの細やかなものづくりが反映された「H3ロケット」

2024.3.24
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「H3ロケット」です。

日本のものづくり技術の結集が宇宙開発につながって。

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国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月17日に「H3ロケット」の試験機2号機の打ち上げに成功しました。H3ロケットは、日本独自に開発した次世代型大型基幹ロケット。これからの宇宙輸送を担うことが期待されています。

宇宙産業の広がりとともに、宇宙に様々なものを運ぶことが求められますが、運ぶものの大きさに合わせてロケットをカスタマイズするのは時間も費用もかかります。その点、H3は汎用性が高く、他のロケットで使ったエンジンを再利用でき、運搬するものに合わせて組み合わせが自由な構造。民間の自動車で使われている電子部品を転用し、コストを抑えました。

宇宙産業は、安全保障の面からも重要な領域ですが、核兵器同様、大国しか参入できないのが現状です。日本は核を持っていませんが、経済力はありました。経済力に翳りが生じてきた今、人道支援国家として、宇宙産業に入り込めない小さな国々に対して、支援できる体制を作りたいという思いが国にはあります。H3のプロジェクトマネージャーの岡田匡史さんは、自分たちは地球人なのだと語り、だから一つの星、国境のない世界という考えのもとで、このロケットを世界中の人に使ってほしい、とおっしゃっていました。

H3ロケットの開発は、JAXAのマネジメントのもと、三菱重工業など民間企業が行っています。試験機1号機は昨年3月に打ち上げましたが、2段エンジンに着火できなかったんですね。理由を検証したところ、大量生産される部品の僅かなムラが課題としてあがった。つまり、日本のものづくり産業の裾野をアップデートすることが、打ち上げ成功の大前提だったんですね。1年に満たない間に克服し成功に導いたのは、すごいことだと思います。

日本ならではの細やかなものづくりが反映されたH3ロケット。予定した日時に打ち上げられる「オンタイム率」は、世界でも誇れるレベルだそうです。現在はまだ試験機なので、今後改良を重ねて商用に向けて開発は進みます。地上は分断が広がっていますが、日本の宇宙産業の発展が、世界平和に貢献できることを願いたいですね。

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ほり・じゅん ジャーナリスト。元NHKアナウンサー。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX月~金曜7:00~8:30)が放送中。

※『anan』2024年3月27日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)