遅れてやってきた青春模様がほほえましい~男子高校生×女装裏垢おじさんの友情物語

エンタメ
2023.02.14
マンガ家ユニット・藤峰式さんに、マンガ『不動さんの裏垢活動』について話を聞きました。

青春はいつからでも始められる! 中年と高校生の“映える”友情。

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「キラキラしている子と地味なおじさんみたいに、年齢や立ち位置などが全然違う男性ふたりが、友達になるとしたらどんな感じなんだろうっていうのが着想ポイントです」

藤峰式さんの本作で、高校2年生の木元良と42歳の不動敬一が出会うのは「KLART(クラート)」という新鋭SNS。良は熱い支持を得ているインフルエンサーだが、不動は顔や名前を出さずに「裏垢」で活動している身。それも自慢の美脚を撮影して晒す、脚限定の女装アカウントだ。

「いろんな裏垢を実際に見てみたのですが、そこで書くことや表現することは別に本当じゃなくても、自分が気持ちよくなれればいいのかなと思いました。不動さんにとって裏垢は、ネカマとしてストレスを発散できる場所になっているんです」

不動は代わり映えしない日々を過ごしながら、細々と承認欲求を満たしていたが、良が生配信でその裏垢に触れたことで、ファンから嫉妬されてまさかの炎上。直接会って謝罪したいと申し出た良は、その場に中年男性の不動が現れても嫌悪感を示すどころか、あっさり受け入れる。

「青春を一緒に過ごしたかった友達とようやく出会えた不動さんは、本来送るべきだった楽しい学生時代を取り戻している感じなんです。なので多少ピュアでもいい気がして(笑)。良くんに関しては、今の10代、20代はジェンダー問題に小さい頃から触れてきて、フラットな社会に慣れている人が多いのかなって思いもありつつ、こういう子がいたらいいなという理想も入っています」

ふたりは“映え飯友達”として、気になる店を巡る仲になり、やがて良の友達も交えて遊ぶように。その間、SNS上では裏垢の身バレの危機や、匂わせ疑惑が持ち上がったりするものの、遅れてやってきた青春に戸惑いながら、新しい世界に飛び込んでいく不動の姿がほほえましい。

「年の差の友情を描く上では、踏み込みすぎないことを大事にしているかもしれません。相手が困っているサインを出したら、助けに行くけれども、質問はしすぎない。ベタベタしないけど、いつ会っても楽しくいられる存在というイメージです」

BL作品のファンを多く持つ藤峰式さんだが、この物語では作者自身も新鮮な感覚を味わっているそう。

「ゆっくり距離が縮まっていく関係を、丁寧に描けることが楽しいです。今後は、良くんだけでなく不動さんの裏垢が、ほかの人にいい影響を与える過程も描いていきたいですね」

藤峰式『不動さんの裏垢活動』2 女装の裏垢活動をする中年男性と、インフルエンサー高校生。前向きな良くんといることで、不動さんの映えない人生がキラキラ輝き始める、愉快な友情物語。講談社 748円。©藤峰式/講談社

ふじみねしき 「ふじみね」と「しき」からなるマンガ家ユニット。著書に『有休オメガ』『番手当って出ますか?』『俺たちは運命力が足りない』など。

※『anan』2023年2月15日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子

(by anan編集部)

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