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まるでミステリー小説? 新譜『盗作』でヨルシカの世界観に浸る

2020.7.22
軽快なギターサウンドに透明感溢れる女性ボーカルがとても人懐っこい。なのに、歌われる言葉たちは妙に心を引っ掻いていく。街からテレビから、今そんな音楽が聞こえてきて耳を奪われたなら、それはヨルシカの仕業かもしれない。

n‐buna(ナブナ)とsuis(スイ)からなる2人組バンド、ヨルシカ。2017年にデビューし、主にニコニコ動画やYouTubeで若い世代を中心に支持され、たちまちその名は広まっていった。特にアニメーションで描かれた女の子が現実世界でキュートにダンスを踊る「言って。」のミュージックビデオはキャッチーな音楽に、時代の閉塞感を投影したような切実さとのギャップが鮮烈な印象を残した。これまでにリリースされた作品のタイトルも『負け犬にアンコールはいらない』『だから僕は音楽を辞めた』など、ドキッとするものばかり。ヨルシカの二人が顔や詳細なプロフィールを明かしていないこともあり、受け手は音楽世界をより自分だけのものとして楽しめる効果もあるようだ。

現在、CMやアニメ映画の主題歌など活躍の場をどんどん広げているなかでリリースされる3rdアルバム『盗作』。「音楽の盗作をする男」を主人公に、彼の破壊衝動を形にしたというコンセプチュアルな作品だ。アコースティック・ギターのアルペジオが優しく、主人公の溢れる感情をエモーショナルに引き出すような「夜行」や、夏の思い出の儚さを美しいメロディで抱きしめるような「花に亡霊」など全14曲。心の穴を音楽で埋めたい、だから僕は音楽を盗んだと告白する「盗作」など、あちこちに隠されている核心を拾い集めるように聴くのは、まるでミステリー小説を読み進める楽しみにも似ている。初回生産限定盤には約130ページの小説と、主人公が出会った少年が弾いた「月光ソナタ」を収録したカセットテープが付属され、その世界にさらにどっぷり浸れること間違いなし。一枚聴き終わった頃には、そのひたむきでやるせない衝動の美しさに魅了され、主人公が愛おしくなっている。

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『盗作』 オリコン初登場3位を記録したアルバム『エルマ』より1年ぶりの3rdアルバム。7月29日発売。【初回生産限定盤(小説+カセットテープ+CD)】¥5,000 【通常盤(CD)】¥3,000(ユニバーサル ミュージックジャパン)

ヨルシカ コンポーザーとしても活動しているn‐bunaがシンガーのsuisと結成した男女2人組バンド。2017年に活動をスタートし、素顔を見せないスタイルでありながら若い世代を中心に絶大な支持を得る。

※『anan』2020年7月29日号より。文・上野三樹

(by anan編集部)