魚が食べられない未来がくる? 『シンシアブルー』のシェフが伝えたいこと

2020.10.27
フードライター・平野紗季子さんの「MY STANDARD GOURMET」。今回は『Sincere BLUE(シンシアブルー)』のテーブルビュッフェです。
1

「サステナブルな取り組みはまず、おいしくないと続かないですから」。今年の7月にJINGUMAE COMICHIにオープンしたレストラン『シンシアブルー』の吉原誠人シェフは言う。その名の通り、星付きフレンチの名店『シンシア』の姉妹店。MSC認証(持続可能な漁業で獲られた天然の水産物)やASC認証(責任ある養殖により生産された水産物)を取得した魚介類などのサステナブル・シーフードや未利用魚(漁獲量が少ない、魚体のサイズが不揃い等の理由で市場に出荷されない魚)を積極的に使った料理が揃う。「たとえば今日はオキアジを使用していますがこれは未利用魚で……とお客様に説明すると、未利用魚ってなに? と興味を持ってくださる。そこから日本の海の危機的状況についてお話しすることもあります」。海の資源が枯渇しつつある現状を、おいしさを通してカジュアルに伝えていくのが『シンシアブルー』のやり方だ。

しかも料理はテーブルビュッフェ形式。常時10種類ほどの小皿料理が食べ放題となっている。このおいしい魚をいくらでもいつまでも食べたい! と思わせながら、逆説的にそれらが危機に瀕していることも伝える。ひとりひとりの食べ方がこの世界の未来を彫刻するともいえる社会の中で、料理人が果たすべき役割を『シンシアブルー』はたしかに担っている。そんな店のあり方を推さずにはいられない。

テーブルビュッフェ¥4,900(平日ランチは対象外)より。その日のサステナブル・シーフードで作る『シンシア』名物の「鯛焼き」のメインディッシュを中心に、オードブルの小皿料理は食べ放題。ずらずらと小皿がテーブルを占拠する楽しさは、おいしさのエレクトリカルパレード。

Food

Sincere BLUE 東京都渋谷区神宮前1-23-26 JINGUMAE COMICHI 2F TEL:03・6434・0703 ランチ11:30~14:00(13:00LO)、ディナー17:00~23:00(入店時間は17:00、17:30、19:30、20:00の4回制) 月曜休

ひらの・さきこ 1991年生まれ。フードエッセイスト。著書にエッセイ集『生まれた時からアルデンテ』(平凡社)

※『anan』2020年10月28日号より。写真・清水奈緒 取材、文・平野紗季子

(by anan編集部)