
左から、千葉涼平さん、橘慶太さん
2020年、メンバーの脱退を経て、新体制となってからも止まることなく歩み続ける二人。昨年7月にスタートした初期楽曲だけで構成したツアーは追加公演を重ね、気付けば当初の3倍以上もの公演数に。体に染み付いたパフォーマンスを新たな形へ生まれ変わらせる作業は、想像以上のエネルギーが必要だったはず。そこで得た自信と確信は、次に進む道へとつながった。
――「w-inds. LIVE TOUR 2024“Nostalgia”」ではお二人で初披露した曲もありましたが、昔の曲を進化させる感覚なのか、それとも別物という感覚だったのでしょうか?
橘慶太(以下、橘):全く別物という感覚かもしれないですね。二人でパフォーマンスするために、ダンスの構成や歌い分けを考えて作っているので。
千葉涼平(以下、千葉):むしろ、僕は新曲をやってるくらいの感覚で(笑)。過去に歌っていない部分を歌っているし、当時のダンスがクセとして残っていたりするんです。体が覚えていればいるほど新たな形にするのは大変ですが、ライブを通じて楽曲が成長していく感覚や自分の感じ方が変わる実感もあって。いい変化ができたかなと思っています。
――ファンの方々からは、千葉さんの声が10代の頃の橘さんの声に似ている、橘さんのラップに元メンバーの緒方龍一さんが宿っているように感じた、という声も上がっていたようです。
橘:「意識している」と言ったほうが美しい話だけど(笑)、本当に自分のやりたいようにやっているだけなんですよね。でも、実際よく言われるんですよ。ずっと一緒に過ごしてきた年月が、そうさせているんだろうなと思います。
千葉:そうだね。わざとらしくなくそれが出ているのは、すごくいいことだなって思います。
橘:ある意味、すごく神秘的。
――たしかに。家族が似てくる感覚と、少し近いんですかね。お二人の間には家族のような、昔からの同級生が気兼ねなく話しているような心地よさが漂っていて。
橘:二人でいるときは、なにも考えてないかもしれないな。でも、涼平くんは、めちゃくちゃ気を遣う人だから…もしかして、たまに気を遣うこともある?
千葉:全く遣わなくはないけど。
橘:え! 寂しいな、それは。
千葉:(笑)。誰に対してもあるじゃない? 慶太も気を遣ってくれてるときは、あると思うよ。
橘:たしかに、家族でもそんな感じだもんね。家族レベルの関係性ってことなのかも。
――その空気感が、ライブ中のMCにも出ているんでしょうね。
橘:そうかもしれないですね。
千葉:MCに関しては、ファンの皆さんに笑ってほしくて、頑張りすぎちゃうときがあるけど(笑)。
橘:事務所内では「w-inds.のMCが面白いから勉強のために見に行ってこい」と言われるらしくて。そんなことあります?(笑)
――(笑)。このツアーを通じて、w-inds.の今のスタイルが確立された感覚はありましたか?
橘:昔の楽曲に対する懐かしさと同時に、二人でやる新しさみたいなものもあって。かつ、24年前のサウンドが一周回って新しく感じる部分もあったので、思い出とともに昔の曲が美しくブラッシュアップされたツアーになった手応えがありました。
千葉:しばらく僕たちのライブに来られていなかった方も、多く足を運んでくださったんですよ。みんなが知っている過去の楽曲を、今のw-inds.のスタイルとして改めてお見せできたことで、ファンの方々にとっても、自分的にも、一区切りついた感覚がありましたね。そのタイミングで、ニューアルバムの「winderlust」というタイトル案を慶太から聞いたときは、すごく今の僕らに合ってるなと思いました。
自分たちを応援してくれる人たちを一番大切に。
――アルバムタイトルの意味は?
橘:旅や冒険に対する渇望を意味するwanderlustという単語と、w-inds.を合わせた造語で。実は、最初はテーマがなくて、作品を作っていく過程で生まれた言葉なんです。歌詞を書いたり、曲を作ったりするのって、自分の今の考えや思いが知れる作業だと思っているんですけど、自然と前向きな歌が多くなっていて。「自分は今、こんなにも前向きなんだ」と気付いたんです。それで「Nostalgia」ツアーを経て、前に歩き出そうとしている自分たちをテーマにしたいとタイトルにもその思いを込めました。
――お二人の間で楽曲を共有するのはどのタイミングなのですか?
千葉:慶太が曲を作ったらすぐ送ってくれるよね? 歌詞がない状態でもこんな曲どう? って。
橘:今のところ、NGが出たことはないです(笑)。なんなら、僕が自分でNGにした曲を「あの曲やりたい」って言ってくれたり。
千葉:だって、めっちゃいい曲をボツにしようとするから、もったいないと思って(笑)。僕の場合は、単純に楽曲としていいなという聴き方なんですけど、「今、やりたいかも」みたいなタイミングは、結構あるかもしれないです。
橘:逆に、寝かせてた曲が復活することもあるよね。事務所の皆さんとコラボした「Like a fam feat. 島袋寛子、谷内伸也(Lead)、KIMI(DA PUMP)」は僕が曲作りを始めて間もない頃に作ったトラックですが、改めて聴いたら今やりたいと感じて今回収録したんです。
――曲のアイデア自体は、どんなときに生まれるんですか?
橘:本当に様々ですけど、例えば「Zip It」は、この言い回しを使いたくて作った曲で(笑)。英語の勉強を詰めてやっていた時期に、先生から教わって、曲のタイトルにしたらカッコいいな、いつか作ろうと思っていたんです。
千葉:経験を糧にするのがすごいよね。“いつかやろう”とか“そのうち使えないかな”で終わらせず、ちゃんとやるっていうのが。
橘:頭から離れなくなるから、離すために作ったのかも(笑)。この曲ができたときは、w-inds.のエレガントなカッコよさが出せそうだな、リード曲にしたいなと思ったんです。でも、その後「Who’s the Liar」ができたとき、今までできなかった音像の作り方ができるようになった感覚があって。リード曲にしようかと考えたんですが「Who’s the Liar」は自分の理想ではあるけれど、w-inds.としては攻めすぎかなという気もして。結局「Zip It」にリード曲を戻したんです。でも、MVの打ち合わせ中、涼平くんが「意表をつくなら『Who’s the Liar』がいいんじゃないかな」って、ポロッと言ったんですよ。
千葉:ふと、ここ数年「Who’s the Liar」ぐらい攻めたことってやってないなと思って。今回やらなかったら、いつ攻めた作品が残せるんだろうと思ったんですよね。しかも、リード曲として映像に残せるって多くはないことだし、やるなら久々のアルバムを出す今だなと思ったんです。
橘:リード曲の迷いがずっと頭にあったので、そのときの僕は“水を得た魚”って表現が一番合っていたと思います。過去最大の「分かる!!」が出ました(笑)。
――20年以上の活動の中で、またここで攻めるという選択ができることはすごいことですよね。
橘:いやいや。でも、こなしたくないという思いが自分の中にずっとあって。どんな仕事も長くなると、ある程度の知識や能力がついてくるから、感情を入れなくてもできるようになっちゃうじゃないですか。それがすごく寂しくて。僕も昔ほど熱が入らなくても、パフォーマンスはできてしまう自分と葛藤していた時期があったんです。そのとき、足りないのは攻める姿勢とか、新しいチャレンジをすることだと感じて。それが、今も原動力になっているのかもしれないですね。自分の熱を冷ましたくない、みたいなことってない?
千葉:たしかに。でも…思い返すと、熱がない時期ってあまりないのかもしれない。w-inds.としてやりたいことができるようになってからは、ずっと熱が続いているというか。あと、やっぱり慶太が楽曲を作ってくれるようになって、より熱が入る瞬間っていうのは増えているんじゃないかな。
――今回のアルバムでも、その熱をより感じられるんでしょうね。
橘:10曲と曲数としては多くはないかもしれないけど、どの曲が表題曲になってもいいというくらいこだわって一曲一曲作ったので、楽しんでもらえたら嬉しいです。
千葉:同日に「Nostalgia」ツアーの映像作品もリリースされるので、新旧詰まった作品を届けられるのも嬉しいよね。
――長い活動期間の中で音楽業界の環境も変わってきていると思いますが、今の時代に、より多くの人にどう曲を届けていこうと考えていらっしゃいますか?
橘:最近は、自分たちを応援してくれている方たちを一番大切に、どうすれば楽しんでもらえるか、元気を出してもらえるかを徹底的に考えていきたいなと思っていて。
千葉:そうだね。僕らとファンの方の関係性って特殊なんですよ。すごく近いんだけど、大前提として皆さんの中に失礼のない距離感みたいなものがあって。そこが、すごくバランスがいいというか。
橘:ライブの演出家の方にも言われるんですよ。「w-inds.のライブは、空気感が特殊。ファンの人といい関係性の中で、活動をしてきたんだろうね」って。過去にはやりたいことを突き詰めて、外でカッコいい姿を見せたい時期もありました。その頃は、きっとファンの方々が頑張ってついてきてくれていたんだと思います。でも、今はファンの皆さんを含めた一つのチームとして頑張るほうが、自分たちの気持ちにも合っているなって。そこから、w-inds.の曲を聴くと楽しい、w-inds.のライブに行くと元気が出ると思ってくれる人が、少しずつ増えてくれたら幸せだなと思います。
PROFILE プロフィール

w-inds.
ウインズ 橘慶太(右)、千葉涼平(左)からなるダンスボーカルユニット。2001年に1st Single『Forever Memories』でデビュー。’20年5月にメンバーの緒方龍一が脱退し、同年12月、新生w-inds.としてDigital Single「Beautiful Now」をリリースし活動を再スタート。初期楽曲をメインとしたライブ「w-inds. LIVE TOUR 2024“Nostalgia”」が話題を呼び、度重なる追加公演のうえ今年1月には横浜にてファイナル公演を実施。
INFORMATION インフォメーション
16枚目のフルアルバム『winderlust』が発売中。橘慶太セルフプロデュースによる全10曲を収録。【初回盤(CD+Blu-ray)】¥4,840 【通常盤(CD)】¥2,750 Blu-ray/DVD『w-inds. LIVE TOUR 2024“Nostalgia”』も同じく発売中で、キャリア初期の楽曲のみで構成され大好評を博したツアーの大宮公演をパッケージ化。【Blu-ray通常盤/DVD通常盤】各¥7,700(ポニーキャニオン)
anan2440号(2025年3月26日発売)より