学校に居づらさを感じる少女たちが、図書室で出会う本、人、優しさ。
収録されているのは6編。図書委員の本好きな女子もいれば、教室に居場所がなくて仕方なく図書室にやってくる少女もいる。全編読めば、生徒同士の意外ながり繋がりも浮かび上がり、楽しめる。
「気をつけたのは、読書が好きな子を中心にはしないこと。本が嫌いな子もいれば、好きでも読むジャンルが偏っている子もいる。バリエーションを出そうと意識しました」
共通点はみな、日常にどこか息苦しさを感じていること。彼女たちに寄りそうのが、しおり先生と呼ばれ慕われている、司書の女性だ。
「特にキャラクターを決めて書き始めたわけではないんですが、たぶん僕の中の司書という存在の理想的な接し方が表れていると思います」
と言うように、さりげなく背中を押してくれる温かい人。たとえば、読書感想文の嫌いな生徒に対する接し方などは絶妙。
「読書感想文はそんなに肩ひじ張って書くものじゃないと思います。ただ、僕自身は、言葉にすることで気持ちが形になる経験がありました」
この短編には、タイトルの分からない本を探すという謎解き的な面白さも。また本作には、ミステリー作家の相沢さんらしい仕掛けも用意されていて、これがとても心に響く。
「ただ驚かせるのではなく、自分がどういう大人になるか分からず不安でいる世代にひとつのアンサーを提示できればと思いました。いま周囲に助けてくれる人がいない子に対するアンサーも入れたくて、ページ数も増えましたね」
読み終えた時には「今はつらくても、きっと大丈夫」というメッセージが伝わるはず。『雨の降る日は~』は学校の図書室からのリクエストが多いというが、
「今回の本も、いま学校に通っている子たちの何かになれれば」
と相沢さん。あなたに寄りそう一冊が、ここにあります。
『教室に並んだ背表紙』 本好きなあおい、読書感想文が苦手なあかね、二次元キャラ推しの萌香、教室で村八分にされたエリ…。少女たちが図書室で見つけるものは。集英社 1400円
あいざわ・さこ 1983年生まれ。2009年『午前零時のサンドリヨン』で鮎川哲也賞を受賞しデビュー。’19年、『medium 霊媒探偵城塚翡翠』がミステリーランキングを席捲。『小説の神様』は映画化された。
※『anan』2021年2月24日号より。写真・大村祐里子(相沢さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・瀧井朝世
(by anan編集部)