田中哲司:なんか当たり前のように3作目がきましたね。
大森南朋:2回目が終わったときの勢いで次が決まったようなものですね。
田中:「またこのメンツでさぁ…」って次あるのが当たり前みたいに話したけど、考えてみると、このメンツでやれるってすごく幸せでありがたいことだよね。
大森:稽古も本番もそれなりに大変…だけど、なんかほっとします。
田中:でも1回目は楽しいばっかりだったのが、2回目は赤堀くんの厳しさが出て、「あれ? ちょっと大変かも?」ってなった(笑)。
大森:そうですね。僕らから引き出そう引き出そうとしてくる。
田中:感情を爆発させる場面とか、稽古段階から本番並みに要求されるから。本当に惨めなところを晒け出させられるというか。少しでも閉じていると、こじ開けられるという。
大森:今回は楽しくできたらいいですね。
田中:赤堀くんの作品って一貫してだらしないダメな人ばかり出てくるんだけど、今回も輪をかけてダメ人間の集合体。
大森:これまでの2作より暴力的な感じですね。
田中:登場人物にかわいげがない。まだ先が読めないけど、相当テンションの高いぶつかり合いになりそうな気がする。大森くんの役の人物紹介の最後に「クズ」って書いてあって、それがちょっと面白かった。
大森:赤堀くんに普段そう思われているんじゃないかと心配になりました。今回少しダラシない役で、稽古終わって家に帰ってどんな顔していいのかわからないです(笑)。
田中:僕は赤堀くんの台本はやりやすいんだよね。セリフがスッと入ってくるし、しゃべりやすいし。
大森:僕は、このユニットでやってると、毎回キャッキャしちゃいます。とくに哲さんとの芝居はそう。
田中:たまに笑いをこらえるのに必死になる。
大森:仲のいい人との芝居は笑っちゃうんですよ。平静を装ってても、ふたりとも目の奥が笑ってたり。
田中:でも、それくらい信頼してるってことで。普段板の上に立つときは緊張感を保っているけれど、大森くんとだと何が起きても何とかしてくれるから大丈夫って安心感がある。
大森:それは僕もです。もちろんちゃんとやることはやるけれど、万が一何かミスしたとしても、どっちが何を間違えたのかわかんないくらいのニュアンスになりますし。
田中:そこへの恐れは一切ないね。逆にミスも、どう挽回するかのチャンスくらいに思えるというか。前回俺、名前間違えたよね?
大森:ありました! こともあろうに自分の名前を間違えるっていう…。笑いをこらえてスンとしてる哲さんを前に誰か笑うかなと思いきや、みんなスンとしてるもんだから、それを見てた僕が笑いそうになりました。
田中:今回の共演者もすごそうだね。
大森:(門脇)麦ちゃんとか、独特の雰囲気を持っていて、どこか底知れない感じがしてる。
田中:今も素晴らしいけれど、伸びしろがどこまでもありそうで。
大森:あめく(みちこ)さんはやっぱり手練だし。
田中:(荒川)良々とも共演は久々だから楽しみ。何より結局、赤堀くんの作品が好きなんだよ。観るのもやるのも。たぶん僕は、たまたま東京に出て今こうして役者をやってるけど、田舎にいたら完全にそっち側の人間だった気がする。だから惹かれるのかなって思う。
大森:赤堀くんの作品は、演劇ではあるんですけれど、表面的ではない人間のえぐった部分をちゃんと描いていると思うんです。じつは誰でも持っている狂気とか凶暴性とか、その先の絶望とか優しさとか、そういうものを生々しく見せつけるというか、見せてくれる気がします。
田中:今回の僕らの目標は、どれだけクズになれるかだね(笑)。
『ケダモノ』 4月21日(木)~5月8日(日)下北沢・本多劇場 作・演出/赤堀雅秋 出演/大森南朋、門脇麦、荒川良々、あめくみちこ、清水優、新井郁、赤堀雅秋、田中哲司 全席指定7800円ほか contact@pragmax.co.jp 札幌、大阪公演あり。https://www.comrade.jpn.com/kedamono/
たなか・てつし(一枚目写真左) 1966年2月18日生まれ、三重県出身。出演映画『とんび』が公開中。『シン・ウルトラマン』は5月13日公開予定。9月には舞台『住所まちがい ‐Three on the seesaw‐』への出演も控える。
おおもり・なお(一枚目写真右) 1972年2月19日生まれ、東京都出身。出演映画『グッバイ・クルエル・ワールド』は今秋公開予定。また現在放送中の連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK)にも出演。
※『anan』2022年4月20日号より。写真・小笠原真紀 ヘア&メイク・TAKAHASHI(stereogn/大森さん) 取材、文・望月リサ
(by anan編集部)