木南晴夏「宝塚が憧れの原点」 自身2作目となる“ミュージカル”に挑む

2022.3.25
シャッターが切られるたびに表情を変えていく。時にクールに、時にカッコよく、時にツンと澄まして。かと思えば、ふっと表情を緩めると思い切り無邪気に見えたり、慈愛に満ちた母性を感じさせたり。ほんのわずか目線やポーズを変えるだけで、印象が大きく変わる。そう考えると、木南晴夏さんがどんな人なのかよくわかっていない気がする。宝塚時代の天海祐希さんに憧れ、コメディもこなせて、パンが大好きで…。あれ? ますます謎が深まってきた。

ミュージカルに憧れはあるけれど、やろうと思ったことはなかったんです。

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――まずは目前に控えるミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』について伺わせてください。もともとミュージカルスクールに通われていたそうですが、ミュージカルのイメージがなかったので…。

木南晴夏さん(以下、木南):今回が2作目です。ミュージカルは好きでしたが、レッスンしていたのは子供の頃。憧れはあっても自分からやろうと思ったことはなかったんです。初ミュージカルは福田雄一さん演出の『シティ・オブ・エンジェルズ』ですが、そのときは周りにも初ミュージカルの方が何人かいらしたので、私が入っても大丈夫かなと。実際、福田さんの演出で、明るいナンバーの多い作品で楽しかったし、宝塚が憧れの原点ですから、子供の頃の夢が叶ったという喜びもありました。そこから3…4年経つのかな。福田さん以外は、私にミュージカルを求めていないだろうと思っていたので、今回お話をいただけてすごく嬉しかったです。

――この作品は、双子に生まれながらも、正反対の環境で育ったふたりの数奇な運命を描いた物語。木南さんは双子の幼馴染み役ですが、稽古の手応えはいかがですか。

木南:1幕の最初は子供時代で、7歳の子供を演じていたりするので、明るく楽しい場面が多くて、みんなでギャーギャー言いながら汗だくで稽古していたんです。それが2幕の後半になって物語が急転直下。前日までは笑って楽しく稽古していたのに、ラストに向かうときには、みんなティッシュを手に鼻をすすりだす…みたいな。それだけ衝撃が大きいというか。

――ちなみにミュージカルというか舞台に立つことは、木南さんにとってはどんな心境なんでしょう。

木南:やっぱり映像作品を中心にやってきたので、舞台ってなると慣れていないし、まだまだすごい恐怖心というか緊張感がありますね。でも…やっぱり楽しさもあります。映像って、「今のシーン、これでよかったのかな?」って思っても撮り直せないですけど、舞台は同じシーンを毎日やるから、「今日は自分の中で納得いった」「今日はなんかちょっと歯車が狂った」って、日々研究しながら突き詰められるのがいいですね。

――ミュージカルに憧れながらも映像の世界に進まれたのには、何か理由があったんですか? 

木南:本当に入り口が違ったっていうだけだと思うんです。大阪にいたときは高校も演劇科がある学校でしたし、いつか舞台に立つことを目指していたし、そうなるんだろうと思ってもいました。でもその一方で、テレビドラマもすごく好きで、そっちに対する憧れもどんどん強くなっていって。そういうときに事務所のオーディションに挑戦したら受かって、たまたまテレビの方に進むことになったという感じでしたから。

――当時好きだったドラマって?

木南:大阪にいたときにめちゃくちゃハマっていたのは『池袋ウエストゲートパーク』ですね。当時、中学生か高校1年生くらいだったと思いますが、すごい衝撃を受けたのは覚えています。あんなにエグいというか、深いところまで掘ったドラマを初めて見たので衝撃的だったんですよね。

――キラキラした学園ものとかではないんですね。

木南:その当時は、学園ものってあんまりなかった気がして…あったかな。でももともとKinKi Kidsさんが好きだったのもあり、『若葉のころ』とか『銀狼怪奇ファイル』『人間・失格』のような、ちょっとダークな面のある作品を好んで見てたんですよね。

――では、ご自身がやるならば、そういうものがやりたい、と?

木南:見るのは好きでしたけど、自分がどういう作品をやりたいかっていう意思を持つまでにはすごく時間がかかったと思います。やりたいと思ってやれる立場にいなかったので、なんでもいいから役が欲しいっていう状態でしたね。

『20世紀少年』でもっとコメディをやりたくなって。

kinami

――状況が少し変わったなと思ったのはどのタイミングですか?

木南:やっぱり映画『20世紀少年』ですね。それまでは役ってオーディションが当たり前でしたが、この作品以降、向こうから声をかけていただけるようになりました。

――あの小泉響子役は、原作にそっくりと話題でしたよね。

木南:あのキャラクターがわりとコミカルな役で、それが評判よかったのもあって、もっとコメディ作品をやってみたいなと思ったんです。そういう話を原作の浦沢(直樹)先生にしたら、先生と福田雄一さんがパパ友で、福田さんが今度こういう作品を撮るんだって話をしたときに「木南ちゃんがコメディをやりたいって言ってたよ」と話してくださったそうで。福田さんも映画を観ていたので、それならと声をかけていただきました。

――それがドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』に繋がるんですね。ただ、『20世紀少年』の堤(幸彦)監督とも違う福田監督独特の“笑い”に戸惑いはなかった?

木南:はっきりとした違いはよくわかってないんですが(笑)、監督がムチャブリしてくるところはすごく似ています。堤さんも現場で台本にないことを、あれやってこれやってっておっしゃるので、それに対応していく力が必要で。福田さんも、どれだけ面白いことをやれるかっていうのを俳優に投げてくださる方ですし。

――無茶な要求ほど燃える、とか。

木南:燃えるというか…『勇者ヨシヒコ~』に関して言うと、周りの方々がみなさん面白かったので、私が足を引っ張ってはいけないと必死でした。『20世紀少年』のときも、私と平愛梨ちゃんだけがオーディションで選ばれた名もなき俳優で周りは錚々たるメンバーでしたから、とにかく迷惑をかけてはいけないという気持ちで、言われたら「はい!」ってとにかく対応するみたいな感じでしたし。

――では『勇者ヨシヒコ~』は…。

木南:難しい難しいってずっと言いながらやっていました。

――どこかのタイミングでわかる瞬間みたいなものが来たんですか。

木南:いまだにわかってないです(笑)。福田さんに限らずですが、何が面白くて何が面白くないのかは、リハをやって福田さんというか…監督やスタッフさんの笑い声が聞こえてきたら、これでいいんだっていうふうに判断しています。

――木南さんが出演された’14年の舞台『奇跡の人』を拝見していて…。木南さんのアニー・サリヴァンで初めて“先生”ではない“人間”アニーを見た気がしたんです。

木南:そうだとしたら、演出の森(新太郎)さんのおかげです。アニーがヘレンの家に来たのはまだ弱冠20歳、弱視で施設で育っていて…っていうコンプレックスを全然乗り越えられていない状態なんですよね。森さんも、ヘレン・ケラーが頑張る話…もちろんそういう側面もありますけれど、アニーの、完璧じゃなく欠陥だらけの人間だってところにスポットを当てて描こうとしてくださっていたと思います。だからこの作品は演じていて苦しかったですね。森さんの稽古場は刺激的ではありましたけれど、とても厳しかったです(笑)。

――役を演じるとき、どんなことを考えて演じられていますか?

木南:あまり考えずに演じているかもしれないです。いろんなパターンの演技を考えてこられる方とかいますけれど、私…何も思いつかないんです。もっと深く考えて役作りしていかないとダメかなとは思うんですけれど…。

ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、4月3日(日)まで東京国際フォーラム ホールCほか、愛知、久留米、大阪で上演。互いを兄弟と知らないまま友情を育んでいく双子を柿澤勇人さんとウエンツ瑛士さんが、ふたりの幼馴染みを木南さんが演じる。演出は吉田鋼太郎さん。ホリプロチケットセンター TEL:03・3490・4949

Entame

きなみ・はるか 1985年8月9日生まれ、大阪府出身。2001年に「第1回ホリプロNEW STAR AUDITION」でグランプリを獲得。’04年に俳優デビューし、’09年の映画『20世紀少年』で注目される。以降、ドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズなどドラマや映画で数々の作品に出演。近作にドラマ『おいハンサム!!』など。

中に着たショート丈トップス¥26,200 ニットキャミソール¥35,300 スカート¥30,800(以上タン contact@tanteam.jp) ブーツ¥68,200(ネブローニ/アッシュプラスエリオトロープ) https://hplusheliotrope.jp/ ネックレス¥231,000 中指のリング¥39,600 小指のリング¥37,400(以上アサミフジカワ info@asamifujikawa.com)

※『anan』2022年3月30日号より。写真・オノツトム スタイリスト・中井綾子(crepe) ヘア&メイク・井手真紗子 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)