源泉掛け流し、滋味深い野菜料理で養生を…東京から2時間で行ける大人の温泉宿

ライフスタイル
2023.06.28
純粋にお湯を楽しみ、体に良いものをほどよく食べて、ひたすら休む――。忙しい現代人にこそ必要な「湯治」をミニマムな形で叶えてくれる、小さな湯宿へ。

【神奈川県/箱根湯本】養生館はるのひかり

東京から2時間と少しの小旅行。日常を離れ、心身を静かに養う。

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何もしなくていい時間を心から楽しむ。

豪華なグルメや観光体験は追求せず、ただお湯に浸かり、心と体を整えたい――。ストレス過多のいま、温泉旅にもそんな昔ながらの湯治的ステイを求める人が増えている。「養生館はるのひかり」はそうした声に応えるように、2015年のオープン以来“何もしない時間”の提供に重きを置いてきた宿だ。あるのは源泉掛け流しの温泉と、玄米ご飯や地元の無農薬野菜が中心の食事、そして誰にも邪魔されずに過ごせる居心地の良い部屋だけ。連泊を勧めてはいるけれど、1泊でも利用できる。

「煩雑な日常から解放されることが何よりの養生。温泉や食は良き脇役です。まずは静かな環境で心身をゆるめていただきたいです」

とは、湯守兼支配人の米山雄二郎さん。チェックインの時間や門限、館内では静かに過ごすことなど、宿のウェブサイトに少々多めの制約が並ぶのも、泊まる人すべてに養生の良さを体感してほしいとの思いからだ。

東京から箱根登山鉄道の箱根湯本駅まで2時間とちょっと、駅からはバスで5分ほど。もとは茶室だったという茅葺き屋根の母屋で、自家製のしょうが湯をいただきながらチェックインを済ませ、部屋に案内されると、そこから先は自分だけの時間だ。華美さはないけれど清潔に整えられた部屋はトイレと洗面所もあって快適。外には箱根の山の緑が広がり、眺めているだけでほっと安らぐ。

大浴場も客室同様、無駄を排したシンプルモダンな造り。特筆すべきなのが、「あつ湯」「適温」「ぬる湯」と、温度ごとに3つに仕切られた浴槽だ。好みの湯温を心ゆくまで楽しむもよし、ぬる湯から適温、あつ湯に入ってまたぬる湯へ…と、無限ループにはまるもよし。極上の「無」の時間を心ゆくまで堪能できる。

もしやり残した仕事があるのなら、夕食前に片付けてしまうのもいい。部屋ごとに機器が設置されているおかげで、Wi‐Fi接続が実にスムーズ。もちろんお気に入りの動画だってサクサク見られる。ワーケーションスタイルも、好きなことだけ、のリトリート滞在も。思うままに過ごせる。

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体が内側から整う、滋味深い野菜料理。

夕食の膳に並ぶのは、地元の農家や自家菜園から届く、露地栽培の無農薬野菜の料理。10種類以上の野菜を使うサラダに、旬の野菜の香りをとじ込めた天ぷら…。いずれも野菜のうまみが濃く、特製の微発芽玄米ご飯とともにゆっくりと噛んで味わうと、しみじみと満たされた気持ちになる。

実は前出の支配人・米山さんは農学部の出身。発酵学や微生物学、食品加工学など幅広い知識を駆使し、料理長と共に唯一無二のメニューを日々探求している。消化が良く体に負担をかけないものをと、かつお出汁と朝食の焼き魚を除いて食材はすべて植物性。

「ベースは、祖母の世代の食事。そこから素材や作り方をさらに吟味、洗練して、ここにしかないものを提供したいと考えています」

しっかり食べても胃もたれすることなく、それでいて満足感が高いのは、ひと品ごとにそんな熱意が込められているからなのだ。

心地よいお湯と健康的な食事に清潔な部屋。必要最低限、けれど本当に欲しいものだけが揃う養生の宿は、やっぱり連泊が理想的。2泊、できることなら3泊して、癒しの時間を存分に享受したい。

Entame

【夕食】
初夏のメニューの一例。デザートのみかん寒天も含めて、全8品。食べごたえ十分だけれど、総カロリーはなんと500kcal未満。夕食時のみお酒のメニューも用意。

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【朝食】
まず供されるのは、もち麦と古代米入り雑穀ご飯と、野菜のお味噌汁。さらに昆布出汁の湯豆腐、らっきょうのハーブ漬けと青菜のお浸し、野菜の炊き合わせの小鉢類や焼き魚が並ぶ。

養生館はるのひかり
神奈川県足柄下郡箱根町湯本554 TEL:0460・85・5641 2名1室・1泊2食付き¥16,060~(1名1室¥18,040~) チェックイン15:00~17:00 チェックアウト10:30 アクセス/箱根登山鉄道箱根湯本駅から乗り合い100円バスBコースで「はるのひかり」下車、または箱根登山バスで曽我堂上下車、徒歩1分。https://harunohikari.com

※『anan』2023年7月5日号より。写真・津留崎徹花 取材、文・新田草子

(by anan編集部)

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