「ラストまで嘘なく役の感情や感覚を持って走り抜けたい」
「イギリスの戯曲だけに最初読んだ時はピンとこない部分もありました。でも、人間の感情や距離感の取り方だったり、男同士の友情に女性が入った時の感じ、そこに渦巻く感情には普遍性がある。人間の深みを描いた濃密な三人芝居で、演劇好きとしてはぜひやらせていただきたいと思いました」
そう話すのは、紅一点の出演となる趣里さん。ボブは、英国での演劇留学を終えたウエンツ瑛士さん、女性慣れしていないボブが助っ人として呼ぶ先輩のテッドを、かもめんたるの岩崎う大さんが演じる。
「ウエンツさんはとてもチャーミングな方だし、う大さんはすごく面白い。そこに演出のマギーさんが加わって、普段の会話からとても楽しくて居心地のいい稽古場です。この戯曲は生の感覚が大事だと感じています。マギーさんも、毎回芝居が変わってもいいから、リアクションが嘘にならないようにとおっしゃるんですが、皆さんが作ってくださる空気感が、芝居に生きてくるのでありがたいです」
なかでも、ボブとテッドという真逆の男性ふたりに挟まれ、くるくると感情を変化させてゆくドリーンの様子が見どころだ。
「相手の芝居を受けていく側の役でもあります。おふたりから自然に受け取るものを意識しつつ、普通の20歳の女の子の、感情が行ったり来たりする危うさを表現できればと思っています。ただ、ドリーンは、ふたりに巻き込まれながらも自分の意見を通す強さもある人。そこも日々見つけていきたいです」
普段は「ちょっと変わった女の子の役が多い」という。それは、役のどんなに突拍子もない発言や行動も、そこに至る空白部分を丁寧に埋めて演じる人だからだろう。
「なんでこのセリフを言うんだろうっていうのは、できるだけないようにしたいとは思っています。作家さんが書いた理由が何かしらあるはずで、そこを自分の中ですり合わせてちゃんと理解したいんです。この作品では、最後に経験したことのない感情がドリーンの中に押し寄せてきます。そこに辿り着くために、最後まで嘘なく役の感情や感覚を持って走っていきたい。このラスト、観た方によって解釈も感想も全然違ってくると思います。さすが巨匠ピーター・シェーファーだなと思います」
シス・カンパニー公演『わたしの耳』 クラシック音楽を愛する内気なボブ(ウエンツ)は、演奏会で一目惚れしたドリーン(趣里)を自宅のディナーに招待することに成功。女性に不慣れな彼は、社交的なテッド(岩崎)に助けを求めるが…。9月9日(水)~18日(金) 初台・新国立劇場 小劇場 作/ピーター・シェーファー 上演台本・演出/マギー 出演/ウエンツ瑛士、趣里、岩崎う大(かもめんたる) S席6500円 A席4500円(共に税込み) シス・カンパニー TEL:03・5423・5906 9 月22 日(火)からは、同じくピーター・シェーファー作の三人芝居『あなたの目』も上演。詳細は http://www.siscompany.com/mimitome/にて。
しゅり 1990年9月21日生まれ。東京都出身。2018年の主演映画『生きてるだけで、愛。』で日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の賞を受賞し注目を集める。近作にドラマ『私の家政夫ナギサさん』がある。
トップス¥38,000 スカート¥63,000 シューズ¥56,000(以上TOGA PULLA/TOGA 原宿店 TEL:03・6419・8136) ピアス¥24,000(siki/siki TEL:03・6885・7489)
※『anan』2020年9月16日号より。写真・小笠原真紀 スタイリスト・岡村春輝 ヘア&メイク・内田香織 インタビュー、文・望月リサ
(by anan編集部)