サステナブルが叫ばれる今こそ注目したい! 「包む-日本の伝統パッケージ」展

2021.7.16
“包むこと”を通じて日本人の生活や社会を考える。展覧会「包む-日本の伝統パッケージ」とは?

アートディレクターが稀有だった戦前から、日本の伝統的なパッケージの収集と研究を続け、「TSUTSUMU(包む)」という言葉とともにその美しさを海外に広く知らしめた、デザイナー岡秀行。

「最初は形の見事さに惹かれた。けれど次第に形の奥に呼吸している人間の暮らしへと関心が移っていった」と生前、収集の動機を語っている。彼は、現代社会においてのパッケージを、商品を売るためのテクニックであり広告産業の一部と考えた。つまり新しい包み方は新しい生活を意味し、包み方の変化は生活自体の変化だというのだ。彼にとって、日本人とは何か、生活とは何か、社会とは何かを考える上で「包む」ことの意味は広く、重大。そんな想いから岡氏が見出したのは、それぞれの伝統パッケージに脈打っているのは日本人特有の自然観であるということだった。日本人はすべての自然に神様が宿ると考え、それに包まれるものは大切なもの、清らかなものであると捉えている。だからこそ伝統パッケージには一種の折り目正しさがあり、見る者をハッとさせるほどの格調があるのだと断言している。

そんな岡氏の意思を反映した今回は木、竹、笹、藁など日本の風土に育まれた自然素材や陶器、和紙、絣かすりなど、日本人に馴染みある素材別にデザインを紹介。デザイン的な観点からいえば「生活の知恵として生み出されたシンプルな造形」を紹介した作品と、日本人の職人技というべき「職人のプライドと手技の美を持つ品」の2種に大別される。

プラスチック容器全盛の昨今、本物の自然が宿る日本の伝統パッケージは、心に潤いを与えてくれる。サステナブルが叫ばれる今こそ、再びこうしたパッケージに目を向ける時が来たのだと考えさせる内容だ。

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《卵つと》山形県 撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)
農民生活の長い歴史から生まれた、卵を安全に運ぶ入れ物「卵つと」。生活の知恵が洗練され、見事な造形となった。藁素材の特性をフル活用している。

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《岡山獅子》岡山県/中尾正栄堂 撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)
古い須恵器(陶質土器)の伝統を受け継ぐ由緒ある備前焼のお菓子パッケージ。岡山ではメジャーな商品で、中にはきびだんごが入っていた。現在はもう製造されていない。

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《釣瓶鮓》奈良県/釣瓶鮓弥助 撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)
釣瓶鮓(つるべずし)は奈良の郷土料理で、曲げ物桶に鮎の熟れ鮓を詰めたもの。1000年以上の歴史を誇る由緒ある逸品で、現地でも長く愛されてきたが、現在は製造されていない。

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《ささらあめ》宮城県/熊谷屋 撮影:酒井道一(岡秀行著『包』毎日新聞社、1972年 所収)
仙台の郷土菓子であるささら飴を竹ひごの先に付け、筒に差し込んだシンプルなデザインが見事。熊谷屋の商品であったが、現在この形での販売は終了している。

包む-日本の伝統パッケージ 目黒区美術館 東京都目黒区目黒2‐4‐36 開催中~9月5日(日)10時~18時(入館は17時半まで) 月曜(8/9は開館)、8/10休 一般800円ほか TEL:03・3714・1201

※『anan』2021年7月21日号より。文・山田貴美子

(by anan編集部)

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