音楽を拠りどころにするギター少女と訳ありの親友。
「描きたいイメージとして最初にあったのは、ふたりの女の子の友情というか関係性。なのでバンドマンガのつもりはあまりなく、音楽はあくまでも舞台装置なんです」
本作から読む人のために、これまでの流れを簡単に説明しておこう。ミュージシャンの父を持ち、幼い頃からギターを弾いてきた女子高生の磨音(まお)は、転校生で天性の歌声を持つ夜祈子(よきこ)と出会う。一方で、磨音はプロデビューを目指してギタリストを探していた、2人の男子大学生が組むバンドに加入。作者の冬目景さん自身も音楽好きで、主人公にはぜひギターを弾かせたかったそう。
[gunosy]
→映画っぽい漫画? 『アルティストは花を踏まない』深い余韻の理由もチェック!![/gunosy]
「ロックをやっている女の子って、どちらかというとキツめなイメージがありますけど、磨音はふんわりした雰囲気で、ギターを弾くと豹変するような子にしたくて。対照的に夜祈子のほうは、ストレートの黒髪でクールにしようと思いました」
普段は内向的で、人前で演奏することなど考えたこともなかった磨音が、バンドという仲間を得たことで音楽の新たな扉を開く。その一方で、夜祈子も音楽が心の支えになっているようなのだが、なぜか人前では積極的に歌いたがらず、磨音のバンド活動に関しても、今のところ応援するだけの立場にとどまっている。
「夜祈子はやや面倒くさいタイプ。ミステリアスな彼女の過去がこれから明らかになっていくのですが、夜祈子のことを描きたくて、このマンガを描いているのかもしれません」
冬目さんの作品は、作画も大きな魅力のひとつ。今作は「楽器をたくさん描かなければいけないことが、とにかく大変!」と苦笑するが、躍動感のあるライブシーンなどは必見。先述の通り、連載先を変えてまでこだわりたかったのは、減りつつある紙媒体で発表することだった。
「もともと私は美大で油絵を専攻していて、マンガを始めて間もない頃はカラーの絵をキャンバスに描いて、編集さんにそのまま渡したりしていたんです(笑)。いまだデジタルをほぼ使わないアナログな描き方なのですが、紙媒体を選べるうちはそこで描き続けたいと思っています」
美しい絵柄とともに、バンドのゆくえと彼女たちの選択を見届けたい。
『空電の姫君』 アマチュアバンドで、少々頼りない男子大学生とともに練習やライブに励む磨音。夜祈子はそこにどう絡んでくるのか。『イブニング』で連載中、1巻は重版が決定。講談社 630円 ©冬目景/講談社
とうめ・けい 1992年デビュー。代表作は『羊のうた』『イエスタデイをうたって』など。『グランドジャンプ』で「黒鉄・改KUROGANE-KAI」連載中。
※『anan』2020年1月1日-8日合併号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・兵藤育子
(by anan編集部)