下腹ぽっこりは赤信号! 体重が変わらなくても安心できない「運動不足」のリスク

2024.2.8
20代30代女性の9割が運動不足!? 下腹ぽっこりは筋肉が衰えている証拠!? 気になる最新ボディメイク事情を調査します。

20代30代女性の9割が運動不足!

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調査数が多く、信憑性のある2016年の厚生労働省のデータによれば、運動習慣のある20代30代の女性は10%未満。9割は運動習慣がないという結果に。

「ここで言う運動習慣とは1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上続けていること。歩くにしても通勤などの移動ではなく、余暇の時間で30分以上歩けば運動になります」と、同志社大学スポーツ健康科学部教授の石井好二郎先生。

「運動しない理由は大体、時間がないから。でも本当に時間がないかといえばそんなことはないと思います。実際、アンケートをとってみると忙しいビジネスマンやセレブリティほどちょっとの時間を使って運動している。海外でもオバマ元大統領や歌手のテイラー・スウィフトがランニングを習慣にしていることは有名な話です」

また、スポーツ庁の調査では体育の授業を除いて1日10分足らずしか運動しない女子中学生が2割近くいるというデータもあるそう。ちなみに男子中学生の場合はその割合は1割以下。もはや運動不足は女性のデフォルト? 通勤の電車やバスでは絶対座る、家では大体座るか寝て過ごす、休日も寒くて外出がおっくう。お休み気分が抜けずに、そんな毎日が当たり前になっていませんか?

年齢別の運動習慣のある女性の割合

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「平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要」(厚生労働省)
20~29歳:9.9%、30~39歳:9.8%、40~49歳:13.4%、50~59歳:25.9%、60~69歳:35.9%

20代以上の年齢層の調査結果。20代30代の若い層で運動習慣を持っていると答えた人はともに9%台。年齢が高くなるほど運動習慣が増える傾向にある。

下腹ぽっこりは筋肉が衰えている証拠!

若い女性に多い運動不足。それが原因で太っているかというと、さにあらず。逆に20代女性の約2割は“やせ”に分類されるというデータもある。でもこれはあくまで体重が標準より少ないという話。

「体重的には“やせ”でも、筋肉量が少ないというのが今の若い女性の特徴だと思います。それを示す一番分かりやすい目安は下腹がポコンと出ていることです」

体重は変わらないのに下腹がぽっこり。これがまさに赤信号。

「体重が重い人はそれを支えるために脚の筋肉がしっかりしていますが、そんな人でも細くなる筋肉があります。それが腹筋。体重を支える必要がないので運動不足になるとすぐに萎縮します。その結果、今まで筋肉で押さえていた内臓が下に落ちてきて、下腹部が出てくるんです」

スカートやパンツのウエスト部分からお腹の肉がハミ出る、タイトなウェアを着ると下腹だけがポコンと目立つ。それは、なにも腹筋だけが衰えているわけではなく、全身の筋肉がすでに衰えているというサイン! 体重が変わらないからと安心はとてもできない。

筋肉不足で糖尿病のリスクが増える?

筋肉が少ないことがなぜ黄色信号に? それは見た目にボディラインが崩れることだけではなく、病気のリスクが高まるから。その病気の名は糖尿病。

「血糖値が高くなると膵臓からインスリンというホルモンが出て血糖値が下がる。これはみなさん知っていると思いますが、実はインスリンが直接血糖値を下げるわけではありません。インスリンは血糖をどこそこに運びなさいという指令を出しているだけ。その場所が、筋肉や脂肪です。とくに血糖の約7割は筋肉に運ばれます」

血糖を筋肉に取り込むには、筋肉の中にいる糖の運び屋がインスリンによって活発に働くことが必要。ところが筋肉が少なかったり運動不足で筋肉の質が悪くなると、運び屋がうまく働かず、インスリンをいくら出しても血糖が取り込まれなくなる。こうして糖尿病のリスクが高まるという仕組み。

「運動不足などによりインスリンが効きにくい状態を“インスリン抵抗性”といいます。日本の痩せた若い女性はアメリカの肥満者よりこのインスリン抵抗性の割合が高いというデータもあります」

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左から、標準体重の若年女性・痩せた若年女性・米国の肥満者
年齢:22.6歳・23.6歳・19~34歳
BMI:20.3kg/m2・17.4kg/m2・30.0kg/m2
耐糖能異常の割合:1.8%・13.3%・10.6%

標準体重と比べると、やせ型女性の耐糖能異常は約7倍。インスリン分泌量の低下やインスリン抵抗性が原因とされる。Sato et al.J Clin Endocrinol Metab.106(5):e2053-e2062,2021.

日常生活でのチョコチョコ活動のすすめ。

運動不足は自覚しているが、運動する気はないという女性は少なくない。アメリカ都市部の女性オフィスワーカーが、運動を意識してウォーキングシューズで出勤し、オフィスでハイヒールに履き替える一方、日本の女性はヒールで出勤してサンダルに履き替える。でもそれではボディラインは崩れ、健康も損なわれる可能性が大。

「筋トレのようなしっかりした運動を行うことも大事ですが、日常生活の中でできることを少しずつ取り入れることも大切。私の自宅はマンションの5階ですが、大きな荷物がない限り階段を使います。大学でもメールボックスの郵便を自分で取りに行ったり、トイレは1フロア下のトイレを使います。そうすると、1日の平均歩数は1万5000歩以上に。意識して小さな身体活動を少しずつ積み上げていくことが大事なんです」

すきま時間を見つけてチョコチョコ運動を取り入れる。これなら“さあワークアウトしよう!”と力まずともできるはず。“時間がない”という言い訳はもうNG。年末年始でゆるんだカラダとココロを今こそリセット。

いしい・こうじろう 同志社大学スポーツ健康科学部スポーツ健康学科教授。専門は運動処方、運動療法。共編著に『もっとなっとく使えるスポーツサイエンス』(講談社)などがある。

※『anan』2024年2月14日号より。イラスト・Hi there(vision track) 取材、文・石飛カノ

(by anan編集部)