縦横無尽に広がっていく対談を取りまとめるだけでなく、日頃さまざまな作家をインタビューしている瀧井さんが、キュレーター的に「誰と誰が話をしたら面白いか」その組み合わせも多く発案しているのがポイントだ。
「インタビューをしていると作家さん同士の意外な繋がりや、愛読している作家さんについての話が出てきて、この組み合わせは面白そうだなと妄想することがよくあります。とはいえ、こちらの勝手な判断にならないよう、自然と引き合っていそうな組み合わせを意識しました」
収録されている46組を一部紹介すると、一緒に旅行をするほど仲良しだという青山七恵さん&綿矢りささん、初の夫婦対談が実現した島本理生さん&佐藤友哉さん、エンタメについて大いに語り合った恩田陸さん&辻村深月さん、ラジオという共通項があり、初めてとは思えない掛け合いが見事なジェーン・スーさん&春日太一さんなどなど。“作家”を広く捉えて、小説家をメインに自身の著作または訳書など本を出している人ならOKというルールにしたのも、組み合わせの妙を生んでいる。
「ライターによるインタビューではなく、作家同士で話しているときに思わぬ本音が出てきたり、書き手として共感し合ったり、この人はこういう質問をするんだという驚きも。ふたりのおしゃべりを特等席で聞かせてもらっている感じでした」
対談の際に、これまたどんな理由でも構わないので、オススメ本をひとり1冊ずつ紹介しているのだが、本好きが選ぶだけあって理由も含め、どの本も興味深く、読みたい本が数珠つなぎで増えていく。また各対談の最後に「After Talk」として、対談当時のエピソードやその後の作家の活躍、ふたりの交流などについてもフォローされている。
「本との出合いや読み方など、一人ひとりの読書体験や執筆体験を身近に感じられますし、紹介している本が面白いのはもちろん、本についておしゃべりすることの楽しさを味わえる一冊になっていると思います」
たきい・あさよ ライター。WEB本の雑誌「作家の読書道」、文藝春秋BOOKS「作家の書き出し」、弊誌などで作家インタビュー、書評を担当。著書に『偏愛読書トライアングル』など。
『ほんのよもやま話~作家対談集~』 雑誌『CREA』で約6年連載された対談企画が一冊の本に。憧れ、共感、ときに嫉妬など作家同士の語りを通して読書の楽しみが広がる。文藝春秋 1650円
※『anan』2020年11月18日号より。写真・土佐麻理子(瀧井さん) 中島慶子(本) インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)