日本人女性の9人に1人がかかる“乳がん” リスクをチェックする8項目とは?

2021.9.27
女性にとって最も身近ながんといってもいい、“乳がん”。怖さを感じるのも事実ですが、早期発見をすれば、生存率が高い病気であることも事実です。病気のこと、検査、予後のこと、正しい知識を身につけましょう。

現代を生きる女性には、とても身近な病気です。

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“乳がん”とは一般的に、乳房にできるがん細胞の病気のこと。

「主に、乳汁の通り道である乳管や、乳汁を作る小葉にがん細胞ができます。乳腺があれば、乳房のどこにでも発生し、まれに腋の下にある乳腺から発生することも。乳房の大きさと乳腺の量は関係ないので、胸が小さいから乳がんにならないというのも、間違った知識です」(医師・及川明奈先生)

「日本人女性が一番多く罹患するがんであり、9人に1人がかかるといわれる。この40年間で罹患者数が10倍に増加しています。ちなみに数は少ないですが、男性で乳がんになる人もいるんですよ」(乳房の先生・BC先生)

増加の原因は、ライフスタイルの変化を含め、さまざまな社会的要因が関わっていると考えられます。

「現代は、妊娠、出産、授乳を経験する女性が昔より少なくなっています。授乳が終わったあとの乳房は、母乳を作るという働きを終えた乳腺の分量が全体的に減ることが知られています。それに伴い、がん細胞が生まれるリスクが下がると考えられています」(BC先生)

もはや身近な病気であることを自覚して、常に乳房に意識を向けながら生活をしましょう。

30代後半から上昇し、罹患率のピークは40~70代あたり。

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「一般的にがんは年齢を重ねるほど罹患率が上がるのですが、乳がんはそれと異なり、35歳くらいから急激に増え、40~70代に発症する人が多い。なので、40代になる前に正しい知識を身につけて、なおかつセルフチェックの習慣をつけておくことがとても大事です」(BC先生)

若いうちに発症すると進行が早い、というのは、正しくない情報だそう。

「がんの種類にもよるのですべてそうとは言い切れませんが、20~30代は定期検診世代ではないので、症状を自覚してから発見されることが多く、それにより“若いと進行が早い”という印象を持つ人が多いのでは。検診世代の手前の人たちこそ、ブレスト・アウェアネスが重要なんです」(BC先生)

遺伝子が関係あるって本当? “遺伝性乳がん”とは?

乳がんは、特定の遺伝子が関わって発生するタイプがあることが判明しており、その遺伝子に変化を持つ人は、持っていない人に比べると罹患する確率が高いのだとか。

「およそ5~10%が遺伝性の乳がんといわれています。親がその遺伝子に変化を持つ場合、2分の1の確率で子供に受け継がれるので、母親や姉妹が乳がん罹患者の場合は、リスクは上がります。昨年の4月から、乳がんと診断された人である程度の条件に当てはまる人は、遺伝子診断が保険でできるようになりました」(及川先生)

「また遺伝性乳がんは、比較的若い時期に発症することが多い。なのでご家族内に罹患者がいる場合は、意識を高めておきましょう」(BC先生)

大事なのは早期発見。早く見つければ治療の選択肢も広がる。

さまざまな種類のがんがありますが、その中でも乳がんは、生存率が高く、治療により治る確率が高いといわれているそう。

「一般的にがんは進行度合いをI期からIV期までに分けて考えます。I期のがんは非常に小さく、最初にできた場所にだけがん細胞がある状態。乳がんの場合、この時期に発見でき、治療を始められれば、10年後に生存する可能性は98%近くになります。もちろん、がんのタイプや症状は人それぞれなので一概には言えませんが、見つかるのが早ければ早いほど、治る確率は上がります。また治療中も治療後も、なるべく普通の生活を送れるようサポートがあります。ですから必要以上に怖がらず、気になるときはすぐに受診をしてください」(BC先生)

家族に罹患者がいる人は、生活習慣が似ているかも。少し意識を高くして。

上で説明をした遺伝性乳がん以外で、原因がわからない乳がんも多い。いくつかの生活要因が重なって発生するといわれています。

「一般的にがんリスクといわれるのは、喫煙や飲酒、そして肥満の原因になるような食生活や運動不足など。例えば親にそういった生活習慣がある場合、一緒に暮らしてきた子供も親と近い生活習慣であることが多く、その結果、親と子供、どちらも乳がんになる、という場合も」(及川先生)

がんリスクが高い生活習慣を送っていることが大きな要因になることも。

「出産経験や遺伝子は自分の力ではどうにもなりませんが、生活習慣は改められます。なるべく健康的な生活を送るよう努力を」(BC先生)

こんな要件や生活習慣がある人は…乳がんリスクチェックリスト

  • 血縁者に乳がん罹患者がいる
  • 初潮の年齢が早かった
  • 出産&妊娠経験がない
  • 糖尿病である
  • よくお酒を飲む
  • タバコを吸う
  • 成人後に肥満体質になった
  • 夜間勤務がある

※これまでの研究の結果、罹患した人たちに多く見られた生活習慣や環境にまつわる要件です。また「いくつ当てはまったら危険」というものではなく、これに当てはまらない人でも乳がんになる可能性はあります。

BC先生 乳腺科医などを中心としたチームで、乳がんの啓発動画を配信している「BC Tube」のキャラクター。今回5人の医師が取材に参加し、その内容をBC先生がまとめて回答します。

及川明奈先生 医師、「六本木ブレストレディースクリニック」院長。乳腺専門医、外科専門医、日本女性医学学会会員。女性の健康をサポートする幅広い医療を提供。https://rblc.jp/

※『anan』2021年9月29日号より。イラスト・別府麻衣

(by anan編集部)