話題沸騰中の美術漫画のストーリーを追体験できる展覧会。
『ブルーピリオド』とは、山口つばさによる漫画で『月刊アフタヌーン』(講談社)にて連載中。2020年にはマンガ大賞を受賞し、翌’21年にはTBS系列にてTVアニメ化。今年3月末からは舞台化もされた注目作だ。成績優秀かつスクールカースト上位の毎日を送りつつ、どこか空虚な焦燥感を感じて生きていた高校生・矢口八虎(やとら)は、ある日一枚の絵に心奪われる。その衝撃に八虎は駆り立てられ、美しくも厳しい芸術の世界へと邁進してゆく。美術のノウハウや美大受験の実情など、美術に情熱を燃やす八虎と仲間たちが繰り広げる青春群像劇だ。
本展では、キーとなる作中絵画の展示から没入型シアターといったストーリーを追体験できる展示、初心者でもアートを身近に感じられる名画解説など、様々なコンテンツがラインナップ。例えば〈青の渋谷シアター〉は八虎が美術の魅力に気づくきっかけとなった早朝の渋谷を追体験できる没入型シアター。〈キャラ大石膏室〉ではダヴィデやモリエールなど著名な像に扮した登場人物が設置され、来場者はここで自由にデッサンできる(平日限定)。また、キャラクターと共に美術作品を鑑賞しながら自分なりの名画の楽しみ方を発見できる〈名画の見かた〉や、作者・山口つばさの卒業制作の漫画作品、インタビュー動画が公開される〈山口つばさの部屋〉も必見だ。
アートとは一体何か? そんな普遍的な問いに真正面から向き合った本展は、美術好きでなくても面白さと発見に溢れた内容になりそうだ。
ある出合いにより美術に目覚める八虎。
©山口つばさ/講談社/ブルーピリオド展製作委員会
美術部の森先輩が描いた天使の絵。美術室で偶然この作品を見た八虎は衝撃を受け、それをきっかけに美術を志すようになる。漫画(第1巻)の中でもキーとなる作品。森先輩の作品テーマ“祈り”が感じられるはずだ。
受験を通じて、より深く自分と向き合う。
©山口つばさ/講談社/ブルーピリオド展製作委員会
八虎が描いた“縁”をテーマにした絵(第3巻)。F100号(高さ162cm以上)に初めて挑戦し、自分の絵に呑み込まれそうに感じる。溶鉱炉をイメージした本作は、美術に対する想いが八虎の中で煮えたぎる様子を暗示。
苦楽を共にした仲間とともに、挑む実技試験。
©山口つばさ/講談社/ブルーピリオド展製作委員会
上:八虎の一次試験の絵(第4巻)。課題は「自画像」。手鏡が割れてしまうアクシデントを逆手にとって描き上げた。下:八虎の二次試験の絵(第6巻)。「ヌード」が課題の本作は体調が悪い中、努力と戦略で完成させた。
ブルーピリオド展~アートって、才能か?~
寺田倉庫G1ビル 東京都品川区東品川2‐6‐4 前期:開催中~8月5日(金) 後期:8月6日(土)~9月27日(火)10時~20時(入場は閉館の30分前まで) 一般2000円ほか(オンラインのみで販売)https://blueperiod-ten.jp/ TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)©山口つばさ/講談社/ブルーピリオド展製作委員会
※『anan』2022年6月29日号より。文・山田貴美子
(by anan編集部)