土屋太鳳「どんなに激しいシーンになったとしても…」 “愛がもたらす闇”表現

2021.2.11
「演じる」という行為を通じ、観る者に数多くの心震える瞬間をもたらしてくれる土屋太鳳さん。作品における“人を愛する表現”について聞きました。

愛を行動で示すのはとても素敵なこと。

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人気コミックの実写化や感動実話の映画化を通して、これまで数々の恋のときめきや愛のポジティブサイドを体現してきた土屋太鳳さん。自身と同じ26歳のヒロイン・福浦小春を演じる『哀愁しんでれら』では、「愛する」ことがもたらす闇も表現している。

幼い頃に母親が家を出ていくという辛い経験をしながらも、家族4人で平和に暮らしていた小春は、怒涛の不幸に襲われ、一夜にしてすべてを失ってしまう。そのどん底状態で出会ったのが、8歳の娘・ヒカリを男手ひとつで育てる開業医・泉澤大悟。彼との結婚で幸せを手に入れたはずが、ヒカリの良き母であろうとして次第に追い詰められ、凶悪事件を起こすことに。土屋さんが出演オファーを3度断ったという難役だ。

「最後に起こす事件は絶対に許されることではないですし、最初いただいたお話の印象では、ヒカリを愛せる自信がなかったんです。納得できないことがあると、どこか引っかかって演じづらくなるのでお断りしていました。でも、小春自身もそんなに大きな幸せを求めていたわけでもなく、ただ普通に幸せになりたかっただけ。それなのに、目の前のことに必死になっていたら、違う方向に行ってしまった。何が正しいことなのか、判別ができない。この作品ではそういう状態が愛情の正体でもあるのかな。愛の正体とは何かを追求するというよりは、私自身、ただただ小春と一緒に必死に生きたという感じです。もしかしたら、『哀愁しんでれら』の登場人物が自分の中にいるかもしれないし、隣にいるかもしれないし。観てくださる方にも、“愛する”って何だろうと考えるきっかけにしていただけたらいいですね」

女優デビューから13年、大人の女優へと進化を続けるなかで、「愛する」という表現には官能的な要素も加わってくる。小春と大悟の関係には、そんな大人の気配が漂うシーンも。

「“好き”とか、人を大事に思い、愛することを行動に移すのは、すごく素敵なことだなとは思っています。でも、“一緒にいたい”みたいな気持ちの高揚感自体は、私自身、そんなに変わってはいないですね。確かに年齢を重ねると、愛情表現もほっぺたにキスとかだけではなくなってくるけれど、本来はほっぺたにキスでも相当ドキドキするはず。だから、どんなに激しいシーンになったとしても、そういう気持ちを忘れずに演じていたほうがいいのかなって、今回すごく感じました」

キャリアを重ねるなかで、表現について意識の変化は?

「基本的には変わってないです。今日、マネージャーさんと話してたんですけど、幸せになれるかなれないかって、小さな幸せに気づけるか気づけないかだと思うんです。だから、“ありがとう”とか、“あっ、この人のここ、いいな”とか、そういう小さな幸せの気づきを積み重ねていくことが大切なんだなって。それは、20歳の頃よりはすごく意識してることかもしれないですね」

『るろうに剣心』ではアクションシーンで驚異的な身体能力を発揮し、シーアの「アライヴ」のMVでは圧巻のダンスで世界を感動させた。さまざまな表現において高い技術を持つ彼女は、女優にとって「愛する」という表現がどんな意味を持つと考えているのだろう。

「男性の俳優さんのことはあんまり男優とは言わないですけど、女優のことは結構、女優さんと言いますよね。それは女優さんは愛情表現だったり、包容力や母性を表現できることがすごく大切になってくるからなのかなと思います。だから、ひとりの人間としてしっかり経験を重ねていくことも、女優という職業には大事。私も、人間として女優として、ステップアップしていきたいですね」

土屋太鳳 1995年2月3日生まれ。東京都出身。2008年女優デビュー。‘15年に朝ドラ『まれ』で主演を務め、国民的女優に。Netflix『今際の国のアリス』が配信中のほか、映画『哀愁しんでれら』(配給:クロックワークス)が公開中。

ジャケット¥61,000 中に着たインナー¥14,000 パンツ¥38,000 イヤリング¥18,000(以上FUMIE TANAKA/DO-LE co ltd. TEL:03・4361・8240) 3粒パールリング¥115,000(CHERRY BROWN TEL:03・3409・9227)

※『anan』2021年2月17日号より。写真・野呂知功(TRIVAL) スタイリスト・藤本大輔(tas) ヘア&メイク・尾曲いずみ 取材、文・杉谷伸子 撮影協力・バックグラウンズ ファクトリー

(by anan編集部)