驚くべきは、国民的バンドであるサザンオールスターズの活動を精力的に行う中で、ソロでも各年代で時代を彩るヒット曲を生み出し続けているということだ。ソロ名義初のシングル曲「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」(’87年)、コカ・コーラのCMソングとして夏冬を盛り上げた「波乗りジョニー」と「白い恋人達」(共に’01年)、山下智久と長澤まさみ主演の月9ドラマ『プロポーズ大作戦』エンディング曲「明日晴れるかな」(’07年)、永山瑛太主演のドラマ『最高の離婚』エンディング曲「Yin Yang(イヤン)」(’13年)――。桑田佳祐しか生み出せない黄金律の数々が至るところで流れ、多くの聴き手の心を震わせ、多くのミュージシャンに影響を与えてきた。その珠玉のメロディと情感たっぷりの歌、巧みな言葉回しと情景描写は、当時の景色を鮮烈に蘇らせる。
最新曲として収められている楽曲群もまた強い輝きを放っていることを特筆したい。本作のために書き下ろされた新曲であり、自身も出演するユニクロCMソング「なぎさホテル」がDISC2の最後に収録されている。神奈川県逗子市の海辺に実在した「なぎさホテル」から着想を得た楽曲で、桑田の故郷である湘南の薫りが匂い立つようなドリーミーなミドルバラード。時代は移ろうが、その中でも変わらず大事なものを浮き彫りにする―本作、ひいては桑田佳祐のクリエイティブを象徴するような楽曲に聴こえてくる。
11/23リリースのベストアルバム『いつも何処かで』。新曲の「なぎさホテル」他、全35曲収録。【完全生産限定盤(2CD+Special T‐Shirt)】¥7,150 【通常盤(2CD)】¥3,740(タイシタ/ビクターエンタテインメント)
くわた・けいすけ 1978年にサザンオールスターズのボーカルとしてメジャーデビュー。’87年、ソロ活動開始。多くのヒット曲を生み出す。2022年ソロ活動35年を迎え、5大ドームを含む全国ツアー中。
※『anan』2022年11月30日号より。文・小松香里
(by anan編集部)