恋のヒントを得る本
1、蟹ブックス店主・花田菜々子さんselect:『生き抜くための恋愛相談』(桃山商事/イースト・プレス)
ダメ男に惹かれてしまう、好きな人すら見つからないといったモヤモヤを、恋愛相談のプロ「桃山商事」が徹底的に分析。仮説を立て、図解を交えて、進むべき方向を丁寧に示す。1540円。
「恋愛相談がグチで終わってしまう人は特に読んでほしい。彼らが悩みの本質をロジカルに解きほぐし、現在地と本人がどうしたいかを軸に、核心をつくアドバイスをくれます。自分に当てはまらない悩みでも、なるほど! とパズルが解けるように気持ちがいい」
2、書評家・三宅香帆さんselect:『もしもし、運命の人ですか。』(穂村 弘/角川文庫)
恋愛で直面する小さなあるあるを独自の目線でとらえ、ユーモラスに綴った人気歌人のエッセイ集。616円。
「ときめきが持続する方法を真剣に考察したり、高速道路の料金所の女性に運命を感じたり。あまりのロマンティストぶりに驚愕しつつ、繊細な筆致の妄想ワールドに吸い込まれます。すべての男性が穂村さんと同じではないはずですが、男性がどんなことにキュンときて、どんな恋愛を望んでいるか、ある適度理解できてスッキリ」
3、anan編集部select:『ラブスペル 恋を叶える魔法のフレーズ111』(浅田悠介/マガジンハウス)
恋愛コラムニストが最新の心理学に基づき、111の恋を叶えるフレーズを紹介。相手の心を奪う、プロポーズを引き寄せる、別れと復縁を望むなどのシーン別に、幸せに近づく話し方を解説する。1430円。
「語らぬ奥ゆかしさではなく、“幸せは自らつかみ取る”という前向きな言葉が満載。近況報告の『楽しんでるよ』は、日々を充実させる人間だと印象づかせるとともに、自分自身にも効く一言。伝えることの大切さを感じる一冊」
4、ブックカウンセラー・三浦天紗子さんselect:『オクテ女子のための恋愛基礎講座』(アルテイシア/幻冬舎文庫)
恋愛やセックス、フェミニズムについて発信を続ける著者が、「キラキラ女子」を目指さずにぴったりの人と結ばれるコツをアドバイスする。594円。
「いわゆる男ウケではなく、自分に合った相手選びやどんな幸せを目指すかといった、人生のかじ取りに重きを置いているのがキモ。自分を変える必要はない、むしろ自分本位こそ恋愛成就の秘訣と説きます。著者の軽快で愛ある指摘が世にはびこるあまたの呪いの言葉から解き放ってくれるでしょう」
5、花田菜々子さんselect:『わたしたちは無痛恋愛がしたい~鍵垢女子と星屑男子とフェミおじさん~』(瀧波ユカリ/講談社)
顔のいいクズ男に雑に扱われ、「女」の役割を押し付けられる。そんな毎日に辟易とするみなみの前に、親切な年上男性が現れて…。フェミニズムをテーマに描く女性たちのサバイブストーリー。2巻まで発売中。715円。
「男尊女卑や性被害に対する自衛の意識から恋愛を遠ざける人も少なくない気がします。異性との関わりで思わされがちな『私(女)が悪いの…?』という疑問や自責を、この作品はキッパリ否定。前を向く力を授けてくれます」
6、花田菜々子さんselect:『そんなことよりキスだった』(佐藤文香/左右社)
前向きで目立ちたがりの佐藤さんは恋しかしてこなかった。押してダメなら別の人。当たって砕け、いくつもの恋が巡る――。短詩界で活躍中の著者が綴る自伝的恋愛掌編小説。1925円。
「美しいだけが恋愛じゃない。面白くて、ちょっとゲスくて、さっぱりしているのもいい。俳人でもある佐藤さんの超積極的な恋愛姿勢は、ゲラゲラ笑いながら読めて、ちょっぴり切ない。飾らず卑屈にもならず、欲望に正直な生き方に学べる点も多いのでは」
7、三宅香帆さんselect:『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(二村ヒトシ/文庫ぎんが堂〈イースト・プレス〉)
AV監督でもある著者が、自分ではコントロールできない生きづらさや劣等感を「心の穴」と定義。“心の穴”と“自己受容”をキーワードに、苦しい恋愛に陥ってしまう原因に迫り、抜け出す方法を探る。734円。
「親に開けられた心の穴が恋愛に影響しているという持論が新鮮。自分にどんな穴があり、なにを求めているか。そして相手にも穴があると認識することが大切と。恋に悩んだ時、少し広い視野で自分や相手を見つめ直せそう」
8、芸人・ヒコロヒーさんselect:『恋愛とは何か 初めて人を愛する日のために』(遠藤周作/角川文庫)
豊かな恋愛経験と古今東西の文学に精通する著者が、男女間の心の機微やエロスについて、わかりやすく説いたロングセラー。660円。
「さまざまな文学や哲学などを引用して『恋愛とは』を説明してくれます。基本的には初心者向けですが、恋愛を重ねてきた人にとっても凝り固まった考えがやわらぐ点で有効です。度が過ぎるほど論理的ゆえにおかしみを感じる部分が多々あり、自分でかみ砕いて理解していくことが楽しい本でも」
9、花田菜々子さんselect:『誰になんと言われようと、これが私の恋愛です』(劇団雌猫/双葉社)
初彼は仮想都市で出会った「犬夜叉」だった、恋愛ゲームに熱狂して離婚したなど、オタクを自認する15人のエッセイを実録。オタク女子4人組「劇団雌猫」による、推し活や恋にまつわるお悩み相談なども掲載する。1320円。
「二次元の相手を本気で追いかけ、ドルオタ同士で結婚して互いが推し活に熱を入れる。そんな彼女たちの真摯な語りに胸打たれ、恋愛の形は多様であると改めて気づかされます。推しと恋愛のハザマで悩む人も必読!」
10、三浦天紗子さんselect:『大丈夫、君は可愛いから。君は絶対、幸せになれるから。』(yuzuka/KADOKAWA)
恋愛や心の悩みに寄り添うTwitterで女性たちに支持される著者。実体験から得た、恋愛や人生を好転させる「不機嫌」の対処法、幸せをつかむ術を伝授する。1375円。
「女性にありがちな思考のクセ、悩みやコンプレックスの扱い方を、“頼れるお姉さん”的な著者が諭してくれるので、『こうすればよかったのか』と腑に落ちるはず。恋に行き詰まっている時、自信をなくしている時、自分を癒して立て直す方法も教えてくれます」
蟹ブックス店主・花田菜々子さん 書店員を経て、東京・高円寺に『蟹ブックス』を開店。著書に『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(河出文庫)がある。
書評家・三宅香帆さん 京都大学大学院在学中に書評家としてデビュー。著書に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』(サンクチュアリ出版)、『それを読むたび思い出す』(青土社)など。
ブックカウンセラー・三浦天紗子さん 弊誌ほか、『CREA』『小説宝石』などで書評や著者インタビューを手がける。著書に『震災離婚』(イースト・プレス)、『そろそろ産まなきゃ』(CCCメディアハウス)などがある。
芸人・ヒコロヒーさん 独特の世界観が特徴の切れ味鋭いコントで人気に。雑誌やWebでコラムを連載し、エッセイ集『きれはし』(Pヴァイン)を出版するなど文才にも注目。好きな作家は開高健。
※『anan』2022年11月2日号より。写真・中島慶子 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)