松本:ベテランのキャストが揃う中、私が主演でいいの? と真っ先に思いました。でも監督は、これまでの私のお芝居を見た上でお声がけくださったそうなので、不安を拭ってやり抜こうと決めたんです。
奈緒:角川監督は怖い方かと思っていましたが(笑)、初めてお会いした日、笑顔でいろんなお話をしてくださって。とても優しい方でした。
松本さんは江戸で料理人をする澪を、奈緒さんは遊郭で花魁(おいらん)・あさひ太夫と名乗る野江を演じている。二人はかつて生き別れた幼馴染みだ。
松本:澪は、自分の大切にしていることや仕事に対する志をしっかり持っていて、そういう思いを表に出すのではなく内に秘めている女性。役作りにおいてその意志の強さは、「何があってもずっと一緒や」と約束した野江ちゃんのことを思いながら演じることで、おのずと表現となってにじみ出てくると信じて撮影に臨みました。普段の役作りでも、何か一つブレない軸を心に留めておくことを意識しているんです。
奈緒:野江はすごく大きな孤独と寂しさを抱えた女性ですが、でも、生きることを絶対に諦めない人。生活が困難な時代で美しく生き抜く花魁は憧れの役でしたが、悩むことも多くて、撮影中は楽しい思い出もあるけど不甲斐ない思いもたくさん。同世代の松本さんにずいぶん助けられたと思う。完成作を見た時はクランクアップからまだ日が浅く、生傷が残ったまま見たので、顔を覆って指の隙間から見たいぐらいでした(笑)。
松本:自分の足りない部分とかが目についちゃって客観的には見られないよね。でも、現場で撮影を見ていた時、あさひ太夫さんの目線の動かし方は素晴らしかったです!
奈緒:言えないことが多い女性なので、目線の演技は意識していたの。だからそう言われると照れるけど嬉しいです。習っていた日本舞踊の動きが役に立ったところもあると思います。松本さんは、見ている人に“澪は本当にいるかも”と信じさせる力のある人。生まれ持ったものに加え、お芝居の力と人柄から生まれた美しい目がとても魅力的でした。
松本:泣いちゃいそう…。
本編には澪が作る美しい料理が次々と登場するが、ところで二人にとっての思い出の料理とは?
奈緒:初めてお母さんに教えてもらった九州のちょっと甘い筑前煮かな。この先も私はずっと、母の味を引き継いで作り続けるんだと思います。
松本:私は…カレーかな。
奈緒:私が一番好きな食べ物!
松本:実は二人でいつかキャンプに行こうと話しているんです。
奈緒:そこでカレーを振る舞ってくれる約束だもんね。これは思い出の料理になる! え…期待、重い?
松本:頑張って作るね!(笑)
映画『みをつくし料理帖』 製作・監督/角川春樹 原作/高田郁『みをつくし料理帖』 出演/松本穂香、奈緒ほか 10月16日より全国公開。幼い頃に生き別れた澪と野江。10年後、澪は料理人に、野江は幻の花魁として名を知らしめていた。
松本さん・シューズ¥86,000(ジミー チュウ TEL:0120・013・700) イヤリング¥54,000 リング、左手人差し指¥80,000 右手中指、ゴールド¥50,000 右手中指¥48,000(以上ボロロ)http://www.bororo.jp/
まつもと・ほのか 1997年2月5日生まれ、大阪府出身。公開中の映画『青くて痛くて脆い』や『君が世界のはじまり』など今年は5本の映画と、『竜の道 二つの顔の復讐者』など2本のテレビドラマに出演。
なお 1995年2月10日生まれ、福岡県出身。10月27日から放送開始のドラマ『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・CX系)に出演。また、出演映画『君は永遠にそいつらより若い』が2021年公開予定。
※『anan』2020年10月21日号より。写真・土佐麻理子 ヘア&メイク・橘 房図 取材、文・北條尚子
(by anan編集部)