資産性の高いマンションは、独身女性の生活の支えに。
住宅購入の相談窓口でアドバイザーをする近野秀亮さんによると、昨年あたりから、30代前半から40代くらいのシングル女性の相談が増えてきたという。きっかけとして考えられるのは、新型コロナウイルスの影響。
「自宅にいる時間が長くなったことで、部屋のクオリティを上げたいという声が多く聞かれるように。でも今より好条件の部屋を賃貸で探すと、家賃が上がってしまう。それなら、ということで購入を検討し始めているのだと思います」
とはいえ、「お金がない」「結婚するかもしれないし」と尻込みする人は多いはず。そんな女性たちのために不動産購入のサイトを運営する杉山智子さんは、「独身女性にとってマンション購入はリスクばかりでもないです」と言う。
「平均的な年収でも購入できる物件はありますし、資産性が高ければ、将来貸したり売ったりして利益を生み出す可能性が。結果的に購入した不動産が独身女性の支えになることもあります」
マンション購入を考えるアン子が素朴な疑問をおふたりにぶつけます。一緒に勉強しましょう!
アン子(独身・34歳) 会社員・年収400万円。都内の賃貸マンションで一人暮らし中。ほぼ在宅ワークになり、広めの部屋に引っ越したいが予算が合わずモヤモヤ。そんななか、今の家賃とほぼ同額の支払いで買える、今より広いマンションのチラシを発見。「購入」の選択肢が急浮上するがリスクも気になって…。
マンション購入相談:基本のキ
マンションを買う意義や具体的な動き方を知って、まずは不動産購入に対する「怖さ」を整理しよう。
独身でマンション購入、大丈夫なんでしょうか?
アン子:最近マンション購入もアリかなって思い始めたんですけど、大きな買い物だから、怖いというのが本音で。
杉山:その気持ち、わかります。でも家賃を払い続けるのもモヤモヤしますよね。
アン子:そこなんです! 今の家賃が8万円で25平方メートル、設備もショボいのに、年間96万円もの出費が…(涙)。
杉山:家賃を住宅ローンに置き換えれば、同じくらいの支払い額で高スペックのマンションに住むことができます。しかも今は空前の低金利。きちんと資金計画を立てればリスクは小さくできますよ。
アン子:でも、ライフプランが決まっていない独身が買って大丈夫なんですか?
杉山:買うなら、バリバリ働ける独身の時をおすすめしたいです。物件をうまく選べば自分だけの資産になります。この先、結婚した場合、買う不動産はたいてい夫名義か夫婦共有名義。離婚したら財産分与でもめることが多いです(笑)。
アン子:自分だけの資産…、いい響き。でもメリットばかりじゃないですよね。
杉山:毎月の返済の他に、固定資産税や管理費・修繕積立金がかかる、賃貸より気軽に引っ越しできないなどがデメリットです。それも理解して検討していく必要はありますね。
購入を検討する時どこに相談すればいい?
アン子:不動産のこと、何もわからないから、誰かに相談したいんですけど…。
杉山:不動産購入セミナーを活用するのも手ですよ。新築、リノベも扱う中古と専門が分かれているので、購入イメージを掴むためにいろいろ行ってみては。中古を買うと決めているなら中古専門の不動産仲介会社、新築なら希望エリアで物件を探してモデルルームを訪問しましょう。丁寧に説明してくれるはずです。ただ、しつこくセールスされるケースもあるので、雰囲気に流されないように気を付けて。
アン子:わかりました! うっかり「買います」と言わないようにします。
購入までの大まかな流れを知りたいです!
アン子:いざ買うと決めたら、購入までどんな感じで進んでいくのですか?
杉山:まず物件予算、住宅ローンの借入額と返済額を検討する資金計画を立てます。続いて、決めた予算をもとに物件を探し、気に入った物件が見つかったら購入申し込みをして、ローンの事前審査を申し込みます。事前審査が通ったら、売買契約、ローンの本申し込みを行い、確定したら金融機関と融資契約をして売買代金を決済。物件の引き渡しとなります。
アン子:なんか大変そう…。あれ、ローンの審査が2段階もある。契約した後、ローンの本審査に落ちるなんてことも?
杉山:あります。そのため、ローンが組めなかった場合は違約金なしで売買契約が白紙になる「ローン特約」が付いているか必ず確認することが大切です。
結婚や出産、転勤などで状況が変わったら?
アン子:物件を買ってから結婚や転勤が決まったら、身動き取れなくなりそうで。
杉山:そう考えて購入を敬遠する人も多いです。でも状況が変わったら、借入先の金融機関に相談して賃貸に出すか売却することも可能です。
アン子:いざとなったら貸したり売ったりできるんですね。
杉山:そのためには貸しやすく売りやすい物件を選ぶことがポイント。ただ、最初から賃貸する可能性を示すと、投資用の購入を疑われてローン審査が通りにくくなります。低金利の住宅ローンはあくまで自分が住むことが前提ですから、「結婚や転勤の予定は今のところありません」と借入先に伝えておきましょう。
近野秀亮さん 資金計画から物件選び、不動産会社や施工会社の選定まで、住み替えを総合的にサポートする「LIFULL HOME’S 住まいの窓口」専属アドバイザー。「何から始めていいかわからない」初心者にも親身に対応してくれる。
杉山智子さん マンション購入応援メディア「WOMAN ESTATE」編集長。不動産投資をメインにした「祥エステートオフィス」代表取締役。著書に自身の経験をもとにした『女性が「不動産」を買うときに読む本』(幻冬舎)がある。
※『anan』2022年4月27日号より。イラスト・別府麻衣 取材、文・熊坂麻美
(by anan編集部)