又吉直樹:僕が椅子好きだと知ってくださっていたんだと思います。プロデューサーから「椅子をテーマに何かしませんか?」と声をかけてもらったのが、この作品を作るきっかけでした。その時、ちょっと不思議な話だったり、意味わからんぐらいのものでもいいって言われて。僕は意味わからんものって好きだけど、でも一般的にはそうでもなかったりするので、意味わからん部分はあっても、みんなが好きな話ってどうしたら作れるのかな? と考えるところからもう、やりがいを感じました。
モトーラ世理奈:私は、最初に他のキャストの名前を聞いた時、私がそこにいていいのかな、って思いました(笑)。
又吉:モトーラさんは、佇まいからもう物語性を感じます。そこにいるだけで興味を惹きつけられるし、モトーラさんを主役にして物語を書きたがる人は多いんじゃないかな。
モトーラ:(照れ笑いしながら)でも、お芝居は楽しいです。「海へ」は、同世代の女性キャスト3人と、即興芝居での撮影も行われて。監督に相談する前に「やってみよう」って言われたので、どうなるんだろう…ってすごく不安になったんですが、過去に共演経験のあった堀田(真由)さんと、話してみたら小学校が近かった河合(優実)さんとはすぐに波長が合ったし、そこに石井(杏奈)さんが加わったことで、その場の色がまた変わって。どんどん面白くなっていきました。
又吉:即興って難しいと思っていたんですが、完成作を見たら僕のイメージ通りだったので嬉しかったです。
――登場する椅子は“スツール60”や“ルイ・ゴースト”“A‐チェア”など名品揃いで、すべて、又吉さんが選出。「海へ」に登場した“ラシェーズ”は、撮影当時、日本に1脚しかなかったものを借りたという。
又吉:僕にとって椅子は、家具の中でも一番気になるかもしれないです。それぞれデザインが全然違うとか、もはや誰も座らない椅子があったりするのも面白い。大工の知り合いから、椅子だけはその職人さんじゃないと作れないと聞き、そのぐらい作るのが難しく、人間の体との関係性が深いものなんやな、というのも魅力の一つかもしれないですね。椅子を先に決めてから物語を考えたのですが、あえて僕が持っていない椅子を選んだのは、刺激を受けたかったから。椅子にももちろん興味を持っていただきたいですが、モトーラさんはじめ、役者さんたちが物語を彩ってくださっているところにも注目してほしいです。
モトーラ:私が演じた等身大の2人の女の子に、同世代の方は共感できる部分もあるはず。美しい映像や世界観にも魅了されてほしいですね。
『WOWOWオリジナルドラマ 椅子』 吉岡里帆、モトーラ世理奈、石橋菜津美、黒木華の豪華な役者陣が、ユニークで不思議な“又吉ワールド”に初参加。WOWOWにて、毎週金曜23:30より、放送・配信中(全8話)。
またよし・なおき 1980年6月2日生まれ、大阪府出身。お笑いコンビ、ピースとして活動する一方、小説家としても活躍し、第153回芥川龍之介賞受賞の経歴を持つ。物語を手がけた『椅子』では、第5話に、自ら出演している。
もとーら・せりな 1998年10月9日生まれ、東京都出身。ファッション誌『装苑』の専属モデルを務め、パリコレへの出演経験を持つなど、トップモデルとして活躍。8月公開予定の映画『異動辞令は音楽隊!』に出演。
ニット¥123,200 パンツ¥514,800(共にイザベル マラン TEL:03・5772・0412) リング¥13,200(アトリエ エスティーキャット st-cat.com) その他はスタイリスト私物
※『anan』2022年6月8日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・中井彩乃(モトーラさん) ヘア&メイク・芳野史絵(又吉さん) 斎藤紅葉(eek/モトーラさん) 取材、文・若山あや
(by anan編集部)