劇団四季『オペラ座の怪人』を支える! 知られざる“床山”の仕事内容とは?

2021.8.12
私たちを魅了するエンタメの世界。そこには、それを作り上げている多くの功労者たちがいます。ここでは、表舞台を支える“床山”のお仕事をご紹介!

その人らしさを感じるビジュアルをヘアメイクで構築。

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床山とは、いわゆるヘアメイクを担当する部門。ミュージカル『オペラ座の怪人』は、19世紀のパリ・オペラ座を舞台にしているうえ、劇中劇もあるため、劇団四季のなかでもとくにカツラの使用数が多い演目なのだとか。

「すべてというわけにはいかないですが、ものによっては毎日メンテナンスするものもありますし、週に1度、日付を決めて手を入れているものもあります。基本的にメインで使用するカツラはこちらでチェックも行っていますが、本番中に髪型が崩れたものなどがあれば、俳優から自己申告してもらったりもします」

当時の流行の髪型にかなり忠実に作られているため、なかには髪の毛ひと束ごと細かくねじって巻き留めていたり、細かく編み込まれている複雑で手の込んだ髪型も。

「『オペラ座~』の現場に就いたばかりの時には、構造を把握するためいったんすべて解体しながら写真を撮り、一から作り直してみることをしていました。それでもうまくいかなければ先輩に聞きますが、基本は見て学ぶ、ですね」

ロングラン公演の多い劇団四季では、一つの役に複数の俳優がキャスティングされている。そのためメインの役に関しては、演じ手の頭に合わせたカツラを用意。

「大事なのは、客席から舞台を見た時に、その役のイメージに合っているかどうか。同じカツラでも、俳優の目鼻の位置や顔の形、身長や体型によってだいぶ印象が変わります。ですのでフィッティングしてみて、大きさだけでなく、部分ごとにボリュームを変えたり、もみあげの長さを調整したり、人によっては毛を植えたり抜いたりすることもあるんです」

実際に俳優がそれを着けて舞台に立ち、本番の照明が当たって見えた時のビジュアルが、自分の頭の中で思い描いたキャラクターイメージとぴったり合った時が、やりがいを感じる瞬間と山田さん。

「生身の俳優が目の前で演じ、歌っている時の熱量や息遣い。そこに照明や小道具、装置…すべてが一つになった総合芸術。それを五感で余さず感じ取れるのが生の舞台の魅力だと思っています」

様々な道具を使い分けながらカツラをメンテナンス。

Stage

現在、公演を担当している床山さんは4人。終演後、必要なカツラを床山部屋に集め、1人につき1日約4体程度のメンテナンスを担当。コテで髪を巻き直したり、場合によっては一からセットし直す場合も。ここに写っているのは、劇中劇「ハンニバル」のカルロッタのカツラ。山田さんは怪人のメイクも担当しており、そこで使用するアイテムも毎日メンテナンスしている。

【本番!】

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写真・佐藤アキラ

Stage

髪飾りを付けるカツラは、飾りのインパクトに負けないようボリューム感など何度も調整するとか。

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カールの太さにより様々なコテを使い分ける。写真は3つともヒゲ用。

Stage

床山部屋はステージの裏に。

劇団四季 ミュージカル『オペラ座の怪人』

Stage

19世紀半ばのパリ。オペラ座に隠れ住む怪人(=ファントム)と、彼がその才能を見初めた歌姫クリスティーヌをめぐる壮大なラブストーリー。現在、清水建設ミュージカルシアター JR東日本四季劇場[秋]にて上演中。2022年1月10日千秋楽。https://www.shiki.jp/

写真・阿部章仁

山田梨香子さん 劇団四季 舞台美術部 床山所属『オペラ座の怪人』床山チーフ。小学生時代に特殊メイクに興味を持ち、美容学校を経て劇団四季へ。入団当初は『ライオンキング』を担当。現在、入団3年目。

※『anan』2021年8月11日‐18日合併号より。写真・小笠原真紀 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)