命を救う、指一本でできるボランティア。
「幼い頃から母が地域猫の世話やTNR(猫を捕獲し、不妊手術をし、元の場所に戻す活動)のボランティアをしているのを見て育ったので、殺処分がある現実や保護猫、保護犬の存在を知っていました」
そう話すモデルの松島花さん。自身が猫を迎える時も、命を“買う”、つまりペットショップから、という選択肢はなかったそうだ。
「小学生の頃から20年間飼っていた梅ちゃんも、10年で病気で亡くなった竹ちゃんも、母の友人宅で生まれた子を兄妹でもらいました。高校生の頃は、仕事の際にスタジオなどに『殺処分ゼロ』を呼びかけるチラシを貼ってもらっていました。でも、その当時私にできることはそれくらいで、いつかもっと直接的に命を助ける活動がしたいとずっと思っていて。20年を共にした梅ちゃんを亡くし、心の穴を埋めるようにSNSで日々、猫や犬の写真を見ている中で、命の期限が迫った子たちの投稿が多く目につき、何か自分にできることを改めて始めようと思い、インスタグラムで動物愛護のためのアカウントを開設しました」
ただ、この活動は生半可な気持ちではできないと一歩を踏み出すまでに随分悩んだという。
「年々数は減っているとはいえ、いまだに年間約3万頭もの命が消えていっているのが現状です(環境省統計資料参照)。そこで、保健所で“命の期限”が付いた猫や犬の情報を拡散し、里親を探すお手伝いができないかと思いました」
12歳から続けてきたモデルという職業柄、少しは拡散という面で役に立てるのではないかと思い「@hana_matsushima_animal」を開設したのは3年前。現在は約4.7万人ものフォロワーを持つまでに成長した。インスタグラムでは、「#指一本でできるボランティア」とハッシュタグを付け保健所に収容されている猫や犬の情報が日々投稿されている。
「命の期限の投稿だけでなく、皆さんの拡散により、里親さんが見つかったなどポジティブなメッセージも伝えていくようにしています。また、ボランティアさんの紹介や、いま動物たちに起きている様々な問題も発信しています」
ハードルを上げず、できることを少しずつ。
では、私たちにできることとは?
「私が伝えたいのは、里親になるだけが愛護活動ではないということ。猫や犬を飼えない環境の方は、応援したいボランティアさんを見つけて、トイレシートやペットフードなどの物資を寄付したり、クラウドファンディングに参加したり、保護犬の散歩やミルクボランティア、そして、インスタグラムでの『#指一本でできるボランティア』による拡散がおすすめです」と、たくさんの“実践可能”なアイデアを教えてくれた。
「保護された猫や犬の中には、虐待を受けたり、ネグレクト(育児放棄や放置)、繁殖猫・犬など人間不信になり不安の中で生きているケースや野良猫や野犬で人馴れしていない子も。でも、愛情を注ぎ、少しずつ心を通わせてその子のペースに合わせて安心させてあげることで、必ず飼い主を信用してくれる時が来る。時間はかかりますが、私はそう信じています。保護猫・犬だからといって決して特別な猫と犬ではありません。好きな時に眠って、毎日ごはんが食べられる―そんな安らげる環境を作ってほしいと思います」
でも、この活動をする中で悩みや葛藤もあるという。
「動物愛護の範囲はとても広く、私がヴィーガンではないことで活動の詳細に対して質問や批判が来るケースもありますが、私は決して猫と犬以外の動物をどうでもいいと思っているわけではありません。でも、ヴィーガンでなければ、保護猫・犬活動をしてはいけないとなるとこの活動は一向に広がっていきません。世の中に猫や犬が大好きという方はたくさんいるのに、動物愛護活動となると、大変そう、自分には無理と離れていってしまう。完璧じゃなくても、自分にできることを無理なくやってほしい。私はいま自分にできることを等身大で行う。その中で、目の前にいる一頭でも多くの命を救うことができるのであれば、この行動は価値のあるものだと考えています」
現在一緒に暮らす、ごろりん、ゴメズ、フェスターの3匹はボランティアさんから迎えた愛猫。
「ペットショップから猫や犬を迎える方の10人に1人が里親になる選択すれば、殺処分は必要なくなります。そして多くの方にいま動物たちに起こっている様々な問題を知っていただくことで、それぞれの方が自分にできることから始めてもらえば、いずれ殺処分がなくなる世の中になっていくと信じています」
HANA MATSUSHIMA モデル。10代からキャリアを重ね、数多くのファッション誌、広告を彩る。映画『天空の蜂』(2015年)やテレビドラマなどで役者としても活躍し、バラエティにも出演。表現者として幅広く活動する。トップス¥53,240 スカート¥53,240(共にナヌーシュカ/ヒラオインク TEL:03・5771・8809) ピアス¥74,000(シャルロット シェネ/エドストロームオフィス TEL:03・6427・5901) シューズはスタイリスト私物
※『anan』2021年4月7日号より。写真・野田若葉(TRON) スタイリスト・木津明子 ヘア&メイク・平元敬一 取材、文・三谷 徹
(by anan編集部)