「トレンドを自分たちで作ったんです」ブシロード・木谷高明の“ヒットの裏側”

エンタメ
2020.01.14
ビジネスの視点から、いまの日本のエンターテインメント業界を俯瞰してみるといったい何が見えるのか。さまざまなエンタメコンテンツを抱え、ブームを生み出している仕掛け人・木谷高明さんに話を聞いた。

“どんなコンテンツも人の熱には敵わないんです”

kitani

カードゲームが軸の会社としてスタートしたブシロードが、いまアニメをはじめ、音楽やプロレス、劇団とさまざまなエンターテインメント事業に参画している。その仕掛け人が、コンテンツ開発の最前線に立つ木谷高明さん。

「人が感動するのは、キャラクターとストーリー。それはアニメもスポーツも同じです。エンターテインメントがなくても人は生きられるし、楽しいことはいくらでも見つかります。ただ日常で笑うことはあっても、感動したり泣くことってめったにない。じつは人は感動したり泣いたりしたいんだと思っていて、そのために非日常のエンターテインメントが求められている。感動や涙を誘発するには共感が一番で、そこにキャラクターやストーリーが必要なんです」

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ブシロードがいま重点を置いて進めているのが、デジタル施策とライブ施策のふたつ。

「デジタルにすればオンライン化でき、オンラインにすればグローバルになる時代。あるコンテンツを素早く、広い範囲や多くの人たちに拡散するのにデジタルほど有効なものはありません。ただ、どんなに練られたデジタルコンテンツも、人の持っている熱には敵わない。それだけ生のライブ感というのは、惹きつける強力なパワーがある。まず熱狂を巻き起こす火種として、ライブというのはとても有効な手段だと思っています」

現在の主要コンテンツには、ミュージカルとアニメを連動させた『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』(以下、スタァライト)や、アニメやゲームなどメディアミックスで展開する次世代ガールズバンドプロジェクト・BanG Dream!(以下、バンドリ!)、近年の日本のプロレスブームを牽引している新日本プロレスなどがある。スタァライトは演劇で、バンドリ!はライブで、新日本プロレスは試合で熱狂を生み、その熱をアニメやゲーム、映像配信サービスに引き継いで、人気を全国に、そして海外に拡散させている。

「じつは熱狂を呼ぶのは熱狂なんです。ただ、その前提にコンテンツが魅力的であることが重要。例えばいま、新日本プロレスが多くの支持をいただいているのも、もともとプロレスにはそれだけのポテンシャルがあったからです」

長く低迷していたプロレス人気を復活させたのは、新日本プロレスであり、’12年にその親会社となったブシロードだ。自身もプロレスファンだった木谷さんが人気回復のために最初に行ったのは、大規模なプロモーション活動。

「トレンドを自分たちで作ったんです。それが、かつてのプロレスファンが戻ってくるきっかけになりました。観客が増えると、レスラーというのは自然と体から色気が出てくるもので、当然試合の質も上がる。それを観た人たちの熱狂が、また新たな観客を呼び込んでくれる。そのループがうまくでき上がったら、あとはコンテンツの質を落としさえしなければ順調に回っていくんです」

かつてのプロレスブームは男性が中心だったが、いま新日本プロレスの会場は約半数を女性や子供が占めるようになっている。

「これまでの経験上、女性や子供に受け入れられたらコンテンツは圧倒的に強いんです」

そんなブシロードの、未来を見据えたこの先の戦略とは?

「いまの若い人は、アメリカや中国の資本をかけて構築したコンテンツを見慣れている世代です。グローバルな視点で企画されたコンテンツ創りを考えています」

きだに・たかあき 株式会社ブシロード 取締役・デジタルコンテンツ部本部長・広報宣伝部部長、株式会社ブシロード ミュージック 代表取締役社長 1960年生まれ、石川県出身。証券会社を経て、'94年に株式会社ブロッコリー、'07年に株式会社ブシロードを設立。'12年に新日本プロレスを子会社化。以前よりファンだったプロレスをビジネスの視点から捉え、多彩な戦略で現在のプロレスブームを牽引。'17年に株式会社ブシロードの代表取締役社長を自ら辞し、現職に。

※『anan』2020年1月15日号より。写真・土佐麻理子 取材、文・望月リサ

(by anan編集部)

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