なぜ必要に迫られているのか? 岸田政権の目玉政策「経済安保法案」とは

2022.4.2
意外と知らない社会的な問題について、ジャーナリストの堀潤さんが解説する「堀潤の社会のじかん」。今回のテーマは「経済安保法案(経済安全保障推進法案)」です。

サイバー攻撃にさらされる時代。安全確保は急務。

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岸田政権が目玉政策と掲げているのが「経済安全保障推進法案」。いわゆる、経済安保法案です。これは、先端技術や機密情報が盗まれる、インフラが攻撃されるというような行為から国を守るための法案です。

表向きは何の問題もない経済活動なのに、製品が流通するなかで、ハッキングされて高度な技術が盗まれるというようなことが起きています。

経済安全保障に関して、声高に謳われるようになったきっかけのひとつは、アメリカで起きたファーウェイ問題でしょう。ファーウェイ製品や中国が製造した半導体関連の装置に、アメリカの情報を盗み取り中国本土に送る仕組みが施されていると、アメリカはファーウェイを排斥し始めました。ほかにも、欧米では軍事、航空宇宙関連の製品を製造する過程で、中国の部品が使われていないか、サプライチェーンを総点検するという動きが出ています。

経済安保法案には4つの柱があります。(1)重要物資や原材料のサプライチェーンの強靭化。(2)14分野の基幹インフラの安全性・信頼性確保。(3)先端技術の育成や支援における官民協力。(4)高度な技術の特許出願の非公開化。技術やデータが盗まれないようにサプライチェーンを隅々まで見直し、基幹インフラがサイバー攻撃に遭わないようにする。また、研究者などが引き抜かれて技術が漏洩するのを防ぐ。企業の買収や合併が、軍事的に緊張関係にある資本によって行われないようにする。

これまで国は、民間企業同士の取引にはタッチできないところがあったのですが、国家の機密や発展につながる重要な技術を持つ企業には、事前審査できるよう、法案の可決を急いでいます。対象は電力、ガス、石油、水道、電気通信、放送、金融、郵便、クレジットカード、鉄道、貨物自動車運送、外航貨物、航空、空港の14の業種。

サイバー攻撃を受けやすい環境を作ってしまうと、たとえばデジタル制御されている戦闘機が、ハッキングによって自国に向けてミサイルを発射するということもできてしまうんですね。日本の産業を守るためにも、技術を守るためにも、適正な取引を維持するためにも必要に迫られている政策です。

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堀 潤 ジャーナリスト。市民ニュースサイト「8bitNews」代表。「GARDEN」CEO。Z世代と語る、報道・情報番組『堀潤モーニングFLAG』(TOKYO MX平日7:00~)が放送中。

※『anan』2022年4月6日号より。写真・小笠原真紀 イラスト・五月女ケイ子 文・黒瀬朋子

(by anan編集部)