世界中を惹きつける「不思議の国」の秘密を探しに。
一番の見どころは、作者のルイス・キャロルとともに不思議の国を創り上げた挿絵画家、ジョン・テニエルの原画をじっくり鑑賞できること。オリジナルが醸すユニークな作品世界に触れる贅沢を味わって。日本展のもととなったロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館の展示で、舞台デザイナーのトム・パイパーが手がけた「狂ったお茶会」やチェシャー猫が登場するインスタレーションも、物語のシーンに没入できる体験型展示として評判だ。
サルバドール・ダリ、英国ポップアートのゴッドファーザーことピーター・ブレイク、草間彌生らが描く作品には、原作が書かれたヴィクトリア朝時代とは異なる現代的なアリス像が垣間見えそう。彼らの想像力をかきたてたのは物語に潜む影の部分や作者の無意識が形作るイメージ。大人目線で見るアリスの世界にはきっと新しい発見がありそうだ。
舞台デザイナーが手がける体験型展示も。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で展示。「狂ったお茶会」のインスタレーションは舞台デザイナー、トム・パイパーが手がけた。
Alice Curiouser and Curiouser, May 2021, Victoria and Albert MuseumInstallation Image, Tea Party created by Victoria and Albert Museum,Alan Farlie, Tom Piper, Luke Halls Studio ©Victoria and Albert Museum, London
ファッション写真家が描く不思議の国。
写真家ティム・ウォーカーは黒人の俳優や活動家をモデルとして起用しアリスの世界を表現した。
アリス、『不思議の国のアリス』をテーマにした2018年のカレンダー、ティム・ウォーカー撮影、ピレリ社制作 ©Tim Walker Studio Courtesy of Pirelli&C.S.p
挿絵画家テニエルの原画であの名場面を。
ケーキを食べたアリスの体は望遠鏡のように伸びてしまい、文中には「さようなら私の足!」というセリフが。
首が伸びたアリス、『不思議の国のアリス』より、ジョン・テニエル画、ダルジール兄弟彫版、1867年版、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
マッド・ハッター、三月うさぎ、やまねら独特なキャラクターが登場。
マッド・ハッターのお茶会でのアリス、『不思議の国のアリス』初刊行版本より、ジョン・テニエル画、1866年、V&A内ナショナル・アート図書館所蔵 ©Victoria and Albert Museum, London
Who’s Lewis Carroll?
ルイス・キャロル 1832年生まれ。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジソン。知人の子どもに即興で語った物語をもとに『不思議の国のアリス』を執筆。数学者でもあり、生涯をオックスフォード大学の学寮で暮らした。1898年没。
チャールズ・ラトウィッジ・ドジソン、ドジソン家のアルバムより、19世紀 ©Victoria and Albert Museum, London
特別展アリス‐へんてこりん、へんてこりんな世界‐ 森アーツセンターギャラリー 東京都港区六本木6‐10‐1 六本木ヒルズ森タワー52F 開催中~10月10日(月)10時~20時(月~水曜は18時まで。ただし9/19、10/10は20時まで。入館は閉館の30分前まで) 会期中無休 一般2100円(平日)ほか TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)
※『anan』2022年8月3日号より。文・松本あかね
(by anan編集部)