性器のかゆみや出血、おりものの変化は危険信号!? 20~30代女性がかかりやすい性感染症5つ

2023.8.21
セックスをする以上、誰でもかかる可能性がある“性感染症”。身近な問題なので正しく理解を。

性感染症とは、性器同士の接触や挿入、キス、オーラルセックスなどで感染する病気のこと。

「よく、“生で挿れなければ感染しないでしょ?”と言う人がいますが、それは間違い。挿入しなくても性器同士が触れ合ったり性器に口で触れたり、なかにはキスでうつる病気もあります。つまり、普通のセックスでうつる病気なんです」

と言うのは、性感染症やそれを取り巻く事情に詳しい、産婦人科専門医の川名敬先生。性器で感染する病気という意味では、女性は外側と内側があるので、ある意味、男性よりも感染のリスクは高い、といえるのかも…。

「男性側は症状が出ないことも多く、ヘルペスに感染した女性の4分の3は、相手のペニスを見ても感染がわからなかった、というアメリカの調査結果もあります。でも女性側は、妊娠した際に赤ちゃんに感染させる危険があるので、絶対に治療をしてほしい。ほとんどの病気が薬で治るので、少しでも気になったらまず婦人科の病院へ行ってください」(川名先生)

【感染する可能性のある行為】
性器同士の接触、挿入、オーラルセックス、キス

20~30代女性がかかりやすい感染症

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尖圭コンジローマ

【潜伏期間】数週間~3か月

【解説・症状】良性のHPV(ヒトパピローマウイルス)によるウイルス感染症。HPVワクチン(4価か9価)の接種で完全に予防できる。[症状]性器周辺にカリフラワー状の尖ったイボができ、痛みやかゆみもある。除去しても再発する可能性が高い。

【診察や検査】症状が出たら視診による診断。

【治療法】主に塗り薬を塗布。場合によっては外科手術でイボを除去する場合も。早期治療をすれば再発しにくくなる。

【口からうつる?】うつる(オーラルセックス)

性器クラミジア感染症

【潜伏期間】1~3週間

【解説・症状】日本で最も感染者が多い性感染症。10~20代に多く、近年女性の感染が急増。性器だけでなく喉に感染する場合も(咽頭クラミジア)。男女ともに半数以上が無症状といわれているが、放置すると不妊の原因や、母子感染を引き起こすこともあるので、早期発見したい。[症状]性交後腟からの出血、おりものの増加、生理痛のような下腹部の痛み。

【診察や検査】おりもの検査、尿検査(淋菌と同時に検査可能)。

【治療法】抗菌剤を、1~7日間服用。約2週間後の再検査で陰性が確認できれば治療終了。

【口からうつる?】うつる(キス、オーラルセックス)

淋菌感染症

【潜伏期間】2~7日

【解説・症状】淋菌による細菌感染症で、1回のセックスで感染する確率は30~50%と非常に高く、喉に感染することも(咽頭淋菌感染症)。女性は自覚症状があまりないので気がつきにくい。[症状]性交後腟からの出血、おりものの増加、濃い黄緑色のおりもの、外陰部のかゆみ、腫れ、膀胱炎的症状。

【診察や検査】おりもの検査、尿検査(クラミジアと同時に検査可能)。

【治療法】症状に合わせ、1~7週間抗菌剤を注射や点滴する。約1週間後の再検査で陰性が確認できれば治療完了。

【口からうつる?】うつる(キス、オーラルセックス)

性器ヘルペスウイルス感染症

【潜伏期間】3~7日

【解説・症状】ヘルペスウイルスによる感染症。感染力が高く、一度感染すると体内にウイルスが棲み着くので、免疫力が落ちると再発しやすくなるのが特徴。感染から数年、数十年を経て症状が出ることも。[症状]性器に小さな水ぶくれやただれができ、かゆみが出る場合も。発熱や、排尿や歩行が困難になるほどの激痛。

【診察や検査】症状が出たら視診による診断。検査はあるがあまり用いられない。

【治療法】症状に合わせて5~10日間抗ウイルス薬を服用。重症の場合は点滴治療も。早期治療をすれば再発しにくくなる。

【口からうつる?】うつる(キス、オーラルセックス)

腟トリコモナス症

【潜伏期間】1~3週間

【解説・症状】トリコモナス原虫(目に見えない大きさの微生物)が外性器や内性器に感染することで起こる感染症。感染力が強く、風呂場の椅子など性行為以外での感染もある。自覚症状がないことも多い。[症状]泡状で黄緑色の生臭いおりものが大量に出る。性器にかゆみや痛みが出たり、性交痛や排尿痛も。

【診察や検査】症状が出たら視診による診断。

【治療法】7~10日抗菌剤を服用(薬によっては1回の場合も)し、治療完了。腟の中に薬を入れることも。次の月経終了時に再検査が理想的。

【口からうつる?】うつらない

性器のかゆみや出血、おりものの変化は危険信号。

上で解説した病気、それぞれに症状はありますが、以下の5つのようなことが体に起きた場合は、一度疑ってみるべき。

「よく“おりものに変化が”といわれますが、一番わかりやすいのは腟からの出血。クラミジアと淋病は子宮頸部に感染するので、抜いたペニスに少し血がついていたり、性器を拭いたティッシュにつくということも。“生理が早く来た”、あるいは“排卵の出血かも”と見逃す場合も多いので、要注意」(川名先生)

【主な症状】
・性器からの出血
・外陰部にできものがある
・おりものの量やニオイ、色の変化
・外陰部がかゆい、痛い
・下腹部の痛み

ほとんど症状がないため、男性はかかっても気がつかない…。

女性の場合、上で解説したような兆候があるので、“おや?”と思うタイミングはありますが、男性はほとんどないらしい。

「淋菌だけは、排尿時に痛みがあるのでそれで病院に来る人が多いのですが、他は痛みやかゆみはないので、見逃している人が多い。なので正直なところ、男性側の意識はとても低い。“大丈夫”と言われても、予防は必須です」(川名先生)

挿入もオーラルも常にコンドーム必須!! 誰でもかかる病気なので気軽に受診を。

最も手軽にできる予防法は、やはりコンドーム。

「互いに検査をしクリーンなことが証明されていて、よほど信頼がある関係性なら別ですが、性感染症予防の観点から考えると、セックスをするときには絶対にコンドームを使ってほしい。100%ではないにしろ、かなり予防率は上がります。挿入だけでなく、オーラルセックスのときも忘れずに」(川名先生)

気づかずに見過ごしてしまうと、将来の妊娠や子どもに影響も…。

治療をせずに放置すると、女性の場合は不妊症の原因にも。

「クラミジアや淋菌は卵管が詰まり子宮外妊娠の原因になることも。また“母子感染”といって、子どもに影響が出ることもあり、尖圭コンジローマは喉に大きなイボができたり、ヘルペスと梅毒は、脳に影響が出たり、難聴や失明、精神発達障害を引き起こす可能性も。妊娠の前に必ず治療を」(川名先生)

郵送での検査も可能。治療は薬の服用などで終了。

上記で解説しているように、クラミジアと淋菌感染症に関しては、尿検査が可能。自宅から郵送し、検査もできます。

「梅毒は血液検査なので、婦人科や性病科といった病院に行きましょう。また梅毒とHIV検査は保健所で匿名・無料で受けられます。治る病気に関してはほとんどが、一定期間の薬の内服や塗布で終了です」(川名先生)

川名 敬先生 産婦人科専門医。日本大学医学部産婦人科主任教授、日本性感染症学会監事。性感染症学、婦人科のがん治療、HPVワクチンなどのスペシャリスト。近年性感染症に関してNHKの番組などにも出演し、啓発に努めている。

※『anan』2023年8月16日‐23日合併号より。イラスト・ながたなつき

(by anan編集部)