鞘師里保、休業からカムバック! 「挑戦できる場所があるなら…」

2020.9.23
キレのあるダンスと豊かな歌声でモーニング娘。の絶対的エースとして活躍した鞘師里保さんが、ステージに帰ってきた。

約5年ぶりに表舞台に。演じるのは6年前の“あの役”のその後。

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出演するのは、永遠の命に翻弄される吸血種たちを描いたTRUMPシリーズの新作となる音楽朗読劇『黒世界』。

「休業してから3年ほど経った時に、ハロー!プロジェクトのコンサートで久々にステージに立たせていただいたんですが、それをきっかけに、これからまた頑張っていこうという気持ちに切り替わりました。そんな時に、演出の末満(健一)さんからオファーをいただいたんです。最初は驚きましたが、以前に末満さんの舞台で演じさせていただいたリリーが、自分の中でとても大きくて…。ずっと頭の片隅にあったので、すぐにご返事させていただきました」

このリリーとは、同じTRUMPシリーズとして‘14年に上演された『LILIUM ―リリウム 少女純潔歌劇』のヒロイン。自身の初主演舞台であり、「自分のパフォーマンスや表現に対しての考え方を大きく変えてくれた作品」なのだそう。

「稽古が始まった頃、リリーとして自分がどういていいのかわからず、迷っていたんです。そしたら末満さんが、リリーを演じて見せてくださり、私がそれを反復する稽古をしていただきました。その時、これまで自分にはなかった動きや声のトーンが体の中に入っていく感覚がありました。また歌に関しても、それまでずっと何か引っ掛かるものがあって越えられずにいたものが、この公演中に抜けた感じがあって。吸収することの多い時間だったんです」

『LILIUM』でリリーは、望んでいない永遠の命を手にしたことを知る。今回の『黒世界』は、その後の彼女が、さまざまな時代にさまざまな人と出会うなかで起きる各6つの短編からなる2章の物語で構成。

「このシリーズの作品はほとんど観ているのですが、全部面白いんです。悲劇が多いし、残酷な場面もあるけれど、描かれているのは友人や家族愛だったりして、物語が儚くて美しくて切ない。登場人物に自分を重ねて考えさせられることも多いです」

5年前、第一線で活躍しながら、あっさりとその場所を去り、留学を決めた。当時のことを聞いてみた。

「当時17歳で、自分のこの先の未来を考えるようになっていたんです。でも、その時の自分には落ち着いてそのことについて考えられる時間がなさすぎたんですよね。それでいったんお休みしようと思ったんです。もともと好きなダンスでスキルアップしたい気持ちもあり留学を決めましたけれどエンターテインメントの世界に戻るかどうかもわからないまま。でも、時間を置いて、やりたいことが具体的に見えてきて…挑戦できる場所があるなら、またやりたいなと思いました」

その見えてきたものとは何だろう。

「以前は、自分のいいと思う形に囚われすぎていたんです。でも、良さや魅力ってもっといろいろあるんですよね。そう思えるようになったいま、あらためて自分の表現を追求してみたいなと思っているんです」

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shared TRUMP シリーズ 音楽朗読劇『黒世界~リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について~』 末満健一のプロットに従い、末満ほか複数の作家による各短編6本で構成した2つの章が上演。主人公・リリー(鞘師)が旅のなかでさまざまな出会いと別れを繰り返す。上演中~10月4日(日)東京・サンシャイン劇場、10月14日(水)~20日(火)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール 脚本・演出・監修/末満健一 脚本/〈雨下の章〉中屋敷法仁、降田天、宮沢龍生、〈日和の章〉岩井勇気、葛木英、来楽零 出演/〈雨下の章〉鞘師里保、樹里咲穂、池岡亮介、大久保祥太郎、新良エツ子、宮川浩、中尾ミエ、松岡充、〈日和の章〉鞘師里保、上原理生、MIO、YAE、アイクぬわら、中山義紘、新良エツ子、朴ろ美 ※「ろ」は「王」に「路」 全席指定1万円(税込み) 9月26・27日、10月3・4日にライブ配信あり。ワタナベエンターテインメント TEL:03・5410・1885(平日11:00~18:00) https://trump2020.westage.jp/

さやし・りほ 1998年5月28日生まれ。広島県出身。モーニング娘。9期メンバーとして、ダンスと歌の高いスキルでグループの人気を牽引。2015年の卒業後は海外に留学。今回が復帰第1作。10月2日放送開始のドラマ『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)に出演。

※『anan』2020年9月30日号より。写真・小笠原真紀 インタビュー、文・望月リサ

(by anan編集部)