アジカン・後藤「どれだけ儲かるかより…」 新アルバムに込めたもの

エンタメ
2022.04.10
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの約3年半ぶり、結成25周年を迎えてリリースされた10枚目のアルバム『プラネットフォークス』にはとてもバリエーション豊かな粒揃いの楽曲が揃っている。

それぞれの良さを持ち寄って合体させるのがバンド。

Entame

「楽しく作れたのがよかったですね。自分のスタジオワークの経験も活きたし、買いためた機材も『やっぱりこれいるよね』っていうことが多くて大体使いました。前作はまだそれをうまくはめるための挑戦が多くあって音像の面で戦わなきゃいけないことがあったんだけど、パズルのピースを集めていく感じでひとつの絵になった感じがした。普通に録れば良い音になるっていうところまで自分の経験値やスキルが上がっていて安心して作業してました」(後藤正文/Vo&Gt)

作曲をボーカル&ギターの後藤さんとベースの山田さんとで共作した曲が多く収められている。なかでも「雨音」のエイティーズ感が新鮮だ。

「山ちゃんのデモの段階ではもっと展開が多かったんです。でもライブでやることを想像すると、みんな苦しむなって思ったから削っちゃいました。輪唱も含めて結構複雑なコーラスが乗っていて、『ここは山ちゃんがやりたいことなんだろうな』と思ってそこはそのままにした。なるべく山ちゃんが『ここがおいしい』って思ってるところは抜きたくないんですよね。それで、そこは本人が歌う方が面白いかなと思って歌ってもらいました」(後藤)

「バンドの中で転がっていく中で、当初のイメージよりは切ない方向性になっていきましたね」(山田貴洋/Ba&Vo)

「Be Alright」のリズム感やゴスペルチックなコーラスワークも新しい手触り。

「山ちゃんのデモが珍しくゆっくりで、しかも展開がFメロぐらいまであったんです。何ならYメロぐらいまであるぐらいで」(後藤)

「山田だけにYメロ(笑)」(喜多建介/Gt&Vo)

「そう(笑)。その上、トーンがそんなに変わっていかない感じが珍しかった。このテンポだったら言葉数が多くてラップに近い感じになるのかなと思って、スグル君(skill killsのGuru Connect)にプロデュースで入ってもらいました。潔は同じリズムパターンを叩き続けるというより変えていくところが良さだったりするので、スグル君がいるとこちらがやりたいことと潔の個性の橋渡しになるかもしれないと思ったんです」(後藤)

「最初にスグル君がループフレーズまで打ち込んでくれたんですけど、その音数が僕が叩くよりも遥かに多かったんです。いつもだったら増やすことが多いんですけど、減らす作業が新鮮だった。同じループフレーズじゃなくてちょっと変えているパターンもあって、多分僕のことをわかってくれていてそういうふうに作ってくれたんでしょうね。すごくいいセッションでした」(伊地知潔/Dr)

「コーラスのフックを山ちゃんに送ったら、すごく喜んでくれたことも印象に残ってます。『めっちゃいいじゃん』って」(後藤)

「ゴッチのアイデアの乗り方によって曲が化けることも多くて、乗っかり方がすごく上手になってきたと思います。今回の制作には今後の可能性をすごく感じました」(喜多)

「伸びしろですね(笑)。確かにプロデュースが上手になったところはあるかもしれない。『これちょっと変わった感じだな』とか、『こういうのやったことないよね』っていうものに惹かれます。この3人の『これがやりたい』っていう感じが出てるとそれを活かさない手はないって思うし、やりやすい。本来バンドって誰がすごいかをアピールする場じゃなくて、とにかくいい曲を上げていく場でもあると思うから、みんなが活躍すれば自ずといい曲になる。楽しくない人がいない方がいい。その考え方はやればやるほど強まります。山ちゃんは組み立てるのが上手だからそのアイデアにみんなで乗ってビルドアップしていくのが楽しいし、潔はドラム上手いし、建ちゃんはいいギターを鳴らす。そういうものを持ち寄って合体させるのがバンドだから」(後藤)

ROTH BART BARONの三船雅也さん、羊文学の塩塚モエカさん、chelmicoのRachelさん、ラッパーのOMSBさんといった多数のゲストの参加も彩りを与えている。

「人との関わりの中で曲を作る人が増えている時代の流れもあると思います。SNSによって昔より繋がりやすくなったし、その繋がりの中で共有していることが音楽作りにおいても大きい。若いミュージシャンとの繋がりもすごく助けになっていて単純に楽しいですね」(後藤)

ストリーミングの普及によりアルバム一枚を通して楽曲が聴かれることが減っている現状を踏まえ、こう話す。

「アルバムがひとつのアートフォームなんだっていうことを思い出して作った方が楽しいと思っています。どれだけ儲かるかより、『あんなアルバム作れるんだ』っていうものを見せられた方が夢がある。そういうことを更新し続けたいです」(後藤)

Entame

10thアルバム『プラネットフォークス』。【初回生産限定盤(CD+BD)】¥4,950 BDにはBillboart Live TOKYOで行われた25周年ツアーの映像を収録。【通常盤(CD)】¥3,300(Ki/oon Music/Sony Music Labels)

アジアン・カンフー・ジェネレーション 左から、伊地知潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gt)、山田貴洋(Ba&Vo)、喜多建介(Gt&Vo)。1996年結成。2003年、メジャーデビュー。‘21年、結成25周年を迎えた。

※『anan』2022年4月13日号より。写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・岡部みな子 ヘア&メイク・林 達朗 取材、文・小松香里

(by anan編集部)

PICK UPおすすめの記事

MOVIEムービー