筋肉も関節もガチガチ。カラダには何が起きている?
「絞った雑巾がカラカラに乾くとカチカチに固くなりますが、それと同様のことが筋肉にも起きています。使っていない筋肉には老廃物などが溜まり、新しい血液が行き渡らず硬くなります。すると凝りや痛みを感じるようになるのです。雑巾を濡らすと柔らかくなるように、血の巡りが良くなり十分な酸素と栄養素が運ばれれば、筋肉はみるみる柔らかくなります」
血流を良くして筋肉を柔らかくする、中里式“不調改善ストレッチ”とは?
では、酸素と栄養素をたっぷり含んだ血液を筋肉に届かせるには、どうしたらいいのか?
「マッサージなどで血流を良くすることもできますが、セルフケアで最良の状態にできるいちばん簡単な方法が、筋肉を動かしてほぐすダイナミックストレッチです」
中里式は、3ステップでガチガチの筋肉を柔らかくしていく。
「血液が滞った筋肉は、古い輪ゴムのようにすぐ千切れます。古い輪ゴムのまま伸ばそうとするから、筋肉はほぐれず、痛みを感じるのです。だからまずは、小さく動いて筋肉をゆるめる。次に大きく動いてほぐし、体幹の筋肉を使って動く習慣をつける。そして最後に、リズムよく動いて、血液循環を促し、各関節の連動性も高める。これで不調は劇的に改善されます」
中里式“不調改善ストレッチ”。3ステップでカラダが変わる!
【STEP1】A:小さく動いて“ゆるめる”。
まずは小さな動きで古い輪ゴムのような筋肉をゆるめてあげることで、酸素と栄養素を送り届ける。すると、筋肉はどんどん新しくなり、新品の輪ゴムのように弾力を取り戻し、柔らかくなる。ここではあまり深く考えずに、とりあえず動かして、筋肉にアプローチする意識付けを。
【STEP2】B:大きく動いて“ほぐす”。
大きな動きで、体幹の近くにある大きな筋肉を連動させる。普段何気なく行っているすべての動作は、末端の小さな筋肉ではなく大きい筋肉を動かした方が、実はものすごくラクだし、疲れにくい。だからここでは、どこの筋肉を動かしているか、しっかりと意識しながら行おう。
【STEP3】C:リズムをつけて動いて呼吸と関節力を“高める”。
さらに、体幹まで使えるようになるために必要なのが、関節を締めて各部位をつなげる“関節力”。リズムをつけることで、動作を切り替える瞬間に関節力を高めるインナーマッスルが刺激できる。また、リズムに合わせて自然と呼吸が意識でき、筋肉に十分な血液を届けられる。
【肩こり】
日本人の不調ナンバーワン! 肩甲上腕リズムの黄金比率がカギに。
肩こりは国民病ともいわれ、年齢や性別を問わず悩んでいる人が多い。「腕を上げる動作には“肩甲上腕リズム”といって、肩関節と肩甲骨が2:1のバランスで動くことが理想的。しかしほとんどの人が、長時間のデスクワークや姿勢の乱れによって、肩甲骨をうまく使えていません。肩甲骨を積極的に動かして、このバランスを整えましょう」(中里さん)
A:ゆるめる
Sのポーズ:肩甲骨に関わる筋肉をゆるめ、動きをスムーズにする。
肩こりの大きな原因である、ガチガチの肩甲骨の動きをスムーズにするストレッチ。肩甲骨を支えたり動かしている、たくさんの筋肉をゆるめよう。
【ここを動かす!】
首から肩、背中にかけてつながる「僧帽筋」、その深層部の「菱形筋」「肩甲挙筋」、前面の「小胸筋」「前鋸筋」など、肩甲骨に関わる筋肉は多い。
腕を床と平行に保ちながら入れ替えて外側に大きく広げる(10往復)。
床と平行になるように、肩と同じ高さ、胸の前に左右の腕を横にして構える。腕を外側に大きく広げ、上下が逆になるように腕を入れ替える。カラダは動かさずに、肘を外側に引っ張り、肩甲骨をしっかり引き寄せるイメージで動かそう。
【NG】肩に力が入ると、腕が斜めになる。
腕が斜めになると、胸が開きにくくなり、肩甲骨のストレッチ効果が下がる。腕の平行を保つことに意識を向けると、肩が下がり、力まなくなる。
B:ほぐす
水上花火:縮こまった胸の筋肉と、肩甲骨まわりの筋肉をほぐす。
胸の筋肉が過緊張していると、肩甲骨が外側に寄り猫背にもなってしまう。肩甲骨を寄せ広げする動きをさまたげる、胸の筋肉の硬さを解消しよう。
【ここを動かす!】
〈Sのポーズ〉と同様に肩甲骨に関わる筋肉に加えて、座りっぱなしなどで背中が丸まり、縮んで硬くなっている胸の筋肉「大胸筋」をほぐそう。
前半は肩関節、後半は胸部と肩甲骨を意識して胸を大きく開く(左右各3回)。
膝を曲げ、横向きに寝る。両腕を前に伸ばし手を合わせる。肩関節だけで真上まで片腕を上げたあと、後半は肩関節を動かさずに胸を大きく開いてカラダを開いていく。胸の筋肉の伸びを感じながら、ゆっくり行おう。反対側も同様に。
【NG】腕だけ回して、胸が伸びていない。
後半部分の動作で肩から先だけで無理に腕を回してしまうと、肩関節を痛めてしまう。肩関節は動かさず、体幹部をひねる動作を意識して。
C:高める
タオルで背中ごしごし:肩甲骨まわりと腕の表裏の筋肉に運動性を出す。
タオルを持つことで、肩甲骨に内転、上方回旋、下方回旋などの動きを出せ、可動域を広げられる。腕の表裏の筋肉にもほど良い刺激が入る。
【ここを動かす!】
タオルを上げた時は、下の腕の「上腕三頭筋」がストレッチされ、下げた時には、下の腕の「上腕二頭筋」に適度な刺激が入る。
リズムよく腕を斜めに上げ下げ(上下の手を入れ替え各5往復)。
真っすぐに立ち、胸を広げ、背面でタオルの端と端を対角に持つ。カラダの軸がブレないように、斜め上、斜め下にリズミカルにタオルを動かす。慣れてきたらタオルを持つ距離を縮めていくと、さらに肩甲骨まわりの運動性がアップ。
【NG】猫背のまま行うと、関節を痛めることも。
背中が丸まると、肩甲骨まわりの筋肉が動きにくい状態となり、手関節や肘関節への負担が強くなる。胸を張る正しい姿勢を保つことが大切。
ブラトップ¥8,800(ニュートラルワークス./ニュートラルワークス.トーキョー TEL:03・6455・5961) レギンス¥13,200(ダンスキン/ゴールドウイン カスタマーサービスセンター TEL:0120・307・560)
中里賢一さん ボディメンテナンスサロン「MARKS」代表。さまざまな不調を抱えている人に寄り添い、その人に合ったケアを行う。監修本に『DVDカラダがスーッとラクになる可動域ストレッチ』(西東社)など。
※『anan』2022年2月16日号より。写真・中島慶子 スタイリスト・武政 ヘア&メイク・yumi(Three PEACE) モデル・中嶋杏里沙(LIGHT management) イラスト・井上 香 取材、文・鈴木恵美
(by anan編集部)