上白石萌音、めくるめく印象派の世界へダイブ。
真っ暗闇のホールに、ぼんやりと浮かび上がる19世紀のフランスのル・アーブル港の映像。クロード・モネの「印象・日の出」に描かれた風景をCGで再現し、見渡す限りのパノラマで映し出した序章は、写真から絵画へ少しずつ姿を変えていく…。
上白石萌音さんが今回訪れたのは、「イマーシブ ミュージアム」。最新の映像技術により、モネをはじめ、ピサロ、ドガ、カサットなど印象派の名画が動き出し、画家たちが見た世界へと没入体験できる新感覚のスポットだ。時空を超えた35分ほどのアートトリップを体感した上白石さんは、「長年の夢が叶ったようなひとときでした」と興奮した様子。
「印象派が大好きで、いつも絵の風景の中へ入ることができたらなと思いながら鑑賞していたんです。だから、モネのジヴェルニーの庭の池に浮かんだり、ドガの踊り子たちに交ざってみたり…名画の世界へ飛び込んでいくような感覚が味わえて本当に嬉しいです。そして、モネの『積みわら』の連作も、積みわらに焦点を当てながら次々と絵が変わったり、『ルーアン大聖堂』の時間や季節の移ろいによる変化を連続的に見られるのも、デジタルらしいエンタメ性のある演出ですごく面白かったですね。もし、これをモネが見ることができたなら、きっと喜ぶ気がします」
そう語る上白石さんにとって、自身の名前の由来にもなっているというモネは、少し特別な存在。
「やっぱりシンパシーを感じますね(笑)。でも、何より、自分が描きたいものに対して、納得いくまで懲りずに、傲慢にならずに、ストイックに向き合い続けた生き方は、表現者として尊敬します」
そんなモネの企画展では、7年ほど前に東京都美術館で見た、「モネ展」の感動が今でも忘れられないそうだ。
「『睡蓮』など有名な絵画がたくさんあったのですが、その時、最も心を揺さぶられたのは晩年の作品。白内障で視力が低下してから描かれた絵は、よく知る淡く優しい雰囲気ではなく、赤や黒、緑など鮮やかな色で筆致も荒々しく、怒りや悲しみがぶつけられている気がして。圧倒されて、初めて絵を見て泣いてしまったんです」
最先端技術を駆使したデジタル作品も、作家たちの人間性や生き様が滲み出る絵画も、心静かにアートを感じるひとときは、上白石さんにとってチャージ&デトックスとなる大切な時間に。
「テクノロジーが進化する中で、人間にしかできないことはますます貴重になっていると思うんです。まさに役者は人間くさい仕事で、アウトプットし続けていると、インプットも必要で。美術館を訪れることは私にとって栄養を吸収する何よりの時間になっています。と同時に、一人で絵の前に立ち、想像力を広げていると、なんとなく溜めていたマイナスの感情や塵みたいなものが、すっと洗い流されていくような気がするんです」
クロード・モネが描いた「印象・日の出」の世界の中に溶け込むように佇む上白石さん。「写真から絵画へ変わる瞬間がとてもドラマティックで、夢のようでした」
クッションにちょこんと腰掛けて、印象派の色彩のシャワーを浴びる上白石さん。「リラックスしながら、自由なスタイルで印象派を楽しむのもなんだか新鮮ですね」
ギュスターヴ・カイユボットの代表作「ボート漕ぎ」。絵画から目を逸らすと、ボートを漕ぐ男性がストレッチをし始め、上白石さんも「あ!」とびっくり。
イマーシブ ミュージアム 数十台のプロジェクターを制御する最新の映像技術により、印象派の絵画に没入体験する空間。モネやルノワール、ピサロ、ドガなどの名画に時間を与え、鑑賞者との距離や大きさを変え、編集や音楽を加えることで、画家の視点に立って作品の世界に入り込むことができる。企画展にちなんだスイーツなどが楽しめるカフェコーナーも併設。10月29日までの開催なので、急いでチェックを。日本橋三井ホール 東京都中央区日本橋室町2‐2‐1 COREDO室町1~4F 10:00~21:00(土・日・祝日9:00~)※10/29は8:00~22:00、入場は閉場の40分前まで https://immersive-museum.jp
かみしらいし・もね 1998年1月27日生まれ、鹿児島県出身。11月4日より放送のドラマ『記憶捜査3』(テレビ東京系)に遠山咲役で出演。歌手活動も精力的に行い、来年1月25日(水)には自身初の日本武道館でのライブも決定。
ドレス¥23,100(journal standard luxe/ジャーナル スタンダード ラックス 表参道店 TEL:03・6418・0900) リング¥11,000(MAM/ビームス ウィメン 原宿 TEL:03・5413・6415) イヤーカフ¥19,800(Lemme. www.lemme.tokyo) タイツ、シューズはスタイリスト私物
※『anan』2022年10月26日号より。写真・永禮 賢 スタイリスト・伊藤信子 ヘア&メイク・高村三花子 構成、文・野尻和代
(by anan編集部)