ネットフリックス、Amazonプライム…。世界中が動画配信サービスに夢中。
テレビや映画に加え、私たちのエンタメにおいて欠かせない存在となった動画配信サービス。その流れは、日本だけでなく全世界でも同様だという。
「予算をかけた面白いオリジナル作品や、バイヤーが努力をして買い付けた新しい作品を手軽に見られること。それが、エンタメ好きの“新しいものを見たい”という心に刺さりました。最近、アメリカでは、ケーブルテレビを解約する“コードカッターズ”、一度もケーブルテレビを使ったことのない“コードネバーズ”と呼ばれる人たちの割合が増加し、呼び名とともに話題に。また、気になる子を家に誘う時の文句も、これまでの『カウチ!(=ケーブルテレビを家に見に来ない?)』に対し、『ネットフリックス見ない?』に変化。そのくらい、私たちの生活に不可欠なものとなりました。また、11月にローンチされたApple TV+のほか、大手スタジオが次々と自社サービスを開始予定。さらに盛り上がること必至です」(映画ライター・よしひろまさみちさん)
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バラエティ番組は、自分を肯定できる作品がヒット。
日本で大ヒットしているネットフリックスのコンテンツに、現在シーズン11まで制作されているドラァグクイーンたちが魅力を競う『ル・ポールのドラァグ・レース』と、それぞれ各分野のプロである5人組“ファブ5”が、悩みを抱える人を心身ともに変身させる『クィア・アイ』がある。その2作品には、リアリティショーであること以外にも共通点が。
「『ル・ポールのドラァグ・レース』は、その人気から出演したクイーンが世界を巡るツアーを行っていますが、来年の3月、初めて日本でのパーティが決定しました。また、『クィア・アイ』は、11月から日本を舞台にしたシーズンが配信されています。どちらも、自分をきちんと知り、尊厳を持つことの大切さを教えてくれる内容で、“私は私のままでいいんだ”と、許され、鼓舞されます。ただ見て楽しむだけじゃなく、自分と向き合う機会を与えてくれるような、一歩進んだ番組に心を熱くする人が多いようです」(「She is」編集長・野村由芽さん)
Netflixオリジナルシリーズ『ル・ポールのドラァグ・レース』シーズン1~11独占配信中。個性豊かなクイーンたちの自己表現と思いに、胸打たれます。
性に向き合い、発信するムーブメントに大きな支持が!
漫画『生理ちゃん』や、サンシャイン水族館で開催された、海の生き物たちの性にまつわる展覧会「性いっぱい展」がヒット。これまでは、少し後ろめたいトピックであった性をテーマにしたコンテンツがバズったり、話題に上るようになっている。
「多様性やLGBTQなどについて話したり考える機会が増え、性に対する意識が高まったことが背景にあるのでは」(マーケティングアナリスト・原田曜平さん)
「ブランド『エミリーウィーク』から生理周期に合わせたプロダクトが発売されたり、ハヤカワ五味さんが“より多くの人が、より多くの選択肢を持ち、自由に選択できますように。”と始めた、生理用品にまつわるプロジェクト『イルミネート』も話題になりました。ただ声高に主張するのではなく、デザインの力やポジティブなパワーを通じて、性について表現、発信することが一つの大きな動きになっていると感じます。大事なことなので、これが一過性の熱狂ではなく、スタンダードなものになれば何よりです」(野村さん)
漫画家の小山健さんが手がける、生理をキャラクター化した作品。多くの共感を呼び、今年には映画化もされて話題になった。©小山健/KADOKAWA
「イルミネート」では、生理用品が紙袋に入れられることについて考えたり、国内外の生理用品を集めたセレクトショップをオープンするなど、さまざまな活動を実施。ハヤカワ五味さんが主宰。https://illuminate-pjt.com/
タピオカブームも! 大きな熱狂の背景に、インスタグラムあり。
いま日本中を席巻しているものといえば、タピオカドリンクをおいてほかにない! これまでに2度もブームを起こしながらも消えていった過去と違い、今回は、長く続く要因があるという。
「第1&第2次ブームの時は、ほかのドリンクに取って代わられるなどしてすぐに衰退しました。しかし第3次となる今回は、インスタグラムの存在が大きな要因となり、いまだ勢いが衰えません。というのは、タピオカの支持層がセルフィー文化の中核を担う層とかぶっており、タピオカそのものというより、“タピオカと一緒に写真を撮る”こと、つまり、インスタの中におけるタピオカが流行っているのです。顔に寄せて撮る方も多いですが、もし、タピオカのカップが今よりも細く、並んだ時に小顔に見えるサイズでなかったとしたら、ここまで流行らなかったかもしれません。インスタとタピオカの流行は、もはや一心同体。インスタに取って代わる新しいSNSが現れない限り、タピオカブームは続きそうです」(甲南大学文学部教授・栗田宣義さん)
よしひろ まさみちさん オネエ系映画ライター、編集者。小誌をはじめ、『otona MUSE』『sweet』『SCREEN』など、さまざまな雑誌で執筆。『スッキリ』の映画紹介コーナーに出演している。
野村由芽さん ライフ&カルチャーコミュニティ「She is」の編集長。“自分らしく生きる女性を祝福する”ことをモットーに、カルチャーや思想などを発信している。https://sheishere.jp/
原田曜平さん マーケティングアナリスト。若者やメディア文化を中心に次世代の研究を行う。著書に『平成トレンド史』(角川新書)など。「マイルドヤンキー」の名付け親。
栗田宣義さん 甲南大学文学部教授。美容化粧服飾と流行を主に研究。著書に『マンガでわかる社会学』(オーム社)など。『新社会学研究』(新曜社)にて「ファッション&パッション」を連載。
※『anan』2019年12月18日号より。イラスト・山中玲奈 取材、文・重信 綾
(by anan編集部)