前田美波里「結婚より男より、何より私は舞台が好き」

2021.7.11
人生の先輩的女性をお招きし、お話を伺う「乙女談義」。今月のゲストは日本のミュージカル界のトップスター、前田美波里さん。第1回は「舞台で喝采を浴びることが何よりも好きです」。

舞台で喝采を浴びることが何よりも好きです。

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私が一番お伝えしたいことを、最初に言ってしまいますね。私は、舞台に魅入られてしまった、そんな人間なんです。舞台に立ち、お客様と同じ空気を吸う中で、皆さんを“非日常の世界”にお連れする。そして最後に喝采をいただく。それが何よりも好き。それがあるだけで、私は幸せなんです。

“前田美波里”としては1人の人生しか生きられませんが、この仕事をしていると、たくさんの女性の人生を生きることができる。台本に描かれたその人の人生に自分を重ね合わせ、想像を膨らませながら1つの役を作り上げていく。その作業が、何よりも気持ちがいいし、居心地がいい。結婚より男より、何より私は舞台が好きなんです。人間としてはもしかしたら失格者かもしれない。でも72歳まで夢だった仕事ができているわけだから役者としては失格者ではないんじゃないかな、と思ってます。そこまで夢中になれるものを持てて、本当に幸せです。

バレエとの出合いが、私を踊りへ導いた。

体で表現する喜びを知ったのは、小学生で習ったクラシックバレエでした。良く言えば活発、悪く言えば落ち着きのない子どもだった私でしたが、ある日ハーフの友達に誘われて行ったバレエ教室の見学で、ひと目で夢中に。何度も見に行くうちに「やってみる?」と声をかけてもらい、お稽古着や靴を借りて踊ったら楽しくて楽しくて…。でもうちは裕福ではなかったので、母に言ってもやらせてくれるわけもなく。そうしたらなんと先生が母を説得してくれ、通えることになったんです。そこからは、雨の日も雪の日も、欠かさず通いました。踊ること、それを見てもらうことがとにかく嬉しかった。アメリカと日本のハーフだった私はその頃、嫌な目に遭うこともありましたが、先生の“頑張っている子を評価する”という平等な精神に惹かれたのも、理由だったかもしれません。あのとき先生が私の母を説得してくれなかったら、私は今、舞台に立っていないと思いますね。

まえだ・びばり 俳優。1948年生まれ、神奈川県出身。’64年、ミュージカルで初舞台。以来数々のミュージカルや舞台で活躍。来年8月、ミュージカル『ピピン』の再演が決定した。

ジレ¥41,800(DUE deux TEL:03・6228・2131) ワンピース¥146,300(ロッコラーニ/ステラ TEL:03・5408・5171) ピアス¥38,500(ウノアエレ シルバーコレクション/ウノアエレ ジャパン TEL:0120・009・488) サンダル¥19,800(卑弥呼 TEL:03・5485・3711) リングは本人私物

※『anan』2021年7月14日号より。写真・小川朋央 スタイリスト・松田綾子(オフィス・ドゥーエ) ヘア&メイク・矢野トシコ(SASHU)

(by anan編集部)