私たちのカラダは、細胞一つひとつまで、食べたもので作られている。と考えると、カラダの内側からキレイになる体内美容の近道は、食生活の見直し。
「アレルギーや肌荒れといった慢性的な不調を訴える患者さんに食事を変えてもらうと、薬を使わなくても良くなるケースが多くあります」(溝口徹先生)
食事の改善で女子が関心あるのはやはりダイエット。カロリーや糖質、揚げ物などばかり気にしがちだが、その前にどうやら基本のキに立ち戻ったほうがよさそう。
「年中行事のようにダイエットをしていると、本来カラダに必要な栄養素が十分に摂れなくなります。逆に太るほど過食して量は足りているのに、質が伴わないため栄養不足に陥ることも。それが様々な不調の引き金となるのです」
溝口先生が、日本人女性に特に足りない栄養素として挙げてくれたのが、タンパク質、鉄・ビタミンB群、良いアブラ、ビタミンD。足りないと美容と健康にどう悪いのか。早速チェックしてみて!
女子に足りない栄養素1:タンパク質
タンパク質不足は肌と髪にマイナス。風邪や貧血のリスクにも!
この15年近くで20代女性のタンパク質摂取量は、1週間当たりで11gほどダウン。11gというと、卵1個+絹ごし豆腐1/3丁分に相当する。タンパク質は肌や髪を作る、体内美容でいちばん大切にしたい栄養素。足りないと肌が荒れるし、髪も細くなる。筋肉もタンパク質からなっているので、必要量が満たせないと筋肉が減り、代謝が落ちて太りやすくなる。
さらに、こんなリスクも!
「免疫を担う免疫グロブリンや、血中で酸素を運ぶヘモグロビンも、タンパク質から作られます。免疫グロブリンが足りないと風邪をひきやすくなりますし、ヘモグロビンが足りないと貧血が生じます」
※年齢別、タンパク質摂取量の変化(1人1週間当たりの平均)
平成15年と平成29年の年齢別の女性のタンパク質摂取量を比べた数字。ちなみに30~39 歳だと-21.0gに。40~49歳だとさらに減少し、-47.6gに。(厚生労働省 国民健康・栄養調査より計算)
女子に足りない栄養素2:鉄・ビタミンB群
鉄不足だとシミが増えやすく、ビタミンB群は肌の健康に影響が。
飽食の時代といわれているが、充足できてないミネラルやビタミンは多い。注目は鉄とビタミンB群。鉄は、酸素を運ぶヘモグロビンをタンパク質と一緒に作るミネラル。足りないと貧血になるのは有名だが、実はシミの一因にも!
「鉄はカタラーゼという酵素の合成にも不可欠です。カタラーゼは紫外線による酸化でシミができるのを防ぐので、鉄欠乏だとシミが増えやすくなります」
ビタミンB群には皮膚の粘膜の状態を正常に保つ働きがあり、足りないと肌のダメージにつながる。
「B群は神経を養う働きも。ストレス下で消費量が増えるので、ストレスがある人は多めに摂って」
※鉄・ビタミンB1の摂取量
20~29歳の女性(月経あり)が摂っている鉄の量は、推奨されている量の60%。ビタミンB群も、B1では68%しか摂れていない。(厚生労働省 平成29年 国民健康・栄養調査より計算)
女子に足りない栄養素3:良いアブラ
体内でアレルギー反応が起きたり、頭痛、月経痛の原因にも。
量ばかり気にしがちだが、どんなアブラを摂るかも大事。特に気をつけたいのは、オメガ3とオメガ6というアブラのバランス。
「体内のオメガ3と6の比率は1:1が理想なのに、現状では1:10でオメガ3が少なすぎ。それだとアレルギー反応が起こりやすく、アトピー性皮膚炎や花粉症のリスクが高まります。この他、月経痛、頭痛、うつ状態も起こります」
オメガ3には、青魚に含まれるEPA、アマニ油に含まれるα‐リノレン酸などがある。一方のオメガ6には、ファストフードや加工食品、揚げ物などに多いリノール酸がある。オメガ3を増やしつつ、オメガ6を減らす努力を!
※良いアブラと良くないアブラの体内比率
カラダに良いアブラ(オメガ3:EPA、α‐リノレン酸など)と、良くないアブラ(オメガ6:リノール酸=揚げ物、加工食品、ファストフードに多い)の体内の比率は1:10。良いアブラが全然足りない。(資料提供:溝口 徹)
女子に足りない栄養素4:ビタミンD
美白を気にしすぎて不足しがち。肥満やアレルギーの元凶に。
ビタミンDは太陽の日を浴びると肌で合成されるので、美白命で日光を避けすぎると欠乏しやすい。
ビタミンDは鮭やシラス、キノコといった限られた食材にしか豊富に含まれていないので、これらを意識して食べないと摂りにくい。
「ビタミンDは体内でホルモンに似た働きをしていて、腸管を覆う粘膜をギュッと引き締める作用があります。足りないと腸壁が緩んで、すき間から異物が体内に漏れ出しすくなります。その刺激で慢性的な炎症を引き起こします」
慢性的な炎症は、肥満やアレルギーのもとになるといわれている。美白に励むなら、日々の食事でビタミンDをもっと摂って。
※年齢別、ビタミンDの血中濃度
ビタミンDの血中濃度を調べた新潟大学の研究によると、20~29歳女性は充足値の半分に満たないことが判明。30~39歳も、2/3以下にしかならない。出典:Nutrition Volume 17, Issues 11-12, Pages 921-925, 2001
みぞぐち・とおる 新宿溝口クリニック院長。食事と栄養を重視し、投薬だけに頼らず、適切な食事やサプリメントで様々な病気を治すオーソモレキュラー療法の第一人者として活躍する。
※『anan』2019年11月20日号より。イラスト・小迎裕美子 取材、文・井上健二
(by anan編集部)
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